フランス人の「あるある」、あなたはいくつ知ってる?

Culture 2017.08.02

■ フランス人との交渉ごとに必要となる、ある特別なスキル。

フランスも日々変化しており、「普通に遅刻」「英語をしゃべってくれない」「マダム60歳ひとまわり年下の恋人」「とにかく遅刻」というイメージを持ったままフランス人と付き合うと、拍子抜けするようなこともあるはずだ。でも変わらないこともある。『フランス人 この奇妙な人たち』の著者がいう「PPO(persistent personal operation/辛抱強く個人的事情を訴える作戦)」はその筆頭であり、この先どんなにフランスやフランス人が変わっていってもこれだけは消えることはないという気がする。もしなくなったとしたらそれはもう果たしてフランスなのだろうかとすら思う。

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フランスで最初に住んだ部屋の大家は、私の前に一度も姿を現したことがなかった。 フランスでは入居初日、大家と一緒に部屋をチェックし退去時のトラブルを予防するのだが、それにもこなかった。常に使い魔のような巨体の北アフリカ人男性を派遣してくるのだ。電話は出ないし、メールは1カ月後に返事がくる。

ある日使い魔が私の留守中に部屋へ入り、入居前から壊れていた電子レンジを新しいものに取り替えた。そして大家はその費用を私に請求した。完全に壊れたのは私が住み始めてからだと主張した。

私は怒りに任せて長文のメールを送った。取り替えてほしいなんて頼んでないし、入居前から壊れていたし、一度も使ってないのに払うわけがないと、わりと興奮気味に書いた。

「だから入居初日のチェックをしなければいけないのに、来なかったのだからあなたが悪いのです。あと部屋に勝手に人を入れるのはやめてください」

こんなド正論でフランス人と渡り合おうなんて、いまとなっては世間知らずとしかいいようがない。「PPO」の真逆をいっている。大家は「あっそう」とすねたような返事をよこし、沈黙した。しかし使い魔は変わらず部屋に入ってきた。こんなところ早く出ていってやると思った。

それからしばらくたったある日、鍵を忘れて部屋を出てしまうというミスを犯した。オートロックなので締め出されてしまうのだ。財布も電話も持っておらず、しかも冬だった。途方に暮れていると、30歳くらいの女性が階段をあがってきた。見たことのない人だったが事情を話し、電話を貸してほしいといった。

「鍵屋は呼ぶと高いよ。大家に連絡して開けてもらえばいい」と彼女はいい、初めて会った私を部屋に招き入れ、コーヒーを入れてくれた。そして大家(建物全体同じ大家だった)にメッセージを送ってくれたのだが、フランス語に不自由ないフランス人なのに、ずいぶんと時間をかけて文章を練った。書き出しや挨拶の仕方など、何度も推敲しては打ち直した。大家は、彼女には5分で返事をよこした。

「明日の朝しかこられないって」

しかし返事は絶望的だった。彼女は何度も交渉してくれたが、今日中にはどうしても無理だといわれた。するとあっさり「泊っていきなよ」といい、食事も出してくれた。これらの親切は、意識せずとも手足を動かすことができるように、ごく自然に行われた。

その夜彼女と話すうち、大家が、私以外の入居者の前には姿を現し入居初日チェックにもくること、使い魔が勝手に部屋に入ってきたりしないこと、そして私だけ余計な手数料を家賃に上乗せされていたことを知った。

「まあ何も知らない人を利用しようとする人っているからね」と彼女は同情するようにいった。

彼女が食べさせてくれたヤギのチーズはとてもおいしかった。ずっとヤギのチーズはおいしくないと思い込んでいたけど、今でも同じものをリピートしている。

シロ
パリ在住。madameFIGARO.jpでブログ「パリ、恋のエトセトラ」を執筆中。
どこでもできる美容方法を探りつつ、備忘録として「ミラクル美女とフランスの夜ワンダー」というブログも綴る。

ブログ「パリ、恋のエトセトラ」のシロさんの場合からもわかるように、フランス人には、フランス人特有の思考や行動パターンがあるようだ。パリ在住30年のアメリカ人女性が、フランスで暮らす中で見出した“目からウロコ”のフランス人との付き合い方がユーモアたっぷりに綴られた『フランス人 この奇妙な人たち』(CCCメディアハウス刊)では、「めったに笑顔を見せない」「時間にルーズ」「絶対にミスを認めない」「運転が乱暴」「無類の犬好き」「エチケットにうるさく皮肉屋」といった、“フランス人あるある”エピソードをご紹介。

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フランス人 この奇妙な人たちポリー・プラット 著  桜内篤子 訳 CCCメディアハウス刊 書籍:¥1,944、電子書籍:¥1,555

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