男性からなんて誰が決めた? 自らプロポーズした女性たち。

Culture 2019.04.09

フランスでにわかに増えつつある「プロポーズする女性たち」。彼女たちがパートナーからの求婚を待たなかった理由とは? 25歳から60歳の女性たちが証言する。

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アニエス、ジュリエット、ジュリー、イザベル。4人ともパートナーに自分からプロポーズした女性たちだ。

結婚してくれる?――相手をちょっと挑発したい時、あるいはジョークとして、こんなセリフを言うことはある。しかしジュリエットは真剣だった。25歳の時だった。バスティアンとは付き合ってまだ1年。だが彼女は確信していた。「この人だ」と。

ふたりはルノー・カングーでヴァカンスに出かけた。9時間かけてフランスを縦断し、スペイン・バルセロナ北部でキャンプすることに。人気のない場所。小さな丘の頂上にテントを張り、夕日を眺めた。地面には、グリーン・オリーヴと、ぬるくなったビールの缶が2本。ジュリエットはそこに片膝をついて、冒頭のセリフを言った。「これ以上なく自然なプロポーズだった」と彼女は笑う。彼の答えは「イエス」。そして、自分も近々プロポーズしようと思っていたところだった、と付け加えた。今年10月に結婚式を挙げる予定だ。

わずかながら増えている、女性からのプロポーズ。

こうしたシチュエーションに驚く人もいるかもしれない。パリを舞台にしたNetflixのドラマシリーズ「ガールフレンズ・オブ・パリ(原題:Plan Coeur)」でも、ジョゼフィーヌ・ドライ演じるミルーが、付き合っている相手に結婚を申し込むシーンがある。

「女性からプロポーズをするのは確かに“まれ”なことではある」と、社会学者のフローランス・マイヨションは強調する。「数年前から婚姻件数が減っている一方で、PACS(結婚とは異なるフランスのパートナーシップ制度)を選ぶカップルが増えています。結婚を選ぶカップルは信仰心の篤い伝統的な環境で育った人が多いので、男女平等に関わるこうした問題にはあまりオープンではありません」。それでも、思い切って決断する女性たちの数がここ10年でやや増加しているのは、アメリカやイギリスのテレビドラマの影響が大きいというのが彼女の見方だ。

アニエスがプロポーズしたのは、42歳の時だ。きっかけは嫉妬。「マルクと私は、彼の兄弟の経営する、ル・トゥーケにあるホテルの大晦日パーティに参加していました。パーティの最中に、ある女性が私の目の前で夫に色目を使い出したのです。彼女を牽制するため、彼は私のパートナーだと彼女に言ったのですが、すぐに『夫』という言葉を使えないことが悔しくなって。今夜彼にプロポーズしようと決心したのはその時です」

ほとんど見ず知らずの250人のパーティ客の前で、彼女は彼にプロポーズした。舞台に上がり、大勢の人を前に、お互いひと目惚れだったというふたりの恋を振り返った。そしてこうスピーチを締めくくったのだ。「マルク、私と結婚してくれないかしら?」

女性と男性をめぐる固定観念。

彼女たちはみな、「男女平等」問題を真摯に捉えている。こうした因習に囚われない女性たちは、女性からのプロポーズを不自然とは思わない。しかし、周囲にはそうした考えに懐疑的な人もいる。アニエスが自分からプロポーズしたことを子どもたちに話すと、当時15歳だった娘から「恥ずかしい。私は絶対にそんなことしない!」という答えが返ってきたという。

同世代の女性たちの多くも、「まるで私が自分たちと競合関係であるかのように、守りを固める」と彼女はいう。30歳のジュリーは、婚約者の友人たちから「何でも意のままにしたがるヒステリー女」と思われたと言う。

「無理もありません」と社会学者のマイヨションは言う。「女性が通常、男性に割り当てられている立場を横取りすると、すぐにこうした目で見られてしまいます。男らしさをめぐるステレオタイプがいまだに横行している証拠です」。ジュリーが自分からプロポーズしたという話を聞いて、従姉妹は「彼を出し抜いたのはいいけど、彼が本当に自分と結婚したいかどうかはどうやって知るの?」という疑問を提起した。「したくなければ、イエスとは言わなかったと思う」とジュリーは言い返した。

テレビドラマや映画の影響も。

「パートナーに自分から結婚を申し込むことは、ロマンティックな幻想を捨てることでもあります」とマイヨションは指摘する。「子どもの頃に親しんだ神話を放棄することが難しいのは、言うまでもありません。女の子はみな、いつか素敵な王子様がやって来て、魔女の呪いから解放してくれるというイメージを抱いて育ちます。子どもの頃から、女性は受け身、男性は行動的だという考えが植え付けられているのです」。

テレビドラマやロマンティックコメディなどの大衆文化もこれを助長している、とマイヨションは付け加える。こうした幻想とは無縁のように見えるジュリーも、やはりパートナーがプロポーズしてくれたほうがよかったと打ち明ける。「心の中では期待していたと思う。でも何の前兆もなかったので、自分からプロポーズしたんです」。マイヨションは言う。「たとえ男女平等を肯定する社会でも、精神構造を変えるのは簡単ではありません。自分の願望を表現することは、多くの女性にとってまだ難しいということです」

ジュリエットはスペインの田舎でプロポーズをしたことを妹に話した。その時の妹の反応をよく覚えている。「妹は『私が同じことをしたら、彼は気を悪くしたと思う』と言いました」。古臭い考え方だとジュリエットは言う。「私の友達もよく、彼のプロポーズを待っているという話をしていました。どうしてでしょう? 結婚はふたりで決めることなのに」

texte : Mooréa Lahalle (madame.lefigaro.fr)

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