美学を持つ人たちの選ぶ、美しい映画。 西加奈子が選ぶ、美しい瞬間を保存する映画とは。

Culture 2021.08.24

美意識を育んでくれる一方、選ぶ段階からセンスが問われる映画・本・音楽。多方面で活躍する憧れの彼女たちが独自の観点で選んだ、主人公の生き方や洗練の描写など、至極の美を体現する作品を紹介。

作家の西加奈子さんが選んだのは矢崎仁司監督の『三月のライオン』。この作品に西さんが見いだす美しさとは?


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大切な美しい時間を、体現してずっと残す。

『三月のライオン』

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「初めてこの映画を観たのは、10代の終わりのこと。記憶喪失になった実の兄を連れ出し、自分を恋人だと偽って生活を始める妹の物語です。もちろんそれはありふれた経験ではないけれど、言葉なしでも伝わることや、想いが身体に宿って言葉より強く残ることの切実さは、多くの人に覚えがあるはず。この作品は、誰しもが持つその感覚を体現していると思います。世界の柔らかな捉え方など、讃えるべきところは数えきれないほどあるのですが、私の中でこの映画は“私たちの大切なものや大切だった美しい瞬間を体現し、保存してくれている”という点で偉大なのだと、40歳を過ぎてから気付きました」

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『三月のライオン』
●監督・共同脚本/矢崎仁司 
●1992年、日本映画 
●本編118分 
●DVD¥3,080 
●発売・販売:アップリンク

西 加奈子作家
KANAKO NISHI
著書『漁港の肉子ちゃん』(幻冬舎刊)が、明石家さんま企画&プロデュースでアニメ映画化、6月11日公開。

※『フィガロジャポン』2021年7月号より抜粋

text: Misaki Yamashita

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