オンラインショッピング、お金を使い過ぎてしまう理由は?
Culture 2021.07.30
家にいる時間が長くなり、オンラインショッピングの機会も増えた。欲しいものを見ていたら、いつの間にか“ポチッ”てしまうことも....。オンラインだと衝動買いのハードルが低くなるのはなぜ? 精神科医のミシェル・ルジョワユーが答えてくれた。
オンラインショッピングは、お金をあまり使っていないように感じることがよくある。Photo: Getty Images
オンラインセールの日、ウェブページをスクロールして、デザイナーによるスカーフや花瓶などのちょっとした小物や新世代のロボット調理器、欲しかった部屋の装飾品などを探しては楽しむ。ワンクリックして写真を拡大し、アイテムをカートに追加する。そして不思議なことに、合計金額を見ても気が変わることなく、クレジットカード情報を登録し、そのまま「購入」ボタンを押している。
かつては青果店で果物を1kg買うのにも値段交渉をしていたものだが、そのような熱心さはオンラインショッピングから失われてしまった。これはなぜだろう?
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お金と「非物質化」された商品
画像はイメージ。photo: alexialex_iStock
その答えは、主にクレジットカードにある。
「オンラインショッピングでは、財布から小銭や紙幣を取り出して財布の中身を確認する、という物理的なアクションが行われません。お金がバーチャル化され、形がなく実在しないような感覚になるのです」とパリ第7大学の精神医学・依存症学の教授で『ショッピング熱:買い物依存症』(1)の著者であるミシェル・ルジョワイユーは説明する。
言うまでもなく、販売環境も完全にバーチャル化されている。車に乗って出かけたり、店の棚を眺めたり、待ちの行列に並んだりする必要はないし、会計するのに再び行列に並ぶ必要もない。そして何より、買い物カゴからいちいち商品を取り出す必要もない。「全てが単純化されたオンラインでは衝動買いをしてしまいがちで、買い物の本当の動機を忘れてしまいます」とルジョワイユーは強調する。
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警戒心が低下する
画像はイメージ。photo: Hispanolistic_iStock
「オンラインストアは閉店の時間がなく、一日中魅力的な商品が揃います」とルジョワイユ―は付け加える。「さらに、個人に合わせたショッピングのおかげで、AIはあなたが好きかもしれないアイテムを紹介します。そのため、警戒心が欠けている時には、行動や支出のコントロールを簡単に失ってしまうのです」
そして、プライベートセールやブラックフライデーセール、その他セールのお知らせがくると、良い買い物ができると思ってまんまとマーケティングの罠にはまってしまうのだ。
「これらのサイトは倹約家の人々こそをターゲットにしており、『この機会を逃すともったいない!』というメッセージを客に送ることによって、消費への切迫感を生み出しています」とルジョワユーは言う。
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エモーショナルなショッピング
画像はイメージ。 photo: Zinkevych_iStock
広告戦略として、支払いもより簡素化されている。支払いは1回、2回、3回と選ぶことができ、商品を受け取ってから支払うことも可能だ。
「オンラインショッピングは、商品の支払い時と配達時のタイミングが異なるため、商品を受け取った時にはその支払について忘れてしまいがちです」とルジョワユーは注意を促す。
「自分用にパーソナライズされ、綺麗に包まれたギフトパッケージを受け取った瞬間、子どもの頃にプレゼントを受け取った時のような興奮を思い出すのです」とルジョワユーは述べる。
たとえば昨年のクリスマスは、パンデミックに関連して感情が締め付けられ、一部の人は自尊心を失ってしまった。
「愛する人から離れることで起こる欲求不満は、代償的な買い物につながります。本来はどれだけ愛しているかが重要なのに、愛情をお金の力で補うという幻想に囚われてしまったのです」
text : Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr), traduction : Hanae Yamaguchi