出産後、スポーツを再開するならいつごろから?
Culture 2021.07.29
出産後は運動を再開できるようになるまで、ある程度の時間が必要だ。産婦人科医とスポーツ・ドクター、そしてスポーツコーチがその目安を紹介する。
産後、運動を再開するまで時間が必要。 photo : Getty Images
産後なるべく早く運動を再開したいと考える女性は多い。ストレスの解消、メンタルヘルスの維持、産前の生活リズムを取り戻すため、筋肉をつけるためなど理由はさまざまだ。しかし身体は出産という大きな変化を経験をしたばかり。それを甘く見てはいけない。運動は余裕を持って再開し、けがや疲労を防ごう。
骨盤底筋ファースト
当然のことながら、疲労の回復と新生児との新しい生活に慣れるのを待たなくてはならない。数週間たち、「大丈夫、できる」と自分で思っていても、身体が出産から回復するには最低3カ月は必要だ。フランスでは産後の骨盤底筋(ペリネ)ケアが保険でカバーされており、ランニングやテニスなど衝撃のあるスポーツはそれが終わってからとされている。
「腹筋が元の位置に戻るのを待ちましょう。妊娠中、左右に離開した腹筋は少しずつ真ん中に戻ってきます」とフランス国立スポーツ体育研究所(INSEP)の産婦人科医でありスポーツ・ドクターのキャロル・メートルは言う。
最も重要なのは内臓下垂を予防するための骨盤底筋の完全なリハビリだ。「妊娠中、骨盤底筋は子宮、胎盤、羊水そしてどんどん大きくなっていく赤ちゃんの重さに耐えてきました」と産婦人科医は説明する。「経腟分娩の場合、赤ちゃんが通るために筋肉は引き延ばされる。運動を再開する前に、まず骨盤底筋の筋肉として支える力を取り戻さなければなりません」
テニスやランニング、ボクシングはまだ不安定な骨盤底筋にとって圧がかかりすぎる。キャロル・メートルによれば、ランニングは腹筋内の圧を約4倍高める。帝王切開の場合は運動を再開するにはもう少し時間をおき、産科医の承諾を得てからにしよう。しっかりと傷が閉じればけがを防ぐこともできる。それに経腟分娩でなくも骨盤底筋のリハビリは重要だ。
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復帰は徐々に
産後数週間たったら、会陰を傷めずに呼吸法で引き締めることができるハイポプレッシブエクササイズ(身体の内側と横隔膜から生まれた力で、筋肉を動かす緩やかなエキササイズ)を始められる。
「このメソッドは身体の奥にある腹横筋を鍛え、妊娠中に開いてしまった腹直筋を近づける手助けをしてくれます」と産婦人科医のキャロル・メートルさんは説明する。骨盤底筋ケアが順調に進んだら、7週間目ころからサイクリング、水泳、早歩きなど、もう少しダイナミックでありながら会陰を傷めない運動も再開できる。
筋トレも、自分の体重のみを利用するなら再開してもOK。「しかし、腹腔内圧を過度に上げ骨盤底筋が不安定になる運動は絶対に避けましょう」とキャロル・メートルさんは忠告する。
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予防運動
運動は産後うつのリスクを減らすとされている。「30分以上運動を続けると、脳内にリラックスホルモンと呼ばれるβエンドルフィンが分泌されるからです」とキャロル・メートルは説明する。それだけでなく、自分のための時間を確保することにもなる。
骨盤底筋ケアが終了し、身体の準備も整ったと思ったら、徐々にペースを上げていこう。妊娠中、運動を完全に中止していなくても、運動量は相当減ったはず。それに、身体は劇的な変化を経験したばかり。「出産の数週間前からリラキシンという体中のじん帯を緩ませるホルモンが分泌されます。体を一時的に柔軟にさせたわけですが、その後、骨や関節、腱が元に戻るまで時間がかかります」とスポーツコーチのリュシル・ウッドウォードは説明する。「筋肉量が減少しているので息切れしやすく、体力も低下しています」。ランニングの場合、15〜20分くらいから始めるのがいい。
婦人科医のキャロル・メートルは異なった種類の運動を組み合わせた短時間のプログラムを勧める。例えば週のうち1回は20〜30分の軽い有酸素運動。残りの1回はプランクなどハイポプレッシブエクササイズを行う。
やる気や運動に専念できる時間に応じて、週2〜3回に増やしてもいい。ベビーカーを押しながらローラースケートをする、赤ちゃんと一緒に水泳教室に行くなど遊びの要素を加えても楽しい。
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注意すべきサイン
ここで示したスポーツを再開するまでの時間は、平均的なものにすぎなく、一人ひとり異なる。
「スポーツをしたいという気持ちが最も大事です。疲れ果てるまでやらないのも大切。自分の五感を注意深く観察し、用意ができたと感じたら始めることです」とスポーツコーチのリュシル・ウッドウォードはアドバイスする。
速いウオーキングや他の運動の最中に尿もれを起こしたら、婦人科医に相談し指示を受けるべきだ。
text : Kassandre Fradelin (madame.lefigaro.fr)