日産前会長ゴーン氏の妻、キャロル・ゴーンってどんな人?

Culture 2019.04.11

2018年11月19日、東京地検特捜部に逮捕されたカルロス・ゴーン氏。当時、日産自動車会長とルノー会長兼CEOを兼任していた剛腕ビジネスマンの逮捕は、世界に衝撃を与えた。その夫を擁護するために動き始めた妻、キャロル・ゴーン氏がフランスでも注目を浴びている。「私にとって重要なのは、夫がしかるべき扱いを受けること。それだけです」と、キャロル夫人は今年1月、『パリ・マッチ』誌の独占インタビューで明かしている。

ゴーン氏は4月4日、4度目の逮捕。報酬隠蔽、背任、実態のない業務契約など、いくつもの容疑がかけられているだけでなく、夫人との結婚式をはじめ私的な目的で、会社の資金を不正に流用していた疑いがあるとされている。キャロル夫人は4月5日に単独でフランスへ経ち、初公判前の証人尋問を受けるために、4月10日に再び日本に入国した。今後も夫を全面的に支援する姿勢を見せている。キャロル夫人とはどんな女性なのだろうか?

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チェルシー地区にあるディア芸術財団を訪れたキャロル&カルロス・ゴーン夫妻。(アメリカ・ニューヨーク、2017年5月6日)photo:Getty Images

カルロスと出会うまで

旧姓キャロル・ナハス。1966年ベイルート生まれ。ミシュランで北米戦略責任者を務めたこともあるカルロス・ゴーン氏と同様に、人生の大部分をニューヨークで過ごしてきた。2009年にはデザイナーのアリソン・ルヴァスールとともに、ニューヨークでレバノン製高級カフタンブランド「カルム」を立ち上げている。

最初の夫については、マルシという姓のほかは何も明かされていないが、キャロル夫人はこの結婚で3人の子どもを設けている。3人ともエリート校として知られるニューヨーク・リセ・フランセを卒業している。娘のタラは現在ブラウン大学に通う学生で、息子のアンソニーとダニエルはふたりとも金融業界で活躍している(アンソニーはニューヨークのコンサルティング会社BCGに、ダニエルはモルガン・スタンレーに勤務)。義父の逮捕を母親に最初に知らせたのは、ふたりの息子たちだったという。

秘密の交際

カルロス・ゴーン氏とキャロル夫人の出会いについて、詳しいことは明らかになっていない。ゴーン氏の最初の妻であるリタ・コーダヒ氏(1984年にゴーン氏と出会い、1985年に結婚)がふたりの関係に気づいたのは2006年。ゴーンが日本で仕事をしている頃で、リタとカルロスは結婚22年目を迎えていた。ふたりの間にはキャロリーン、アンソニー、マヤ、ナディーンの4人の子どもがいる。

2010年に離婚が成立すると、ゴーン氏はきっちりセットの整ったブロンドヘアの新伴侶を連れて、公の場に現れるようになった。パリ16区の500平方メートルの住まい、リオデジャネイロのペントハウス、ベイルートの邸宅(875万ドルで購入し、その後600万ドルをかけて改装)が、ふたりの生活の拠点となる。2015年から2018年まで毎年、夫婦は揃ってカンヌ国際映画祭のレッドカーペットを歩いている。2016年には、ふたりでリオデジャネイロ・オリンピックを観戦する姿が目撃されている。

ヴェルサイユ宮殿での結婚式

ふたりは2016年5月にパリ16区の区役所で結婚式を行い、その数週間後、ヴェルサイユの大トリアノン宮殿で盛大な披露パーティを行った。結婚と50歳の誕生日を兼ねたこのパーティに、キャロル夫人は同胞のデザイナー、ラビ・カイルーによるドレスで登場。ちなみにこのドレスは2017年のカンヌでも着用している。会場では給仕係がマリー=アントワネット時代のコスチュームを纏い、チェンバロの演奏が響き渡り、サン・ルイのクリスタルグラスでシャンパーニュが振る舞われ、高さ1.5mのピエスモンテ(飴などを使う大型の装飾菓子)が用意されるという、いかにもヴェルサイユらしいものとなった。

アメリカの『タウン・アンド・カントリー』誌は、ゴーン氏の人柄を反映したこんな言葉を報じている。「家に招待すれば、相手は応じるかもしれません。でもヴェルサイユ宮殿に招待すれば、みんな何をおいても駆けつける」。こうした派手な演出は、フランスでの評判は芳しくなかったが、肖像が切手のデザインに使われるほど人気の高いレバノンでは大評判となった。パーティの費用は公表されていないが、逮捕後にゴーン氏は、トリアノン宮殿のレンタル料金として5万ユーロの返済を申し出ている。これについては調査が始まったところだ。

夫への確固たる信頼

写真ではいつも優雅な微笑をたたえているキャロル夫人だが、これまで彼女の声を聞く機会はあまりなかった。夫の勾留直後も堅く沈黙を守っていたものの、昨年12月28日には、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」に宛てて、夫の状況を告発する9ページにわたる手紙を送っている。この手紙の中で夫人は、「夫が2018年11月19日以来、日本の司法当局から残酷な扱いを受け、無駄に長い期間勾留されている」として、「過酷な条件で勾留されていることについて真相の解明」を訴えている。キャロル夫人は夫の誠実さを強調し、次のように述べている。「1999年に倒産の危機に瀕していた日産を救済し、業績を回復させた夫の功績は広く認められています」

数週間後、キャロル夫人は『パリ・マッチ』誌のインタビューで、夫の健康状態への懸念を語った。だが、会社側の決断については相変わらず口を閉ざしている。「本当に悪夢としかいいようがありません。私のいまの唯一の生きる意味は、夫のために闘うこと。こうした不当なやり方に対する憤りが、私の闘う力となっています。普通なら倒れていてもおかしくない。彼がこの状況から脱するまで、しっかり彼を支えななくては」

怒りを露わにした彼女は、エマニュエル・マクロン大統領にも手紙を送り、いちフランス国民である夫を援護してほしいと直訴した。3月6日に10億円の保釈金を納付して夫が最初の拘留から解放されると、キャロル夫人はマスコミに対して、自分たちをそっとしておいてほしいと語った。しかしそれも束の間、4月4日にゴーン氏は再逮捕され、最低でも10日は身柄を拘束されることになった。次のフライト時間を気にしながら生活することには慣れているキャロル夫人だが、今後、長く辛いものとなるであろう裁判が始まるまで、夫との次の面会時間を気にしながら生活しなければならない。

4月10日、再び日本に入国

日本の検察にレバノンのパスポートを押収されたため、夫人はアメリカのパスポートを使って渡航することに。4月5日、飛行機に搭乗するまで駐日フランス大使に付き添われ、フランスへと発った彼女は、翌6日にパリに到着した。夫人は『ジャーナル・ドゥ・ディモンシュ』紙に次のように語っている。「メディアでは、カルロスがすでに有罪であるかのように報道されています。彼がルノーと日産のためにしたことは忘れられています。夫はふたつの会社を再建し、雇用を守り、フランスの栄光のために貢献しました。そのすべてが忘れられているのです」。ラジオ局RTLの取材を受け、夫人は夫への支援を呼びかけるためにしばらくフランスに滞在するつもりだと語った。「その後、彼のそばにいるために日本に戻ります。彼がひとりでいると思うと、つらくてなりません」

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カンヌ国際映画祭でのキャロル&カルロス・ゴーン夫妻。(フランス:カンヌ、2018年5月11日)photo:Abaca

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F1のモナコ・グランプリを観戦。(モナコ・モンテカルロ、2014年5月25日)photo:Abaca

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第69回カンヌ国際映画祭のレッドカーペットで。(フランス・カンヌ、2016年5月20日)photo:Abaca

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アリアンス・フランセーズで開催された、ビジネススクールの学生がクリエイティビティを競うコンペティション「トロフェ・デ・ザール・ガラ」に出席した夫妻。(アメリカ・ニューヨーク、2013年11月15日)photo:Abaca

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オリンピックで男子400mリレーを観戦。(ブラジル・リオデジャネイロ、2016年8月13日)photo:Abaca

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四度目の逮捕の前日の夫妻。(日本・東京、2019年4月3日)photo:Abaca

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カンヌ国際映画祭での『2重螺旋の恋人』プレミアに登場。(フランス・カンヌ、2017年5月26日)photo:Abaca

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ファッションウィーク期間中、エリー サーブのショー会場に向かう。(フランス・パリ、2016年10月1日)photo:Abaca

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保釈後の夫妻。(日本・東京、2019年3月9日)photo:Abaca

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第67回カンヌ国際映画祭のクロージングセレモニーに出席。(フランス・カンヌ、2014年5月24日)photo:Abaca

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“世界で最も影響のあるフランス人50人”を迎えた、『ヴァニティ・フェア誌主催の晩餐会に出席。(フランス・パリ、2016年12月6日)photo:Getty Images

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オペラ座で開催されたチャリティガラにて。(フランス・パリ、2016年3月9日)photo:Getty Images

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アメリカ・エイズ研究財団主催の晩餐会に出席。(2015年5月21日)photo:Getty Images

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レバノンで開かれた会議に参加するキャロル夫人。(レバノン・ベイルート、2016年12月2日)photo:Abaca

 

 

 

text : Marguerite van Peebles (madame.lefigaro.fr)

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