産褥期:出産に続く、激動の日々の真実。

Culture 2021.05.12

後陣痛、傷跡の焼けつくような痛み、母乳の分泌による乳房の張り。『夢の産褥生活』の著者で助産師のアナ・ロワが、分娩に続く激動の産褥期について詳しく解説する。

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分娩後の子宮収縮、出血、傷跡の痛み…。大きく揺れ動く出産後の身体と心。
photo:Getty Images

フランス5局のテレビ番組「母たちの家」にレギュラー出演する助産師のアナ・ロワが、『夢の産褥生活』(1)を上梓した。女性たちに向けて、出産の後の数週間に及ぶ産褥期について解説している。重要な時期なのに、これまであまり話題にされてこなかった産褥期について、「最初の1ヶ月は分娩よりもつらい。女性の80%が苦痛を訴えている」と彼女は言う。出産後に身体に起きる主な変化についてまとめてみよう。

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ホルモンバランスが激変

人によって、また出産の状況によって差はあるものの、身体が妊娠前の状態に戻るまでには平均1年かかる、とアナ・ロワは言う。「身体は一生懸命元に戻ろうとします。産褥の最初の6週間は特に大変です。そのうえ妊娠期間は産院で定期的に検診を受けられますが、出産したら、“さよなら、お母さん”と言われて退院。しかし身体はまだ回復していないのです」

まず最初はホルモン。産後はもちろんホルモンバランスが急激に変化する。分娩の最終段階で胎盤が排出された後、妊娠ホルモンは徐々に減少する。その経過は母乳で育てるか否かで違ってくる。「授乳しない場合、ホルモンバランスは概ね3~6週間で元に戻ります。母乳育児を選んだ女性は、授乳中は別のホルモン状態になりますが、ホルモンバランスに大きな変動が起きることに変わりはありません」

このホルモンの大変動は身体や精神の状態に影響を及ぼすため、出産後の女性は情緒的に非常に不安定な状態にある。「心配することはありません。マタニティブルーはいたって普通のこと。出産後に何の不調も感じない女性のほうが心配です」とロワは強調する。

出産後に胎盤ホルモンの分泌が減少し、母乳が分泌されるようになると、乳房が固く張って激しい痛みを感じるようになる。これは授乳してもしなくても同じ。胸が爆発するのかと思うほど強い痛みを覚える人もいる。

授乳のメカニズムも必ずしもスムーズに作動してくれるわけではない。「喉が詰まる感じがしたり、乳首や乳房先端に痛みを感じることがあります。特に産褥初期の3週間に起こりやすい」とロワは言う。そしてもちろん、母乳がなかなか出ない女性はプレッシャーを感じることになる。

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子宮収縮と出血

妊娠期間中に胎児をきちんと受け入れるために移動していた内臓器官や筋肉は、徐々に元の場所に戻っていく。「赤ちゃんを9ヶ月間支えていた会陰は伸びきっています。これは帝王切開でも同じ。これまでスイカ並みの大きさだった子宮も小粒みかんのほどの元の大きさに戻っていきます」とロワは解説する。

この変化は決して静かに行われるわけではない。例えば「後陣痛」と呼ばれる疼痛のように、強い痛みが伴うこともある。「これは子宮が元の状態に戻っていくときに見られる子宮収縮の痛みで、特に出産直後の数日間は激しい痛みを感じる人もいます。一般的に2人目以降の出産のほうが痛みは強い」。

出血が起きることもある。なかには生理が6週間続く女性もいる。ロワによると、出産後に痔を患う女性は半数以上だという。

会陰切開や裂傷、帝王切開などの傷跡も、焼けつくような痛みやひりひりする痛み、引きつりなどが「2週間程度」続くと助産師は言う。その後も痛みが続く場合があり、歩行時や重いものを持つときにだるさを感じることもある。帝王切開の場合、皮膚表面の傷は10日から2週間ほどで癒合するが、内側の傷が癒えるには1ヶ月かかる。

出産後の最初の数ヶ月は合併症の危険があるため、きちんと休息を取ることが絶対に必要だとロワは強調する。「開腹手術を受けたばかりの人が、家で家事を切り盛りするなど想像できますか? 無理です。会陰切開の傷が大きい場合も基本は同じ。忘れられがちですが、会陰切開も外科的創傷のひとつです。そのほかの創傷に関しても、回復するまで3週間は静養が必要です」

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サポートと静養

産褥期を少しでも楽に過ごすためには、母親たちへのサポートが何よりも重要とロワは断言する。フランスでは、助産師の診察は5回まで公的医療保険でカバーされている。

パートナーの援助も欠かせない。「分娩後2ヶ月半は、女性が仕事を再開するなどもってのほか。身体が回復するのに最低その位はかかります。昔は祖父母が手を貸していましたが、いまは祖父母も現役で働いている場合がほとんど。まずは父親の出産休暇の延長から始めたい。出産後の女性たちは非常に孤立しています」

(1)Anna Roy著(協力Cariline Michel)『La vie Rêvée du Post-partum』Larousse出版刊

text : Ophélie Ostermann (madame.lefigaro.fr)

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