Apple TV+に集結したクリエイターが、世界のいまを描く。

3月25日に開催されたアップルのスペシャルイベント。ここで発表された数々のサービスのなかで、最も注目したいのがApple TV+だ。Apple TVを用いてオリジナルコンテンツが視聴できる定額制のサービスで、今年の秋からまずはアメリカでスタート（日本での展開は未定）。NetflixやHuluに加えて、AmazonやYouTubeも参入して大きな注目を集めるオリジナルコンテンツ配信に、ついにアップルが取り組むのだ。イベント会場にはオリジナルコンテンツを創り上げるクリエイターやスターたちが登壇し、会場を沸かせた。そして明らかになったそれらの内容は、ダイバーシティ（多様性）や共生、各種ハラスメントの根絶などいまの社会を映し出すものも多かった。その一部を紹介する。

ゲストのトップバッターとして登壇し、自身の製作プロセスについて語るスティーヴン・スピルバーグ監督。

リース・ウィザースプーンとジェニファー・アニストンが主演を務めるドラマが「The Morning Show」。朝のニュース番組の司会者たちが繰り広げる物語で、スティーブ・カレルも登場する。イベント時には3人が登壇。ジェニファーによると、ふたりはパワフルな女性キャラクターで、カレルの役も大胆でダイナミックなキャラクターのよう。時事を絡めつつ、現代に生きる女性を描く注目作になりそうだ。

ともに大ヒット作を持つパワーウーマンの代表格、リース・ウィザースプーンとジェニファー・アニストン。ふたりの共演はどんな魔法を起こすだろうか。

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スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を担当するのは「Amazing Stories」。自身が1980年代に手がけた「世にも不思議なアメージング・ストーリー」の新シリーズとなる。一話完結のオムニバスドラマで、ジャンルでいうとサイエンス・フィクション。第二次世界大戦時のパイロットを描いたエピソードもあるという。前シリーズはスピルバーグ原案の話も多く、ヒットメーカーに躍り出たスピルバーグの才能の幅を世界に知らしめた。新シリーズも間違いなく話題になりそうだ。

自伝的映画『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』が世界的にヒットして、一躍時の人となったクメイル・ナンジアニと妻のエミリー・V・ゴードン。そのふたりがプロデューサーを務めるのが、実話を基に移民のライフスタイルに焦点を当てるアンソロジーシリーズ「Little America」だ。イベントに登壇し、ジョークを連発して会場を笑いで満たしたナンジアニはパキスタン系アメリカ人。脚本家のチームのほとんどが移民や移民の子どもだという。たとえばある話の主人公はユタ州に移民してきたインド人家族の話。モーテルを経営する両親はインドに強制送還されるものの、12歳の子どもは両親が築いた「アメリカンドリーム」を諦めずにモーテルをこっそり営み、両親をアメリカに呼び戻す。ほかにもシリアやナイジェリア、イラン、メキシコといった国からの移民のエピソードがある。アメリカのテレビドラマが描くテーマは多岐にわたるが、移民やダイバーシティに特化した作品は珍しい。

パキスタン出身で家族とともにアイオワ州に移民したクメイル・ナンジアニ。当時の思い出を交えつつ、プレゼンテーションを行った。

スペシャルイベントのゲストとして、トリを務めたのがオプラ・ウィンフリー。テレビ界きっての人気者はApple TV+で、職場のセクシャルハラスメントとメンタルヘルスがテーマの2本のドキュメンタリーをプロデュースする。彼女自身、性的虐待のサバイバーであり、真摯な作品になるに違いない。

仕事に大いなる情熱を注ぐ女性やアメリカで活躍する移民、そしてセクシャルハラスメントの実態。いまの時代に即したテーマも掲げ、夢や愛にあふれた物語も多数ラインナップ。今秋はApple TV+の話題で持ちきりになりそうだ。

鳴り止まない拍手の中、イベントを締めくくったオプラ・ウィンフリー。