フランス女優に宿る、美しく在ることの意義 美の概念は進化する。新世代の彼女たちの在り方。

Culture 2021.07.02

ファッション撮影のスタジオで、映画祭のレッドカーペットで、数々の大物女優にインタビュー。美しき女性たちと交流を重ねてきたフランス版マダムフィガロ誌のベテランジャーナリスト、リシャール・ジャノリオがフランス女性の美を語る。


美は時代の産物です。長い間、完璧な外見が求められてきましたが、いま美の概念は、もっと包括的で広義になった。意見を持ち、外見の美しさ以外の関心事を持つ人に、人々は美しさを見いだします。

モード界ではボディポジティビズムが言われています。大事なのは人に向ける視線。どんな人の微笑みや視線、仕草にも、美は存在する。ボー・ビザール(奇妙な美)という言葉もあります。完璧でないことは美点であり、時には利点となる。モードだけでなく、口紅の広告にも歯並びの悪いモデルを起用したグッチがそのいい例です。ただ、この流れはまだまだモード界だけ。スクリーンには辿り着いていません。

美の観念の発展で大事なのは、ステレオタイプの終焉です。美のステレオタイプは女性にとっての監獄ですから。とはいえ、ステレオタイプはなかなか消え去らない。それは誰もが“理想の美”を持っているからでしょう。でも時代は進化しています。いまは、アイデンティティやジェンダー、マスキュリニティ、フェミニニティを定義し直している時代。#MeToo、パリテ、平等への声を経て、“女性らしさ”という言葉さえ、いまではファム・オブジェ(客体としての女性)に繋がる軽蔑的な表現になっています。

でも、時代遅れだといわれるかもしれないが、私はセンシュアリティや優しさも大事だと思います。いま、優しさも、時に軽蔑的な意味になってしまうことがある。それは弱さに繋がるからです。では一体、なぜ弱くてはいけないのか? 弱さや儚さも美しい。もちろん反対に、強い女性、意欲のある女性、闘う女性、リーダーも美しい。女性にはいろいろな面がある。だから美しい女(ひと)を形容する言葉はたくさんありますが、昔ながらの形容詞も忘れたくないと思うのです。

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2018年のカンヌ国際映画祭の様子。映画業界で働く女性82人が性差別に抗議して、レッドカーペットに並んだ。photo:Sipa Press/amanaimages

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Richard Gianorio
1968 年、パリ生まれ。フランス・ソワール紙でキャリアを開始。30年にわたりカンヌ国際映画祭を取材。15年前に仏マダムフィガロ誌へ。3年前より現職。写真は昨年1月、Sidactionのディナーで、モニカ・ベルッチ、イザベル・ユペールと。
@richardgianorio

*「フィガロジャポン」2021年7月号より抜粋
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interview & text: Masae Takata (Paris Office), photography: Richard Gianorio (Madame Figaro)

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