英王室に吹くしなやかな新風、メーガン・マークル。

Culture 2018.02.10

2017年、ハリー王子との婚約が正式に発表され、その瞬間に全世界から注目を集めることになったメーガン・マークル。このニュースを受けてイギリス国民にとって何よりも感慨深かったのは、アメリカ国籍をもつ外国人であり、ハリーよりも年上で、さらには離婚歴もあるメーガンを迎えるとした王室の決断だ。

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エンデバーファンド・アワードの授賞式にアレキサンダー・マックイーンのパンツスーツを着用して登場し、注目を浴びたメーガン・マークル。 photo : Getty Images

これにより、かつてアメリカ人で離婚歴のあるシンプソン夫人との結婚を選び王位を放棄せざるを得なかったエドワード8世や、ダイアナ妃との離婚、さらにはカミラとの再婚に多大な時間を費やすことになったハリーの父チャールズ皇太子のエピソードはすでに遠い過去のものとなった。

さらにメーガンは黒人の母をもつミックスド・レース(混血)。将来ハリーとメーガンの間に子どもが生まれたら、有色人種の血をひく王位継承権所有者が誕生することになる。他民族を受け入れ多様性をよしとする自由な発想の多くのイギリス国民は、時代の流れとともに変わろうとする王室の姿勢を少なからずうれしく思ったに違いない。 

ロイヤルファミリーがいないアメリカで生まれ育ったメーガンはヨーロッパ王室にあまり興味がなく、ハリーのことすら知らなかったといわれている。ふたりの出会いを取り持った友人に事前に「彼はいい人なの?」と聞いたエピソードは有名だ。そんな、これまでに王室入りした女性たちとまったく違う感覚を持つ彼女は、結婚を前にしてさまざまな新しい風を王室に吹き込む存在でもある。

すでにハリーとともに公式行事に出席している彼女だが、2018年2月1日に行われた王室主催のイベント、エンデバーファンド(*1)・アワードの授賞式では特に目を引いた。ここでメーガンは、アレキサンダー・マックイーンのダークなアンクル丈パンツスーツで出席していたのだ。これまでの常識では夜に行われる式典には王族の女性はドレスの装いが当たり前。スーツで登場するのは実に異例なことだったから。

*1 エンデバーファンド:ウィリアム王子、キャサリン妃、ハリー王子の3人が、負傷した兵士たちを支援するために2012年立ち上げた団体。

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>>メーガンが体現する、英国王室の新しい女性像。

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メーガンが体現する、英国王室の新しい女性像。

しかしモードの世界ではサンローランがタキシードスタイルのスモーキングスーツを発表し、ファッションにおけるジェンダーの壁をひとつ取り払ったのはすでに半世紀以上前の60年代のこと。また1月のゴールデングローブ賞の授賞式では、「タイムズ・アップ」への意思表示とともに黒いドレスに混ざってフォーマルなパンツスーツで登壇する女優たちも少なくなかったことは記憶に新しい。

プリンセスラインのドレスだけではなく、マスキュリンなスタイルでさっそうと歩き、パートナーと肩を並べて自信を持って自己主張する。そんな現代のイギリスでは当たり前の女性の姿が、ようやく王室にも加わったとも言える。フレッシュで清々しい輝きを伴いながら。  一方、王室メンバーに加わるために、メーガンは結婚前にイギリス国教会での洗礼がマストとされている。また彼女は結婚してもプリンセス・メーガンと呼ばれることは決してない。英国王室では、ファーストネームの前に付けるプリンセスの称号は、王族の血を引く女性にしか与えられないのだ。(日本ではプリンセスを思わせる、キャサリン妃、ダイアナ妃との敬称が一般的だが、厳密にはこれは正しいとはいえない)

格式ある英国王室が柔軟でいられるのは、そんな揺るぎない伝統と歴史、誇りに裏付けられているからなのかもしれない。それでもそこにメーガンが新たな価値観と女性像をプラスしていくことはきっと間違いない。

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texte : MIYUKI SAKAMOTO

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