どんな人がどんな理由で代理母に? 米国で増える代理出産。

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文/安部かすみ(在ニューヨークライター、編集者)

米NBCニュースの看板記者、クリステン・ウェルカーさん(44歳)は最近、夫とテレビ番組に出演し、6月に初めて母になる喜びを語った。

NBCの番組「TODAY」に夫と出演し、喜びを語るウェルカーさん。インタビューに答えた夫のヒューズさんからも涙がこぼれた。

ホワイトハウス特派員のウェルカーさんは、昨年10月の大統領選挙期間中にバイデン氏とトランプ氏の討論会で司会を務めた女性だ。荒れ狂った初回と打って変わり、彼女が旗振りをした第2回目の進行は目を見張るものがあった。大統領候補の両者に質問を鋭く切り出し、発言の妨害を減らすなど、才腕を振るい称賛を受けた。

ジャーナリストとしてメディアの第一線を走り続けてきた彼女は今年45歳で、第一子を迎える。しかしテレビ越しに語る彼女のお腹は、膨らんでいる様子がない。

彼女はこのように言った。「代理出産により、母親になります!」


代理母の女性のお腹に手を当てるウェルカーさん。「私はすでに娘(胎児)とも強いつながりを感じている」と語った。

ウェルカーさんは30代後半で、製薬会社の上級管理職であるジョン・ヒューズさんと出会い、ふたりは2回目のデートで子どものいる未来を語り合ったそうだ。2017年に結婚した時、ウェルカーさんは40代になっていたため、すぐに子作りを始めるも、なかなか授からなかったと言う。IVF(体外受精)も試みたが妊娠せず、検査の結果、子宮の内壁が狭すぎるのが不妊の原因だとわかった。どんなに辛い日々も、テレビ越しの彼女はいつもテキパキと仕事をこなす俊敏レポーターだった。しかし「生放送や中継の合間に治療を続け、とても辛い日々だった」と、心の内を振り返る。

不妊治療という「孤独な闘い」は2~3年間続いた。結局4人の専門医に診てもらったが、診断はすべて「妊娠は難しい」ということだった。これにより、彼女は代理出産を選ぶ腹を括った。

初回はうまくいかず、パンデミックによりすべての活動がいったんストップ。さらに厳しい状況は続いたが、ようやく2回目の挑戦でうまくいった。大統領討論会の時期はすでに、代理母の妊娠が分かっていた頃だ。「私があの場で冷静でいられたのは、彼女(娘)のおかげなの」とウェルカーさん。

テレビを通して告白した理由は、不妊に悩む女性に「あなたはひとりじゃないよ」と伝えたかったからと言う。不妊治療は孤独になりがちだ。だからこそ「彼女たちの励みになればうれしい。そして絶対に諦めないで」と語った。

このストーリーは、多くの人々に感動を与えた。視聴者からウェルカーさんの元に、「2度の早期流産を経て妊娠31週目なの。この話を聞けてよかった」「赤ちゃんの心拍数を確認した時のことを思い出した」「(毎日テレビで観ているから)家族のことのようにうれしい」などのエールが寄せられた。

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ニューヨーク州では代理出産(Gestational surrogacy)が合法に

ウェルカーさんが告白した4月23日は、ちょうど全米不妊啓発週間(NIAW、4月18日〜24日)だった。同日より公開された映画『Together Together』も、エド・ヘルムズ演じる中年の独身男性が代理母を雇って子どもを持つストーリーが話題に。また、ゲイであることを告白したCNNの人気アンカー、アンダーソン・クーパーが代理出産により、昨年52歳にして男の子の父親になったことを発表し、こちらも大きな話題になった。とにかくアメリカではこのごろ、代理出産はホットトピックだ。


これに乗じて、ニューヨークポスト紙では代理母に関する記事も掲載された。インタビューに答えた代理母らは、結婚をしていていい仕事に就いている。そして不妊に悩む家族や親戚、ゲイの友人、同性愛者のカップルのために自発的に代理母になることを決めたと語っている。さらに「妊婦生活がまったく苦ではなく素晴らしい経験だったため、もう一度妊娠したかった」や「悩んでいる人の助けになりたいと思った」「自分のお腹で育った子がこの世界のどこかで生きていることがうれしい」などが理由のようだ。

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代理母の条件は、21歳〜30代後半や40代半ばまで、過去に少なくとも1度の健康的な妊娠経験がなければならないなど州によって異なる。

ちなみにひとくちに代理出産と言っても、アメリカでは大きくふたつ方法がある。ひとつは、代理母自身の卵子で行う従来の代理出産(Traditional surrogacy)で、いまでも多くの州で禁止されている。もうひとつは胎児が代理母と生物学的に関連しない代理出産(Gestational surrogacy)だ。後者は、ニューヨーク州で今年2月に法律で認められたばかりなので、今後さらに増えていくだろう。

世界中の生殖医療は、2030年までに479億ドル(約4兆7900億円)の市場規模になると予測されており、その成長の鍵を握るのは代理出産だと言われている。

カリフォルニア州にある不妊治療クリニックの大学不妊治療センターによると、アメリカでは近年、後者の代理出産(Gestational surrogacy)が従来の代理出産(Traditional surrogacy)よりも一般的になり、毎年約750人の新たな命が生まれれているという。またCDC(米疾病予防管理センター)によると、代理母の数も増えており、代理出産の報告は1999年は727人だったが、13年には3432人に増えた。今後も代理出産によって救われる親、そして新たな命の誕生は増えていくことだろう。

安部かすみ KASUMI ABE
在ニューヨークジャーナリスト、編集者。日本の出版社で音楽誌面編集者、ガイドブック編集長を経て、2002年に活動拠点をニューヨークへ。07年より出版社に勤務し、14年に独立。雑誌やニュースサイトで、ライフスタイルや働き方、グルメ、文化、テック&スタートアップ、社会問題などの最新情報を発信。著書に『NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ 旅のヒントBOOK』(イカロス出版)がある。

texte:KASUMI ABE

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