子どもがやる気になる、いちばんうれしい報酬とは?

Culture 2021.08.01

From Newsweek Japan

文/船津徹(TLC for Kids代表

親が「興味」と「報酬」を意識して子育てにあたれば、子どもの「やる気」を引き出し維持していくことができますが、これには欠けてはならない重要なポイントがあります。モノやお金よりも、子どもにとって一番嬉しい「報酬」を理解することもお忘れなく!

210720-motivation-01.jpgphoto: fizkes-iStock

子どもの勉強や習い事を成功へ導く原動力はモチベーションです。子どもが自発的な「やる気」で物事に取り組み、コツコツとした努力を継続すれば、大抵の分野において、周囲から頭一つ突き抜けることができます。

ところが現実には「子どもにやる気がない」「うるさく言わなければ勉強しない」「習い事に行きたがらない」という悩みを多くの親が抱えています。子どものモチベーションを上手に引き出すにはどうすればいいのでしょうか?

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モチベーションを支えているのは「興味」と「報酬」

一般に人間のモチベーションを高める要素は「興味」と「報酬」と言われています。興味とは子どもが好きなこと、やりたがっていること・知りたがっていることです。興味や関心があることであれば、周りから言われなくても自発的な「やる気」で物事に取り組むことができます。

報酬は自分がとった行動によって得ることができるご褒美です。大人にとっての報酬はモノやお金や評価であることがほとんどですが、子どもにとっての報酬は「成功体験」です。

自分の「やる気」でチャレンジしたことがうまくできたという成功体験であったり、コツコツとした努力や小さな成長を周囲から認めてもらったり・ほめてもらった時に得られる成功体験です。

年齢の小さい子どもであれば「自分で靴が履けた」「自分で顔が洗えた」「自分でコップから水が飲めた」「自分でパズルができた」という瞬間を親が見逃さずに「よくできたね」「自分でできてすごいね」とほめてあげると「関心」と「報酬」の両面が満たされ子どもの「意欲」がアップします。

小学生以上の子どもであれば「漢字テストで90点を取った」「ピアノを練習して一曲弾けた」「そろばんで級が上がった」「時間をかけて描いた絵で金賞をもらった」というタイミングで、親が「よく努力したね」「コツコツがんばってすごいね」とほめてあげると「やる気」が大きくなります。

親が「興味」と「報酬」を意識して子育てにあたれば、子どもの「やる気」を引き出し、維持していくことができるのです。自分の意欲で挑んだことがうまくいったという成功体験、努力を周囲からほめてもらったという成功体験が多いほど、やる気が大きく、自立心の高い子どもに成長していきます。

このように文章で書くと簡単なのですが、実際にはうまくいかないケースが多いですね。実は、子どもの「興味」を「意欲」につなげるには重要なポイントがあるのです。これが欠けると、子どもは成功体験を積むことができず、意欲が向上していきません。

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子どもが上手にできるようにサポートする

勉強や習い事を子ども任せにしていると、成功体験を積める確率は下がります。「身体が動かすことが好き」「すばしっこくて俊敏」という子どもにサッカー教室を勧めてみる、というのは正しい選択なのですが、ただサッカー教室に入れるだけでは不十分なのです。

子どもの興味をやる気へとつなげるには、親がアシストして「技能を周囲よりも少しだけ高めてあげる」ことが必要です。どんな習い事でも週1〜2回のグループ練習だけでは、技能は人並み止まりです。人並み止まりでは成功体験を積むことができませんから、やがて意欲は減退していきます。

サッカー教室に入れる前に、親子でサッカーの試合をテレビで見て基本的なルールを教えてあげる。父親が休みの日にキックやドリブルなど基本的な技術を教えてあげる。親がアシストして子どもに基本的なルールや技術を身につけさせてあげるのです。

するとサッカー教室で「○○くんはキックが強いね」「○○くんサッカー上手だね」とコーチや周囲の子どもからほめてもらえます。このように子どもが成功体験を積めるように親が少しだけ練習につき合って、手助けすることで、子どもの「関心」を「意欲」へつなげることができます。

ほとんどの習い事は、初歩の技能であれば、親が教えることができます。また子どもの興味に合ったものであれば、親が教えなくても、一緒にその活動に取り組むだけで、子どもの技術は目に見えて上達します。そこから先は「やる気」を下げないように、タイミング良く励まし、努力をほめてあげればよいのです。

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勉強面の「やる気」を引き出す方法は?

私はアメリカで学習塾を経営しているのですが、日本からアメリカに来たばかりの子どもは、英語力が弱いため、現地校の授業についていくことができません。このような子どもを放っておくと「自分は勉強ができない」と自信喪失し、学習意欲を失ってしまいます。

子どもを自信喪失から救い出すには英語力のサポートが必要と普通は考えますが、実際には「算数を強化する」ことが特効薬です。日本人の子どもは「かけ算九九」を覚えているので、アメリカ人に比べて計算が早くて正確です。算数であれば英語力が弱くても授業についていけますし、計算がずば抜けて得意になれば、先生や周囲の子どもから「すごいね!」とほめてもらえます。

現地校で成功体験を積むことができると「自分はアメリカでもやっていけそうだ」と、自信が回復するのです。自信が大きくなると、苦手な英語にも立ち向かっていける「やる気」が生まれます。

同じように、勉強にやる気がないという子の対処法は、得意分野を伸ばしてあげることです。勉強嫌いの子でも、一つくらい好きな教科、あるいは好きではないが苦手意識が少ない教科があるはずです。「国語、算数、理科、社会、英語のうちどれが一番好き(得意)?」と聞けば「どれも嫌いだけど、国語かな」と答えてくれます。

全ての教科を平均的に改善しようとせず、まずは一番好きな教科(興味)を得意教科にできるようにサポートしてあげるのです。具体的には、学習内容を学年よりも一つ簡単なものに下げて、親が勉強につき合ってあげます。つき合うと言っても、勉強するのは子どもですから、子どものレベルに合ったドリルを見つけてきて、毎日取り組むように励ましてあげるのです。そしてできたら「よくがんばったね」「やればできるじゃない」と努力をほめてあげればいいのです。

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子どもに与える報酬は何がベストか?

「100点とったらおもちゃを買ってあげる」「成績が上がったらお小遣いをあげる」など、報酬をモノやお金にすることは(小学生以上の子どもにとって)必ずしも悪いことではありません。しかし、子どもの「やる気」を維持する上で最も効果的なのは成功体験を積ませることです。

モノやお金を報酬として与えることが習慣になると、報酬がなければその行動を自分から進んでやらないという結果につながります。またどんどん高価な報酬を与えなければならなくなり、最初は魅力的だった報酬もだんだん効果が薄れていってしまいます。

モノやお金よりも、子どもにとって一番嬉しいのは、親から認めてもらうこと、親から努力をほめてもらうこと、親から受け入れてもらうことです。子どもが自発的な意欲でがんばったことは、たとえ結果が伴わなくても「よくがんばったね」「次はうまくいくよ」とほめて、励ましてあげてください。

子どもの年齢が上がり、勉強や習い事の難易度が上がると、頑張った分だけ報われるということは少なくなります。一生懸命勉強しても成績が思うように伸びなかったり、必死で練習しても試合やコンテストで負けることもあるでしょう。そんな時、一番近くにいる親が「よくがんばったね」と努力を認めてあげれば、子どもが「やる気」を失うことはないのです。

船津徹

TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。

 

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