フィガロが選ぶ、今月の5冊 短編の名手が紡ぎだす、17の美しい物語。

Culture 2018.10.14

深い余韻を残す17の物語、戦争と音楽を巡る短編集。

『戦時の音楽』

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レベッカ・マカーイ著 藤井光訳 新潮社刊 ¥2,160

最初のごく短い一編「歌う女たち」から、ただならぬ傑作の予感がした。戦争と音楽を巡るこの短編集は、幾通りにも変奏されたレクイエムであり、ネガとポジが反転するように紡がれていくのは、折り合いのつかない宙吊りの心を抱えた生き残った者たちの物語だ。17の作品の語り口はさまざまで、作家自身の家族史を織り込んだ3編も含まれる。薬指を失った名バイオリニスト、相棒を亡くした象使い……戦火の渦中にいなくとも、喪失の記憶がいまもなお続いているのだと想像力をかき立ててきて、思わずじっと耳を澄ませたくなるような深い余韻を残す。

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*「フィガロジャポン」2018年10月号より抜粋

réalisation : HARUMI TAKI

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