立田敦子のカンヌ映画祭レポート2018 #10 北欧マジック・リアリズム的ホラー映画に注目!

Culture 2018.05.22

クロージング前日、審査員長であるベニチオ・デル・トロも登壇し、サイドバーである「ある視点」部門の授賞式が開催されました。

最高賞である「ある視点」大賞は、イラン系デンマーク人監督によるアリ
・アバッシ監督の『Border』(英題)が受賞。スウェーデンの港町、なんでも嗅ぎ分けられる特殊能力を持ったティナは税関で働いているが、ある時、不思議な旅行者ボーレと出会い惹かれ合う。その男は、自分たちは人間ではないと言い放つが……というストーリー。『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008年)の原作者ヨン・アイヴィデ・リンドクィストの短編小説が脚本の原作ですが、力強いストーリーに絶賛の嵐。監督の“北欧マジック・リアリズム“の魅力に満ちた作品です。

180522-cannes-01.jpg

「ある視点」大賞を受賞した、アリ・アバッシ監督の『Border』(英題)より。

脚本賞は、モロッコ出身のメリエル・ベンバレク の『Sofia』(原題)。妊娠が発覚した若い女性が、収監を逃れるため子どもの父親を探すサスペンスドラマです。

180522-cannes-02.jpg

脚本賞を受賞した、メリエル・ベンバレク の『Sofia』(原題)より。

俳優賞 は、ベルギーの新鋭ルーカス・ドントの『Girl』(原題)に主演したヴィクトール・ポルスター。本人不在のためドント監督が代わりに受賞。カメラ・ドールを受賞したドント監督は、26歳のイケメンで“第2のグザヴィエ・ドラン“ともいわれている監督です。肉体的には男として生まれ、バレリーナになることを夢みる歳の少女のお話。

180522-cannes-03.jpg

俳優賞を受賞した、ルーカス・ドント監督の『Girl』(原題)主演のヴィクトール・ポルスター。

180522-cannes-04.jpg

カメラ・ドールを受賞して注目が集まっている、ルーカス・ドント監督。

監督賞 はオープニング作品だった『Donbass』(原題)のセルゲイ・ロズニッツア。ウクライナの監督でカンヌの常連。本作も内戦の続くウクライナを舞台にした人間ドラマ。

180522-cannes-05.jpg

監督賞に輝いたセルゲイ・ロズニッツア監督の 『Donbass』(原題)は、オープニング作品。

審査員特別賞はポルトガルのホアン・サラヴィサ、ルネー・ナデル・メソラ の『Dead and the Others』(英題)。父の死に際して、死と向き合う原住民の青年のドラマ。サラヴィサ監督は、カンヌの短編でパルムドールを受賞した注目株です。

180522-cannes-06.jpg

審査員特別賞を受賞した、ホアン・サラヴィサ、ルネー・ナデル・メソラ の『Dead and The Others』(英題)より。

この中から近年、コンペティション部門で名を挙げる監督が登場するのは間違いないはず。彼らの名前はぜひ覚えておきたいものです。

映画ジャーナリスト 立田敦子
大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。

>>関連記事
#01 セレブカップル出演作でスタート! 第71回カンヌ国際映画祭。
#02 カンヌ映画祭"場外乱闘"の続報!
#03 ゴダールがフェイスタイムで記者会見に登場!
#04 是枝監督『万引き家族』に絶賛の声!
#05 カンヌも"#MeToo"問題にフォーカス!
#06 是枝監督『万引き家族』、日本映画21年ぶりのパルムドール!
#07 カンヌ映画祭2018での日本映画の評判は⁉
#08 カンヌ不在&カンヌカムバックの監督たち。
#09 批評家ウケした、今年のカンヌの注目作。

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

フィガロワインクラブ
Business with Attitude
キーワード別、2024年春夏ストリートスナップまとめ。
連載-パリジェンヌファイル

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories