若い女性と眠る老人、寄り添うふたつの魂の物語『秋』。
Culture 2020.07.05
分断の時代に寄り添うふたつの魂を描き出す。
『秋』
アリ・スミス著 木原善彦訳 新潮社刊 ¥2,200
EU離脱後のイギリス。政情不安に苛まれる日常はコロナ後の現状とも重なるけれど、そこに描き出されるのは寄り添うふたつの魂の物語だ。療養施設で眠り続ける101歳のダニエル。32歳のエリサベスにとって、8歳の時に出会った彼は本を読む喜びを教えてくれた年の離れた友達だった。目を覚まさない彼とかたわらで本を読む彼女の間を行き交う記憶。「あの人ならきっとこう思う」と言える幸福。実験的小説『両方になる』で話題を呼んだ著者の新たな傑作。
*「フィガロジャポン」2020年7月号より抜粋
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réalisation : HARUMI TAKI