フィガロが選ぶ、今月の5冊 集合住宅を舞台に交錯する人間模様を、柴崎友香が綴る。

Culture 2018.01.06

扉の向こうにある、幾多の出会いと別れ。

『千の扉』

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柴崎友香著 中央公論新社刊 ¥1,728

同じ建物に多くの人々が暮らす集合住宅には、扉の数だけ物語がある。そして年月とともに、歴史も積み重なっていく。東京の街が開発され集合住宅が登場し始めた昭和30年代と現在を、交互に描きながら、それぞれに事情を抱えた複数の登場人物が、タペストリーの糸のように絡み合って進行する。近所の井戸端会議がコミュニケーションの役目を果たしていた昭和から平成に移り変わり、人の触れ合いが希薄になった現在では、幽霊たちも顔を覗かせる。時代と人間模様が交錯する集合住宅は、出会いと別れを繰り返す、人間たちの営みの縮図だ。

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*「フィガロジャポン」2018年1月号より抜粋

texte : JUNKO KUBODERA

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