お正月から、歌舞伎三昧!【尾上松也、中村歌昇】

Culture 2017.12.29

2018年は、高麗屋三代襲名で幕を開ける、歌舞伎にとって輝かしい年。そんな記念すべき年明けには、見どころとなる公演が続々と。歌舞伎座、国立劇場、浅草公会堂と、晴れやかな舞台で新年事始め!

尾上松也(右)
中村歌昇(左)

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この日も新春浅草歌舞伎の取材がびっしり。「最初の頃は、取材の時もみんなそわそわしていましたが、最近、やっと自分たちを冷静に見られるようになったと思います」(松也)
photo:SAKIKO NOMURA

中村歌昇は少しすねていた(笑)。「今回も(尾上松也)兄さんとがっつり芝居する役はみっくん(坂東巳之助)に取られちゃったじゃないですか。今年こそ、って思ってたのに……」

彼らが正月に出演する新春浅草歌舞伎は、若手歌舞伎俳優の登竜門といわれてきた。いまでは歌舞伎座で看板を張る名優たちも、かつてはここで初めての大役に冷や汗、脂汗をかいた。3年前からその公演を任されているのが彼ら。年長の〝マッティ〟こと尾上松也を除けば平成生まれである。
「最初は僕らだけでお客様が来てくださるのか、ハラハラしてました。まずは宣伝活動から頑張らなくてはならないのですが、そもそも、浅草以外ではあまり共演することがなかったので、みんなの考えもわからず、どうしたらいいのだろうと思っていたら、彼らから……」(松也)

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歌舞伎座で古典の大役を演じられた喜び。
歌舞伎座で演じた『鎌倉三代記』の三浦之助。重厚な義太夫狂言でも大きな役を演じる機会をいただきうれしいという。新春浅草歌舞伎では『御浜御殿綱豊卿』の綱豊卿と『引窓』の濡髪。新年の抱負は「いままでどおり」。これまでを信じてこれからも。©松竹

これまでを信じてこれからも、
〝いままでどおり〟。

(松也)

 

ーかぶせるように歌昇が言う。

「でしょう。僕らPR活動も頑張りましたよね。なのに……」(歌昇)

ーあの時はホントに大変だったよね、となぜかなだめる松也。

「こういう若手だけの公演には、上置きといって、先輩俳優が締めとなる役に出てくださることが多いんですが、3年前の初めての時、なぜかそういう方がいらっしゃらなかったんです。それでどうなったかというと……」(松也)

ー僕です。と遠くを見る歌昇。

「『一條大蔵譚』という憧れの作品で主演させていただいたので本当にありがたかったんですが、兄さんが主演した『仮名手本忠臣蔵』では不破数右衛門。父世代が演じる役をさせていただきありがたかったのですが……」(歌昇)

ーその時、歌昇は25歳。

「浅草のみならず、兄さんと共演する時はそういうことが多いのはなぜでし
ょうか?」(歌昇)
「それだけ信頼されている、ってことだよ」(松也)

新春浅草歌舞伎で、舞台稽古が
緊張マックスになる理由。

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荒事には英雄を演じられる醍醐味が!
写真は2017年『金幣猿島郡』で演じた押戻。最後に出てきて、暴れる悪霊を押し戻す英雄役。新春浅草歌舞伎では『鳥居前』の弁慶と『引窓』の南与兵衛後に南方十次兵衛で出演。新年の抱負は「素直になる」。取り繕わず、カッコつけず、素直に。©松竹

素直になるって難しい、
と感じる今日この頃です。

(歌昇)

 

そんなふうに、新春浅草歌舞伎では若手が主演のみならず、さまざまな大役に挑戦する姿が見られる。しかもたいてい初役である。初日は緊張マック
スに違いないと想像したのだが。

「実は舞台稽古がすごいんです。初役の人が多いから、教えてくださった先輩方が来てくださるので、客席が豪華なんです。ほかの公演ではご一緒する機会の少ない先輩もいらっしゃいますからその緊張感といったら」(歌昇)

「みんな初役で大役をさせていただくので、大先輩方が舞台稽古にいらしてくださって、初日前にはすでにものすごい緊張感で包まれます」(松也)

「今回の舞台稽古もそうなることでしょう。兄さんとは『引窓』でご一緒させていただきますが、絡むのはほんのちょっとですからね」(歌昇)

「またそこに戻るんだ(笑)。今後、共演するとしたら何を演ってみたい?」(松也)

「『寺子屋』はどうですか」(歌昇)

「いいねえ。源蔵はさせていただいたことがあるけれど、松王丸にも憧れるんだよね」(松也)

「僕は松王丸はあるけれど源蔵がないんです。演りたい!」(歌昇)

「じゃあいつか『寺子屋』を。言っておくと、可能性が高まるかもしれないから。よろしくお願いします!」(松也)

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お年玉の話題になると話が止まらない。子どものように無邪気だ。
photo:SAKIKO NOMURA

右:Matsuya Onoe
音羽屋。1985年生まれ。90年、二代目尾上松也を襲名。父の六代目尾上松助が2005年に他界。が、歌舞伎自主公演『挑む』を主宰するなど着実に人気、実力を身に付けてきた。17年は大河ドラマ「おんな城主 直虎」で今川氏真役、「さぼリーマン甘太朗」で連続ドラマ初主演。

左:Kasho Nakamura
播磨屋。1989年生まれ。94年、初舞台。2011年、父の三代目中村又五郎襲名とともに四代目中村歌昇を襲名。播磨屋一門の長である中村吉右衛門に憧れ、本気で歌舞伎の道を歩み始める。甘いマスクだが、武骨な役も似合う。15年に結婚。16年には長男が誕生した。
新春浅草歌舞伎 浅草公会堂
会期 : 2018/1/2~26
演目/第1部 : 『義経千本桜 鳥居前』『元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿』
第2部 : 『操り三番叟』『双蝶々曲輪日記 引窓』『京人形』 
出演 : 尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村米吉、中村隼人、中村梅丸、中村歌女之丞、中村錦之助

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*『フィガロジャポン』2018年2月号より抜粋

texte : YUKIKO YAGUCHI, coiffure et maquillage : YASUNORI OKADA (EFIL / MATSUYA ONOE), JUNKO YAMASAKI (KASHO NAKAMURA)

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