写真を撮られるのは大嫌い――その心理とは?

Culture 2019.01.23

喜んで被写体になる人もいれば、写真に撮られることを拷問と思う人もいる。どんな理由でカメラを向けられるのを嫌うのだろう? 精神分析医と写真家とに話を聞いた。

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レンズの前でこだわりを捨てることは、とても難しい。photo:Getty Images

カメラを疫病神のように避けたり、居心地の悪さをごまかそうとしてしかめ面をしてしまったり。自分に自信がない、自己イメージをコントロールしたい、ソーシャルネットワークに振り回されている……写真を撮られることを嫌う現象にはさまざまな理由が考えられる。

精神分析医で文筆家のエルザ・ゴダールによれば、「写真が不安やコンプレックスの原因になるのは、自己イメージがそこで問われているからです。『自分はどういうイメージで見られているのか』『自分はどんな風に見えるのか』といった問いに、写真は関わっています」。多くの場合、写真と鏡に映る自分とは見え方が異なる。そのため、自分の写真を見ると動揺してしまうとゴダールは語る。

ひきつった笑い、ぎこちない表情など、ストレスや困惑は実際に表に現れる。「撮影が始まったばかりの段階では、被写体は多くの場合、緊張しています」と写真家のシャルロット・シュチェパニャクは言う。「みなさん、自分に自信がない、どうやってポーズをとったらいいかわからないと言います。被写体をリードするのが私の役目です。最初からいい写真が撮れることは稀ですが、撮り続けるうちにだんだんよくなっていくものです」

自己イメージをコントロールしたい。

カメラに対して敵意を抱くのは、自己イメージを制御できなくなることを恐れているからでもある。「鏡の前でなら、自分がいちばんきれいに見える顔にできますが、写真の場合はコントロールができません。他者の目に映っている姿がそのまま表れます。ですから、こだわりを捨てて自然体でいることが必要になります」とシュチェパニャクは考える。一方、ゴダールは「自然体になるといっても簡単なことではありません。他者の視線を気にしている人たちは、他人に判断されたり、けなされたり拒否されることを恐れているのですから」

ソーシャルネットワークという重荷。

こうした写真嫌いは、人々が競い合って自分の写真を公開する「自己陶酔的」社会において一層、写真を嫌うようになるとゴダールは指摘する。「コンプレックスを抱いている人であれば、一定の基準の外見的な美しさがもてはやされる社会で生活することによって、コンプレックスは増大するでしょう」。真似しようとしてもできるはずのない“幻のイメージ”に囚われては、負のループに陥ってしまう。

そして、写真を恐れる人ほどSNSに投稿する写真の大半に加工を施す。シュチェパニャクは次のように言って注意を促す。「肌のキメを細かく見せたり、ウエストを細くしたり、傷痕や妊娠線を消したりすることだって、いまやとても簡単にできます。これはやっかいな問題を含んでいます。自分を信じられない人は、加工後のイメージを真実だと思い込んでしまうからです。このことでさらにまた、彼らのコンプレックスやカメラに対する恐れが強くなってしまいます。加工前の写真を見て、“私はこうじゃない”と思ってしまうのです」

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texte:Mooréa Lahalle (madame.lefigaro.fr)

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