コロナ禍で作家は何を考えたのか? いま読んでおきたい8冊。

Culture 2021.03.23

長引くコロナ禍、海外に長く暮らしてきた作家たちは、この事態にどのように反応したのだろうか。彼女たちの文章や絵を通じて、世界のいまを確かめよう。

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『デカメロン2020』イタリアの若者たち著、内田洋子企画・翻訳

2020年3月、ロックダウンが発令されたイタリアの若者たちの声を集め、すぐさま発信し続けたのは、ミラノに40年以上拠点を置くジャーナリストであり、エッセイストの内田洋子だ。『デカメロン2020』(イタリアの若者たち著、内田洋子企画・翻訳、方丈社刊 ¥2,750)には数字やデータを偏重した、報道からは見えてこない失われた日常を語る実感のこもった言葉が詰まっている。

『たちどまって考える』ヤマザキマリ著

イタリア人の夫を持ち、イタリアと日本を往復する生活をしていた漫画家のヤマザキマリは、渡航もままならない中、世界のあり方、これからのビジョンを見つめ直した『たちどまって考える』(ヤマザキマリ著、中央公論新社刊 ¥924)を上梓した。イタリアを皮切りにシリア、エジプト、ポルトガル、シカゴなどで暮らしてきたこの人も、世界の中の日本を俯瞰して見つめることができるひとりだろう。

『ブロークン・ブリテンに聞け』ブレイディみかこ著

イギリスのブライトン在住のブレイディみかこの時事エッセイ『ブロークン・ブリテンに聞け』(ブレイディみかこ著、講談社刊 ¥1,485)も、分断と格差に揺れるイギリスのいまは、日本の未来だと警鐘を鳴らす。政治や社会を自分のこととして語ることのできるボキャブラ リーが必要だと思う時、この人の地べたの言葉、パンクで血肉の通った怒れる知性が真っ先に思い浮かんでくる。

『ニューヨークで考え中』近藤聡乃著

2008年からニューヨークを拠点にしてきた漫画家で現代美術家の近藤聡乃は『ニューヨークで考え中』(近藤聡乃著、亜紀書房刊 ¥1,100)第3巻で、パンデミック下の生活を伝える。たった数カ月で元の生活が失われてしまったと嘆いているけれど、実は人種間の貧富の差、不平等など元からあった問題が浮き彫りになったのだという 指摘にハッとする。

『My Little New York Times』佐久間裕美子著

ニューヨーク在住20年の佐久間裕美子も『My Little New York Times』(佐久間裕美子著、NUMABOOKS刊 ¥ 2,035)で、トランプ政権下でアメリカはどう変わったのかを記録し ているけれど、後に歴史の岐路と言われるような変化も日常のささやかな瞬間に潜んでいるのだ。

『献灯使』多和田葉子著

ドイツ在住で日本語とドイツ語の両方で小説や詩を発表してきた多和田葉子は『献灯使』(多和田葉子著、講談社刊 ¥1,760)で全米図書賞を受賞するなど、日本でいまもっともノーベル賞に近い作家とも言われる。

『星に仄めかされて』多和田葉子著

『星に仄めかされて』(多和田葉子著、講談社刊 ¥1,980)は、日本と思われる島国が消失した近未来を描くシリーズの最新作。 言語を通して国境を超越したハイブリッドなアイデンティティのあり方が浮かび上がる。

『人間の土地へ』小松由佳著

シリア内戦を描いたノンフィクション『人間の土地へ』(小松由佳著、集英社刊 ¥2,200)は、23歳で日本人女性として初めてK2に登頂した著者が、自然とともに生きる人々に惹かれ、写真家として旅をす るうち、遊牧民の青年と恋に落ちる。内戦が勃発したのはその矢先だった。これは取材のため戦地に赴いたのではなく、愛する人と生き抜くために過酷な現実に死に物狂いで立ち向かったドキュメントだ。  自分の国で常識だと思われていることも、よそでは通用しない。そ のことを身をもって知っている人たちの血肉の通った言葉は、これからを生きる示唆に富んでいる。

*「フィガロジャポン」2021年3月号より抜粋

photo : SATOSHI YAMAGUCHI, texte:HARUMI TAKI

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