マッチングアプリ狂想曲 マッチングアプリで出会った美女に貢ぐ、億万長者の心理。

Culture 2021.07.17

馬越ありさ

あなたは恋愛対象に、何を求めるでしょう。 優しさ? たくましさ? 教養? 身長? 共通の趣味? それとも、経済力? 「世の中お金だけじゃない」とは言いつつ、お金が大事なのもまた事実。取材を続ける中で、年下の女性にお金を払いながら交際を続けるひとりの男性に出会いました。マッチングアプリを通じて見えた悲喜劇を、ライターの馬越ありさが綴ります。

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画像はイメージ。photo: Nevena 1987_iStock

伸一さん(48歳)外資系企業勤務の場合

「マッチングアプリで出会って付き合っているだけなのに、パパ活になってしまうんですかね?」

落ち着いた口調ながらも、“そうは思いません”という返答以外は許さないという圧力を感じる。こうやって、自分の望む回答を引き出し続けてきたのだろう。なにしろ伸一さんは、新聞の経済欄を賑わしてきた経歴の持ち主なのだ。そんなエリートが、ギャラ飲みに特化したマッチングアプリで交際相手と出会っているとは、にわかに信じがたい。

「私はいま、遅れてきた青春を謳歌しているだけです。私の経歴は……経済誌でご覧いただいてますかね。高校までアメリカで過ごして東京大学に進学。再び海外に渡り、30歳でMBAを取るまでは、恋愛を楽しむなんていう余裕はありませんでした。だから、どうしても若いコが良くて。ただ、この年齢になると、さすがに飲み会で20代のコと知り合える機会もないので、アプリを利用しています。それなのに、男性がお金があって女性が若いと、パパ活とひと括りにされてしまうなんて」

鍛え抜かれた上半身を、オーダーメイドとおぼしき滑らかな光沢を放つ白いシャツが覆っている。48歳という年齢よりもぐっと若く見える伸一さんならば、若い女性と純粋に交際することも可能なのかもしれない……と思案していると、意外な言葉を続けた。

「確かに、お金は払っていますよ。月に50万円ですね。それに、インスタに載せられるようなレストランでの外食と、年に数回行く旅行、たまにねだられるブランドバッグにジュエリー……。彼女には年に1,000万円くらいは使っていると思います。でも、それって当然じゃないですか。私が若くて可愛いコを求める分、私は彼女たちの求める物、お金を提供する義務がありますよね」

疑問形とも取れる文ではあるが、こちらの意見を全く求めていないことは、語尾の口調から伝わってくる。

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"Greed is good"の男が、金目当ての女にハマるワケ

「20代前半のコが貰える給料って、月に手取り20万円いかないこともあるでしょう。それじゃあ、東京で生活していけませんよね。それなりのところに住んだら家賃だけで15万円はする。美しさを保つにはパーソナルトレーニングやエステにも行かなければいけないわけで、それにも10万円は必要でしょう。若さが失われた時のために、貯金だってしておきたいでしょうし。私に財力があるから、好きな彼女に支援している。それだけのことです」

億単位の年収を稼ぎ続ける身でありながら、平均的な給料や女性の必要経費に至るまで、細かい数字で捉えているのには感嘆させられる。普通なら”限られた給料の中でやりくりするのが正義”となりそうなものだが、欲望を徹底的に追求するのが伸一さんの中の正義。だからこそ、その貪欲さがここまでの経済的成功をもたらしたのかもしれない。

「それにね、女の人の”世の中お金じゃない”っていうポーズに付き合うのが面倒くさいんですよ。私も、30代の頃に合コンで知り合った普通のOLさんと、何人か付き合ったことがあるんですが……お金目当てじゃないというのを真に受けて、誕生日を高級店でのディナーだけにしたら、プレゼントがないって責められて。結局、40万円位するクローバー型のピアスを買うことになりました。欲しい物を手に入れるために全力で努力してきた私には、こういう駆け引きって不毛に思えるんですよね」

確かに、”できたら昇進したい”という姿勢では、いまの伸一さんのポジションは手に入らなかったのだろう。

「その点、ギャラ飲みのアプリで知り合う女のコ達は、分かりやすくて気持ち良いですよ。たまに強欲だなと思うこともあるけど、よくよく彼女達の育ちを聞くと、母子家庭で中学を卒業するのがやっとだった、とかで。お金に執着せざるをえないんですよ。彼女たちと話していて、初めて自分が恵まれていたと気付かされて、その分、社会に還元したいなという気持ちもあるんです」

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ビリオネアが女性に求めていたモノとは

「私が一方的に与えている関係ではないんですよ。分かってもらえないかもしれないけど……。私は40歳を過ぎた頃から、誰にも怒られなくなってしまったんです。社内で昇りつめた代償ですかね。もっと成長したいと思っているのに、これ以上のポジションはなく、もはやどうしたら良いのか分からない。そんな時に、ギャラ飲みのアプリで知り合った22歳の彼女と食事に行ったら“スタッフの人に対して偉そうだ”と指摘されて」

顔をほころばせる伸一さん。

「久しぶりに、自分のことをひとりの人間として見てくれる人と出会えたと思いましたね。彼女は掛け算もできなくて、新聞も読んだことがない。もちろん、私がどんな仕事で稼いでいるのかも分からない。それが大金だってことだけは嗅ぎ分けているようですけどね」

笑いながら話す様子から、彼女との交際を心底楽しんでいることが伝わってくる。マッチングアプリがなければ出会わなかったであろう、対局的なふたり。意外とお似合いなカップルなのかもしれない。

次回は7月31日公開予定

馬越ありさ

東京都出身。慶應義塾大学を卒業後、メーカーで販売促進に従事しつつ、ライターとしても活動。

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