フィガロが選ぶ、今月の5冊 着想の秘密に触れる、珠玉の作品集。
Culture 2017.03.21
『不時着する流星たち』
小川洋子著 角川書店刊 ¥1,620
冒頭の書き出しから、異界へと誘われる心地がする。静謐な文体のどこに、そんな魔術的なひらめきが潜んでいるのか。小川洋子が紡ぐ物語の魅力を堪能できるこの作品集では、それぞれの短編のおしまいに、着想のもとになったのは何か、が明かされている。ヘンリー・ダーガー、パトリシア・ハイスミス、エリザベス・テイラー……彼らのどこに、作家は惹かれたのか。たとえばグレン・グールドにインスパイアされた『測量』は、盲目の祖父と孫が、一歩一歩、彼らの住む世界を測量していく。読み終えた後、もう一度、読み返したくなる全10編。
*「フィガロジャポン」2017年4月号より抜粋
réalisation : HARUMI TAKI