立田敦子のヴェネツィア国際映画祭レポート2016 #02 満島ひかりがヴェネツィア映画祭デビュー!
Culture 2016.09.08
コンペティション部門に日本作品がなく、ちょっと寂しい今年のヴェネツィア。そんな中、先日、オリゾンティ部門に選出された石川慶監督の『愚行録』の正式上映が行われました。
『愚行録』は、直木賞候補にもなった貫井徳郎の同名小説の映画化。週刊誌の記者、田中(妻夫木聡)が1年前に起こったある一家惨殺事件を調査・取材する過程を通して、関わっていく人々の心の闇を描く心理ミステリーです。主演の妻夫木聡はヴェネツィア入りできなかったのですが、物語のキーパーソンとなる、妻夫木演じる田中の妹を演じた満島ひかりが記者会見と正式上映に石川監督とともに登場しました。
石川監督は、名匠ロマン・ポランスキーを輩出したポーランドの映画学校を卒業、本作が長編映画デビューとなる新鋭。最初からヴェネツィア映画祭のオフィシャル・ラインナップに選出されるなんて、今後も期待大ですね。実際に、光の使い方の美しさなど、特に絵づくりにキラリとしたセンスを感じさせる監督です。
他に日本作品は、アウト・オブ・コンペティション部門でアニメの『GANTZ:O(ガンツ:オー)』が上映予定です。
アジア関連では、アウト・オブ・コンペティション部門で『甘い人生』のキム・ジウン監督による『The Age of Shadows』(英題)が上映されました。これは日本占領下の1920年代、反日活動家のストーリーを軸に、両国の間で引き裂かれる朝鮮生まれの日本人(ソン・ガンホ)の姿を描いたもの。
コンペ部門では、フィリピンの気鋭ラヴ・ディアスの『The Woman Who Left』(英題)の上映が予定されており、新設の「ジャルディーノ」部門ではキム・ギドクの『The Net』(英題)が上映された。今年は、コンペ以外の作品数がぐんと増えたため、全部観るのは不可能なのだけれど、アジアでも日本や中国といったこれまでの映画祭常連国だけでなく、東南アジアなどから積極的に作品を集めようとしている映画祭側の意図も感じられます。
ちなみに、クロージング作品『マグニフィセント・セブン』(黒澤明監督の『七人の侍』(57年)と西部劇『荒野の七人』(60年))のハリウッドリメイク)には、クリス・プラットやイーサン・ホークらに混じってイ・ビョンホンが主要な役で出演。日本人俳優がキャスティングされなくて、残念!
texte: ATSUKO TATSUTA