「モンパルナスのプリンス」キスリングの絵画を堪能。

Culture 2019.05.30

愛と共感の人生から生み出された、豊潤な肖像画。

『キスリング展 エコール・ド・パリの夢』

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『ベル=ガズー(コレット・ド・ジュヴネル)』1932-33年、カンティーニ美術館、マルセイユ。女性小説家コレットの娘を描いた。

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『赤い長椅子に横たわる裸婦』1918年、プティ・パレ美術館・近代美術財団、ジュネーヴ。画布全体を覆う肉感的な色彩と筆致が調和する。

 20世紀初頭、世界各国から「芸術の殿堂」を目指して集まったエコール・ド・パリ(パリ派)の画家のひとり、キスリング。ポーランドのクラクフに生まれ、19歳で渡仏し、ピカソやジョルジュ・ブラック、モディリアーニなどの芸術家と知り合う。「モンパルナスのプリンス」と呼ばれた彼は社交的で人望があり、面倒見のよい人柄から家族や友人に恵まれた。第1次世界大戦で重傷を負いながらも生き延び、パリに戻ってフランス軍高官の娘と結婚。個展も成功して順風満帆の人生が拓けていく。第2次大戦中にアメリカに亡命したが、そこでも人気は高く、同じ亡命画家たちを経済的に支援した。

 パリ派といえばアルコール中毒や自殺、女性遍歴など破滅型の芸術家というイメージを連想するが、キスリングは幸福な画業と人生を全うした。キュビスムに影響されつつ前衛に走らず、シュルレアリスムの幻想世界にも魅入られず、あくまで洗練されたレアリスムに裏づけられた豊潤な作品世界を培った。なかでも友人や妻、女優、少女など女性を描いた肖像画には独自のスタイルがあり、丁寧に描きこまれた衣服や背景のディテール、調和のとれた官能的な色彩、濡れたように憂いを含んだアーモンド形の瞳といった、モデルの心情に寄り添うような甘美さと静謐さを持ち合わせている。モデルたちとの友情や愛情を反映する作風からは、人の懐に入り共感する態度が、画家の成熟の過程に大きな影響をもたらしたことをうかがい知ることができる。

『キスリング展 エコール・ド・パリの夢』
会期:開催中~7/7
東京都庭園美術館(東京・白金台)
営)10時~18時
休)第2・4水曜
一般 ¥1,100
tel:03-5777-8600(ハローダイヤル)
www.teien-art-museum.ne.jp

※『フィガロジャポン』7月号より抜粋 

réalisation : CHIE SUMIYOSHI

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