水や光を視覚化する、オラファー・エリアソンの集大成。

Culture 2020.04.17

圧倒的な美と存在感が喚起する、環境問題への眼差し。

『オラファー・エリアソン ときに川は橋となる』

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『ビューティー』1993年。暗闇で人工的に虹を作り出す初期の代表作。日本でも原美術館の個展(2005年)で展示された。

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『太陽の中心への探査』2017年。プリズムを用いた独自の光学装置により、天体と光の関係を視覚化した作品。

光や水、霧など、自然界の要素を応用した人間の知覚を揺さぶる大規模なインスタレーションや、環境と社会の関係を問い直すプロジェクトで名高いデンマーク出身のアーティスト、オラファー・エリアソン。2016年にヴェルサイユ宮殿で開催された個展では、広大な宮殿と庭園に人工滝や霧の彫刻、光学装置のオブジェなど、一連の代表作が展示された。気象や自然現象への純粋な探究心から芸術表現に取り組むいっぽうで、地球温暖化など気候変動に関する意識改革を喚起する。電力供給のない地域のための簡便で安価な携帯式ソーラーライト「リトルサン」の製品開発では、環境問題に直接貢献してきた。

本展では、幼少期に長い時間を過ごしたアイスランドで約20年間定点観測してきた、氷河の変化を視覚化する作品を集大成する。水や光といった形を持たないものを、テクノロジーの力で眼前に出現させるエリアソンの作品は、素朴な驚きとともに神秘的な知覚体験をもたらす。インスピレーションの源泉となった自然や古代遺跡、巨大建造物に匹敵するほどの圧倒的な存在感や、心身を揺さぶるような美しさによって感覚に刺激をもたらすことで、独自の世界観やメッセージは人々の記憶に深く刻まれる。あくまで、怜悧な科学的根拠に基づくロジックに支えられた美学を鍛えあげてきたからこそ、彼の作品世界は専門家や美術愛好家のみならず、幅広い層の観客に支持され、リスペクトされてきたのである。

※現在臨時休館中。詳細につきましては公式サイトよりご確認ください。

『オラファー・エリアソン ときに川は橋となる』
会期:5/8予定~6/14
東京都現代美術館(東京・清澄白河)
営)10時~18時
休)月、5/7
※会期の変更についてはHPを要確認
料)一般¥1,400
tel:03-5777-8600(ハローダイヤル)
www.mot-art-museum.jp

*『フィガロジャポン』2020年5月号より抜粋

réalisation : CHIE SUMIYOSHI

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