時代を切り拓け! 世界の注目クリエイター。 金沢出身アーティスト、武田雄介の脳内散歩。
Culture 2018.08.09
オリジナルな発想で時代に風穴を開け、見たことがないものを創る。エネルギッシュな勢いのある、若手クリエイターたちにインタビュー。
|金沢|
脳内散歩の果てに作品が生まれる。
武田雄介 (アーティスト)
Yusuke Takeda
1985年、広島市生まれ。2014年金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科博士後期課程修了。金沢を拠点に、絵画、写真、映像、音といったさまざまな素材を組み合わせたインスタレーションを制作している。
イメージの“模索の途中”というより、“途中の模索”に興味がある。
金沢を拠点に、異質な素材を構成したインスタレーションを発表してきた新鋭作家。昨年から続いた長期制作では、視線を撹乱させるように虚実や時空の交錯する多彩なイメージが跋ばっこ扈する空間を発表。壁には写真や動画から引用された“目”の絵画が並び、ある暗い映画に触発されて飼うようになったというピラニアが水槽で泳ぐ映像が投影される。断片をすくって物語を深読みしそうになるが、彼の思考は一歩先の時代性を持っている。「ひとつのモチーフを描いていると異なるイメージが浮かび始め、作品然としたものを完成させることができなかった。目に留まる周囲の景色や身近なものを、記録、引用、参照することで現れる“検索の空間”に興味がありました」。そんな武田の作品世界は、脳内のイメージを捉える思考の運動とその途上を空間芸術に置き換えようと試みている。観客が他者の脳内を眺めながら歩く体験は、まさにVRのネットサーフィン感覚に近い。彼の“目”は、あくまでクールに自意識を観察している。
*『フィガロジャポン』2018年8月号より抜粋
photos (PORTORAIT) : YUJI OKU, réalisation :CHIE SUMIYOSHI