北ベトナムの桃源郷に嫁いだ、若き第三夫人の物語。

Culture 2019.10.22

幸福感と哀しみを湛えた、永遠に色褪せない生の光彩。

『第三夫人と髪飾り』

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光を透かす蚊帳、柔肌を映す水鏡。水彩画のように清澄な色と精緻な構図に、まず目を奪われる。桃源郷を思わせる北ベトナムの里。だが、物憂い幸福感に波乱の兆しが潜むように、空気は張りつめている。19世紀、14歳のメイは豪農の「第三夫人」としてここに嫁いできた。親が決めた運命を理解するには若すぎる少女が頼みとする、自らの五感の震えを逃さず描き出す細やかな生活記。才能豊かな新鋭監督の曽祖母の世代の、凛とした女たちへの愛惜を感じる。同時に、女性が生き方を限定された時代相への怒りが、静かににじむのもいい。

『第三夫人と髪飾り』
監督・脚本/アッシュ・メイフェア
2018年、ベトナム映画 93分
配給/クレストインターナショナル
10月11日より、Bunkamuraル・シネマほか全国にて公開
http://crest-inter.co.jp/daisanfujin

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*「フィガロジャポン」2019年11月号より抜粋

réalisation : TAKASHI GOTO

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