テレワークで知った、パートナーの別の顔。

Culture 2021.01.03

自宅待機生活で、パートナーの働く姿を初めて見た人は多いはず。上司と話し、同僚と連絡し、緊急の案件に対処するパートナーの姿を見るのは新鮮だ。でも時には、プライベートで見せる顔とはかけ離れた、別の顔を発見することもある。

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自宅待機でパートナーの新しい一面を発見した人たち。photo:iStock

同じ場面が10分に1度繰り返される日もある。「アントワーヌ*は立ち上がって、完全にパニック状態で、全速力で廊下を走ってきて、どうしたらいいかまったくわからない、と私に言いにくるんです。目に涙を浮かべていることさえある」と、苛立ちの混じった苦笑いを浮かべてカンディスは語る。「実は完全な落ちこぼれなのよ」

リールのアパルトマンでアントワーヌとロックダウン生活を送るカンディス。私生活では理路整然として、どんなことが起きても冷静さを失わないエンジニアの彼が、実は仕事場で大きな不安を抱えていることを知った。「彼はいつも自身満々で、自分の仕事の分野だけでなく、家計も含めて、数字に関することなら何でも任せろ、と自分の能力に自信を持っています。その彼がパニックになると私のところに来て、自分にはできない、この仕事は務まらないと泣き言を言うなんて」

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「椅子から動こうとさえしない

どうして上司にアドバイスを求めないのか、と聞くと、「君にはわからない」と答えるアントワーヌ。「ほんとうは、上司に迷惑をかけるのが怖いんだと思う」と彼女は言う。普段はとても社交的で、友人も多く、新しい出会いにも積極的なパートナーだけに驚きだ。「質問もたくさんするし、他人にも関心を持っている。人見知りなんて全然ないし、いつも胸を張っているのに」とカンディスは笑う。「アントワーヌは、典型的な実際家で、物知りなんです」

仕事と私生活のどちらも充実させる術を心得ている彼は、営業部門で働くキャンディスに両立のコツを説教していたくらいなのだ。ほんの2ヶ月前まで(つまり、夏に彼が転職するまでーーそのことが彼の変化に関係しているのかもしれない)、「私が遅くまで仕事をしたり、会議が18時開始でも文句を言わなかったり、携帯でメールに返信したりすることに、彼はとても批判的だった。職場の人間関係の管理のし方、仕事にはリミットを設けること、会社で自分の評価を高めるには……など、私に説明したものです」とカンディス。そんな教訓も、いまや彼女の前ですっかり砕け散ってしまったようだ。ほぼ1日中途方に暮れているアントワーヌ。新しい職場の業務に慣れたら、大車輪で仕事をこなす必要がありそうだ。「時々、椅子から動こうとさえしないときもあります。買い物を運ぶ手伝いもしてくれない。彼の仕事中に声でもかけようものなら邪魔者扱い、そのくせ20時を過ぎてもメールに返信……」とカンディスは苦笑する。「正直に言って、かなりうんざり」

少し心配になってきた」

驚きを通り越して、ストレスを抱えて働くパートナーの姿を見るのが辛いという人もいる。パリで、4年来のパートナーのマルタンとロックダウン生活を送る26歳のヴァランタンはそんな思いを抱えている。パートナーは9月から公務員として働いている。かなりピリピリした雰囲気の職場だ。課内は統制が取れておらず、緊急の依頼が次々と舞い込み、上下関係も厳しい……。勤務開始直後からマルタンは職場がカオス状態でストレスフルだと、ヴァランタンに打ち明けてはいた。しかし、一日中その状況を目の当たりにするのはまた別の話だ。「彼は、とても難しい状況に置かれて、参っている。こんな彼の姿はこれまで見たことがなかった」とヴァランタンは言う。「このことで彼に抱いているイメージが悪くなったりはしないけど、少し心配になってきた」。

そんなマルタンだが、プライベートでは思い詰めるようなことは滅多にないという。「マルタンは、平穏そのもので、特に問題も悩みもない。いつもは、何かにつけてオロオロしているのは私の方なのに!」そもそもマルタンは腹が据わったタイプで、物事を先延ばしにするところもあり、何が起きても動じることなく受け留める。「だから、ストレスにも強いはずだと思っていた。1日中、厳しい口調で、超真面目な態度で仕事をしている様子を見て、仕事場で彼がどれだけ自分を律しているかを目の当たりにして驚いた」

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「彼と一緒に働けるような気がする」

フィオナも5年来のパートナーのジャンが効率よく仕事をこなせる人だということを知った。「細いことにこだわり過ぎるようではあるけれど」と、企業の広報部門で働く26歳の彼女は話す。毎朝決まった時間に起床し、タイマーで計ったように一定時間シャワーを浴び、スクリーンとにらめっこしてぎっしり詰まった仕事のスケジュールをこなし、事細かなToDoリストを作り……。「プライベートでは、2回に1回は朝ごはんを抜くし、マンネリが嫌いで、いつも普段しないことをしたがる。慎重どころか、何だってぱぱっと適当なのに!」毛布をちょっと揺さぶるだけでベッドメイクをしたと言い張り、バカンスにふたりで田舎に旅したときも、村にひとつしかないホテルに予約を入れるのを忘れたりするようなタイプだ。私生活では、典型的なシングルタスク型。「玉ねぎを切りながら人の質問に答えるなんて到底無理」。その彼が、仕事ではひっきりなしに電話に応対し、複数の案件を同時にさばき、緊急に舞い込む案件を次々に処理している……。「家では私に任せきりで、何だっていい加減。ゴミ出しや夕食の準備を忘れても、自分のせいだと思わない。ところが仕事場では、責任感の強い人、責任を持って任務を全うする人という印象を周りに与えている」

配送会社のプロジェクトリーダーを務めるジャンは、ロジスティクスを担当するいくつものチームのマネジメントを任されている。それぞれのチームに指示を出し、実行させるのが彼の役割だ。「これも新鮮だった」とフィオナは言う。「プライベートでは、揉めるのがいやだから、一切意見を言わず、何を提案されてもいいよとしか言わない」。つまり、明確なアイデアを落ち着いた口調で伝えるマネージャーの姿とは正反対。キッチンにワークスペースを設けて仕事をするジャンが、フィオナには別人に見えた。彼女にとっては嬉しい発見。そして、ちょっと感心したとも言う。「実は、家での彼は少し私のいいなりのようなところがあって。それが仕事場では、リーダー然と振舞っている。彼にはリーダーシップがあるという証拠。思いもよらなかったけど、いまは、機会があれば、彼と一緒に働いてもいいような気がしています」

*印がついている名前は仮名です。

texte:Sofiane Zaizoune (madame.lefigaro.fr)

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