テレビの前で眠ってはいけない、その理由は?

Culture 2021.04.02

夜のリラックスタイムは、テレビの前のソファーに座るところから始まる。テレビを見ながらくつろいでいると、いつのまにか眠ってしまい、目覚めると左頬に肘掛けの跡がくっきり...。一部の人にとってはおなじみのシナリオだが、実は身体に重大な影響を与えているようだ。専門家が解説する。

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テレビの前で眠ってしまうことは珍しくない。とはいえ睡眠の質にもたらす影響は甚大だ。Photo: iStock

夜、疲れ切ってテレビの前でそのまま眠ってしまうことはよくある。中には、息抜きのため、思考が混乱している脳の「麻酔」代わりに、また、目を疲れさせて眠気を起こすために、あえてテレビを見る人もいる。

しかし、大多数の人は、テレビの前で眠ると寝つきが悪くなり、睡眠の質が悪くなってしまう。医師で睡眠学際研究所所長のヴァネッサ・スリマニと、神経学者で国立睡眠覚醒研究所(INSV)所長のマルク・レイ(1)がその理由を説明する。

ブルーライトが最大の敵

テレビがもたらす問題は、バイオマーカー(生物学的標識)、つまり食事、光、運動によって調整される私たちの体内時計を狂わせるブルーライトに起因する。

「テレビ、パソコン、スマホ、タブレットなどのディスプレイは、朝方の太陽光の明度に似ています。わかりやすく言えば、体に『朝になったから起床しなさい』と知らせる強い信号になるのです」とレイは説明する。

ブルーライトは「日が沈むと分泌されるメラトニン(編集部注:睡眠ホルモンのこと)の生成を妨げます」と精神科医のヴァネッサ・スリマニ。就眠を先延ばしにするブルーライトは、「位相のずれ、まさに社会的時差ぼけを引き起こす」とレイは強調する。

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断片的な睡眠

テレビをつけたまま眠ってしまうと、睡眠のサイクルも乱れる。「例えばCMの音の変化が原因で何度も目が覚め、結果として睡眠が断片的になり、体はほとんど休まりません。さまざまな視覚的刺激もまた同様です」とレイは説明する。その上、夜中に目が覚めてしまうと、なかなか寝付けなくなってしまう。長めの昼寝をしたときに、眠れなくなってしまうように。

また、見るものによっては、寝つきが悪くなったり、睡眠障害を引き起こすこともある。「スリラー映画やホラー映画、ホラードラマのような衝撃的なコンテンツはとても強い感情をかき立て、覚醒作用のあるアドレナリンやコルチゾールの分泌を促しす。これが、怒った状態で眠ってはいけない理由でもあるのです」とスリマニ。

新型コロナウイルス感染症の危機に瀕した患者の睡眠に関する研究の中で、不安をかき立てるニュースが睡眠に与える影響についても観察したレイは、「寝つきをよくして、ぐっすりと眠るためには、安全だと感じる状態でなければならない」と説明する。

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優先すべきこと

もちろん、ベッドの中で液晶画面を見てはいけない。特に不眠症に悩む人は、この忠告を守ってほしい。「睡眠を促し、眠り続けられるようにするためには、脳がベッドを就寝場所として記憶する必要があるのです」とスリマニは強調する。

脳を眠りへと誘うためには、就寝の1時間前にデジタル機器の電源を切ることをおすすめする。電源をオフにしてからは、体をリラックスさせ、くつろげることを優先的に行い、なるべくオレンジや黄色系の照明器具など、暖色系の明かりで環境を整えよう。

「眠るためには、知覚的刺激を減らす必要があります」とレイ。「読書や音楽を聞くことは、単一の知覚活動で気持ちを落ち着かせるが、スクリーンの画面を見ることは多角的な知覚活動を伴い、体を覚醒させてしまいます」

(1)マルク・レイ『快眠のための50の黄金ルール』(ラルース出版、全95頁、3.95ユーロ)

Texte : Kassandre Fradelin (madame.lefigaro.fr), traduction : Yuriko Yoshizawa

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