普通家庭の子どもを、「国産バイリンガル」に育てるベストな方法は?

特集

From Newsweek Japan

日本で子どもの英語力を上げるには、少なくとも小学校時代を通しインターナショナルスクールに通うことが望ましいが、実現できるのはごく一部。普通の家庭に育つ子が日本語力を犠牲にせずに高度な英語力を獲得する方法を紹介します。

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写真はイメージ photo:recep-bg-iStock

文/船津徹

子どもの英語教育は何歳から、どのような方法でスタートするのがベストなのでしょうか?「英語教育は早ければ早いほど良い」「幼児教育の臨界期は6歳だ」「言語習得の臨界期は12歳だ」など諸説あり、親たちを惑わせています。

私は日米で25年以上子どもの英語教育に携わってきましたが、大切なのは始める年齢よりも「英語のどの技能を学ぶか」です。いまだに日本では「英会話信仰」が根強いですが、日本のように日常的に英語を話さない環境では英会話を通して英語を身につけることは現実的ではありません。

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日本では英会話力を維持できない

年齢の小さい子どもほど英会話を短期間で身につけることができるのは事実です。これが多くの親を英会話へと掻き立てています。頭が柔らかい子ども時代に英会話を習わせれば、効率良く英語が身につくように思えるのです。

しかし乳幼児期に身につけた英会話力というのは、日常的に英語を話す環境がなければ、次第に失われていき、最悪の場合、すっかりなくなってしまうのです。

私の友人に0歳〜6歳までアメリカで過ごした人がいます。2歳から現地のプリスクールに通い、4歳の頃には英語ペラペラに育ちました。その時は「自分はアメリカ人だ」と思っていたそうです。

ところが6歳で日本に戻り、日本の小学校に通い始めたら、あれだけ得意だった英語をすっかり忘れてしまった!というのです。この友人はいま大人ですが、残念ながら子どもの頃のように流暢に英語を話すことはできません。

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同じように日本国内で英語保育を行うプリスクールやキンダーガーテンに通い、ある程度の英会話力が身についても、子どもが日本語の小学校に通うようになると、英会話力はあっという間に衰えてしまうのです。

日本で子どもの英会話力を維持・向上させるには、少なくとも小学校時代を通してインターナショナルスクールに通い、毎日英語でコミュニケーションをとり、英語で教科学習を受ける以外に良い方法が見当たりません。

これが実現できるのはごく一部の家庭であることはもちろん、両親にも教科学習サポートできる英語力が要求されます。さらにインターに通わせることで日本語の発達が親の責任になりますので、子どもの大学進学や就職、さらにアイデンティティ形成までを見越した慎重な判断が求められます。

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リーディング力の育成に目を向ける

ではごく普通の日本人家庭に育つ子どもが、日本語を犠牲にすることなく、高度な英語力を身につけるにはどうすれば良いのでしょうか?

その答えが英語学習の焦点を「リーディング力の育成」に置くことです。

父親の転勤に伴ってアメリカに移り住んできた6歳の女の子。英会話では苦戦していましたが、私の学習塾でフォニックス(英語のひらがな)とサイトワーズ(英語の頻出単語)を通してリーディングを集中指導することで、数ヶ月後には現地校の授業についていけるようになりました。

その後もリーディング訓練を継続することで着実に英語力を伸ばし、帰国する9歳の時には、ネイティブの小学3〜4年生レベルの英語の本を、辞書なしで読み進められるようになりました。

日本に帰国して英検を受験したところ、日本の大学卒業レベルである「準1級」に楽々合格。単語力をもう少し強化すれば1級にも手が届く高得点での合格でした。現在は日本の公立小学校に通いながら「家庭で英語の読書を楽しんでいます」という報告を両親からもらっています。

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上記はアメリカの話ですが、日本で子どもの英語教育を行う場合も原則は同じです。英語学習の中心を「リーディング力の育成」に置くことで、日本から一歩も出ることなく、高いレベルの英語力を育てることが可能なのです。

東京都に住むT君は小学3年生の秋に「英検2級」に合格しました。リスニングは満点で、総合でも東京都内受験者上位2%という好成績でした。でもT君は帰国生でもインターナショナルスクール生でもありません。家庭学習で英語のリーディング力を身につけた「国産バイリンガル」です。

子どもの英語学習の焦点を英会話から「リーディング力の育成」にシフトすることで、日本国内で高度な英語力を達成することが可能になります。英語の本が読めるようになれば、子どもが自学自習で英語力を限りなく向上させていってくれるのです。

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リーディング力は誰でも身につけられる技術である

英語の読書を通して、新たな語彙を獲得し、文法法則を理解し、豊かな表現力を身につけることができます。英会話のように話す相手は不要ですし、本が一冊あれば、いつでも、どこでも、いくらでも、ひとりで英語学習ができます。

ここで明確にしておきますが、私が言うリーディング力というのは、日本の英語テストに出てくる「長文読解」のことではありません。リーディング力とは「英語の本を、早いスピードで、読み解く力」です。

「そんなの日本人には無理だ!」と思いましたか?

無理ではありません。日本人が誰でも日本語が読めるように、英語のリーディング力も、正しい方法で取り組めば、誰でも身につけることができる技術なのです。その証拠に、私が指導している日本人の子どもたちは、皆、自分で英語の本を読むことができます。

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リーディング力の育成は計算を教えるようなものです。例えば「1+1=2」を子どもに理解させるには「1」「+」「=」というそれぞれの記号の意味を教えることが必要です。このプロセスを飛ばして「1足す1は何?」と聞いても、子どもは答えられません。

同様に英語のリーディングも「The cat sat on the mat」という記号の羅列から意味を読み取る作業です。フォニックスとサイトワーズで英文を構成する単語の読み方と意味を教えることで、誰でも一定レベルのリーディング力を獲得することができます。計算力を高めるために計算ドリルが必要なように、リーディング力を高めるには、英語をたくさん読む訓練を取り入れればよいのです。

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「超簡単で短い本」からスタートする

英語のリーディングと聞くと、分厚いペーパーバックを読む「厳しい修行」を連想するかもしれませんが、子どものリーディング練習は「超簡単で短い本」からスタートします。1ページに英文が1〜2行、全体で8〜16ページ程度の薄い本で、各ページにイラストが含まれていることがポイントです。

移民の国アメリカでは、家庭で英語以外の言語を話す子どもが無理なくリーディング力を身につけられるように、単語数、単語の難易度、文法の難易度などの読書レベルが細かく分類された短い本(Guided ReadersやLeveled Booksと呼ぶ)が開発・販売されています。

これらのレベル分けされた「超簡単で短い本」を活用することで、英語を第二言語で学ぶ子どもでも、自分の力でリーディング力を伸ばしていくことができるのです。習熟度に合わせて少しずつ本の難易度を上げていけば、やがてどの子もネイティブレベルの本が読めるようになります。

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最後に「英語の本を読むだけでは正しい発音が身につかないのでは?」と疑問に思った方へお答えします。

いまはネイティブと対話しなくても正しい発音をインターネットで学ぶことができます。YouTubeでは「無料で」フォニックスやサイトワーズのレッスン動画を視聴できます。また「超簡単な本」の朗読動画もたくさんアップされています。さらにオンライン辞書で単語の発音や意味を確認できます。これらを活用すればネイティブ発音で英語の本を読む力を身につけることができます。

[執筆者]

船津徹
TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。

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texte:TORU FUNATSU

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