BBC、エイミー・ワインハウスの未公開番組放送へ。

Culture 2021.05.18

2011年7月23日、エイミー･ワインハウスは栄光のただ中、27歳で急逝した。スペシャルボックスセットとBBCのドキュメンタリーがこのソウルミュージックのスターにオマージュを捧げる。今もなお、私たちを魅了し続ける彼女に。

10年前、2011年7月23日にソウルミュージックのスターは栄光のただ中、急逝した。 photo : Getty Images

彼女の独特なグロウル（ハスキーな唸り声）、クレオパトラのようなアイライン、そして皮肉に満ちた才気は、破滅的なアイコンのイメージとは異なり、我々の心を虜にした。エイミー･ワインハウスの悲劇的な死から10年たつが、その力強さとバイタリティは少しも変わらない。3枚のアルバムで構成されたミュージックボックスセットとBBCの未公開ドキュメンタリー（1）がこの並外れたイギリスのシンガーを語る。

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ソウルの歌姫

ジャズ、ブルース、ソウル界における波乱万丈の歌姫エイミー･ワインハウスは、ジャニス・ジョプリンのような60年代のスター以来、ポップミュージック界に現れた最も美しい声の持ち主として歓呼の声で迎えられた。

20歳の時にリリースした1stアルバム『フランク』はイギリスの音楽シーンに激震を走らせ、あらゆる世代、あらゆるジャンルのミュージシャンを感嘆させた。

2ndアルバム『バック･トゥ･ブラック』は1200万枚以上のセールスを記録し、ヒット曲「リハブ」や「ヴァレリー」はエイミー･ワインハウスの名声を頂点に押し上げた。しかし北ロンドンのユダヤ系の出身で、両親の離婚によって深い傷を負った若いエイミー･ワインハウスには、名声を受け止める準備ができていなかった。

ブレイク･フィールダー･シビルという男性の腕の中に完全な愛を見つけたと信じた彼女は、2007年に結婚する。しかし彼はコカイン、クラック、そしてヘロインを彼女に教え込んだ。強いドラッグはアルコールとともに彼女を破滅させ、最終的には死に導いた。

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炎の下に隠れたはかなさ

その間、彼女は独特のファッションセンスでモード界にも火をつけ、インスピレーションを受けたカール･ラガーフェルドは彼女にシャネルのコレクションをささげた。世界中がエイミー･ワインハウスに魅惑された。

彼女が起こす規則違反の数々、3オクターブを歌い上げる酒焼けした声、ピンナップガールのような花柄ワンピース、崩壊していく精神と反比例してますます高くなっていくビーハイブヘア...。だが何百万人ものファンが三枚目のアルバムを待ち焦がれるのと期を同じくして、彼女はパパラッチの餌食となっていく。この若くてもろいスターをおとしめようとする週刊誌に売り渡そうというのだ。容赦ない攻撃が浴びせられた。

2011年7月23日、エイミー･ワインハウスはロンドン、カムデンの自宅で死体となって発見された。独り、ギターや自身のアルバム、床に取り散らかった本や手書きの紙片に囲まれて。ベッドの脇には空のウォッカのビンが2本...27歳だった。

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レジェンドを振り返る

BBCは7月にエイミー･ワインハウスの人生に関する新しいドキュメンタリーを放映すると発表した。

「Amy Winehouse :10 Years On」は母親のジャニス･ワインハウスの視点から語られ、未公開の音声や映像で構成される。彼女は2014年に娘へのオマージュとして執筆した著作『Loving Amy : A Mother’s Story（エイミーを愛して：ある母親の物語）』を出版している。この本では非常にクリエイティブでいてもろく、14歳から抗うつ剤を飲み始め、摂食障害やドラッグ依存症という問題を抱えていた若い女性を描いている。

2015年に公開され、アカデミー賞を受賞したアシフ･カパディア監督のドキュメンタリー映画『AMY エイミー』も彼女の桁外れの才能を語っているが、エイミー･ワインハウスの家族はこの作品を非難している。自身の目が届いていない全てのアーカイブ同様、エイミーの父、ミッチ･ワインハウスはこの作品を嫌った。タクシー運転手に転職した元歌手ミッチは、事あるごとに娘の私生活を週刊誌に暴き、彼女のキャリアを異常なほどに後押しした。

自身のアートに没頭していたエイミーは父親をとがめることはなかった。「私にとって唯一重要なのはクリエイション。私が歌っている曲は自分で歌詞を書き、作曲している。でも私はジュークボックスではないわ。時間と静寂が必要なの」と彼女は2010年に我々に明かしてくれた。

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