世界が注目する、時代に見出されたシンガーたち。
Culture 2021.03.08
時代の節目を表現する、USインディーの救世主。
『リトル・オブリヴィオンズ』/ジュリアン・ベイカー
ビート ¥2,420
昨年に誰もが感じたのは、さまざまな喪失と絶望、価値観の変化。当たり前のようにライブを行っていたアーティストは身動きが取れなくなり、彼らが生み出す楽曲も大きく路線変更を強いられることになった。そんななかで注目されたのが、メッセージ性の強いインディー系のシンガーソングライターたち。ジュリアン・ベイカーはその筆頭だ。薬物依存や同性愛といったヘビーなテーマを歌い続けてきたが、コロナ禍を通してさらに言葉の重みが増した。また、歌うだけでなくほぼひとりで楽器を演奏した意欲作でもある。
ひとりといってもエフェクトされたギターやシンセサイザーを駆使したサウンドはバンド風で、哲学的な歌詞を歌い綴る声の魅力に引き込まれる。フィービー・ブリジャーズなどが参加した楽曲もあり、じっくりと対峙して孤高の凄みを味わいたい傑作だ。
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数々のアワードに輝く、実力派のニューカマー。
『ノット・ユア・ミューズ』/セレステ
ユニバーサル ¥2,750
彼女は間違いなく2020年代の顔になるのでは? ビリー・アイリッシュなど多くのミュージシャンからも絶賛される繊細な歌声を持つ、期待の新人による初のアルバム。エイミー・ワインハウスを思わせるソウルチューンから内省的で深淵なバラードまでを歌いこなす力量に圧倒される。ファッションアイコンとしても注目されており、その動向から目が離せない。
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スタイリッシュな響きのイタリアンソウル。
『ブリング・イット・オン』/ロベルタ・ジェンティーレ
Pヴァイン ¥2,640
かつて音楽シーンを席巻したインコグニートの中心人物であり、いまもプロデューサーとして第一線で活躍するブルーイが見初めた、イタリアの歌姫。可憐なルックスを軽く裏切るハスキーで力強い歌声と、ゴージャスなオーケストレーションを施したジャジーでソウルフルなトラックが見事に響き合う。シティポップのブームに続くのはアシッドジャズなのかもしれない。
*「フィガロジャポン」2021年4月号より抜粋
réalisation : HITOSHI KURIMOTO