フィガロが選ぶ、今月の5冊 愛した亡夫は別人だった? 平野啓一郎の最新長編。
Culture 2019.01.14
亡き夫が別人と知った時、その愛を信じられるか。
『ある男』
平野啓一郎著 文藝春秋刊 ¥1,728
里枝の夫、谷口大祐は、39歳で不慮の事故で死んだ。過疎の町に流れてきた彼の経歴は、名前も戸籍も語っていた過去さえもすべて偽りだった。愛した男が別人だったと知った時、過去のない愛を信じることができるだろうか。里枝から依頼を受けた弁護士の城戸も、実は在日3世であり、谷口大祐の正体を探るうち、この国で戸籍どおりの自分を生きることの困難さを抱えた、さまざまな人々の苦悩に直面する。辛い過去を捨て、新たな人生を生きることを責められるだろうか。『マチネの終わりに』の映画化も話題の作家による、ミステリー仕立ての最新長編。
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*「フィガロジャポン」2019年1月号より抜粋
réalisation : HARUMI TAKI