本当に開催される? 迫る東京五輪とママ選手の声。

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文/安部かすみ(在ニューヨークジャーナリスト、編集者)

東京オリンピックまであと2カ月(8週間)と迫った。国内での新型コロナウイルスの感染者急増を受け、開催反対の声が国民から上がっている中、アメリカ国務省は24日、日本に対する渡航警戒レベルを4段階の最高レベルに引き上げ、国民に対して日本への「渡航中止」を勧告した。

米国が日本への渡航について最大警戒レベルの4に上げた判断に対して、加藤勝信官房長官や大会組織委員会の橋本聖子会長らは記者団へ、米国の選手団の派遣とは関連しておらず、出場に影響はないとの説明を米国から受けたことや、日本政府の決意を支持するアメリカのオリンピック・パラリンピック委員会の立場に変更がないことなどを明かした。

ホワイトハウスのサキ大統領報道官も25日の記者会見で、「五輪を巡る米国の立場に変わりはない」と強調し、国務省の渡航中止勧告とは別枠で、米選手団を派遣する方針だと述べた。

とはいえ、開催日が迫ったいまでも日々さまざまな情報が錯綜し、どの国においても心を揺さぶられている代表選手は多いのではないだろうか。

今大会は、海外からの観客受け入れ中止が3月に発表されている。つまり国外の代表選手は家族とて帯同が基本的には不可となり、試合会場で声援を受けることができない。これについては、4月にアメリカのオリンピック・パラリンピック委員会が主催するオンラインサミットに参加した代表選手たちの声を聞いてみると、その多くは「何より安全な試合の開催がもっとも大事なので、いたしかたない判断」「家族が観に来ることができないのは残念だけど、故郷で応援してくれているから大丈夫」などと理解を示していた。

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ただし中には、幼子を抱えた女性選手もいる。

aflo_15826038.jpg2012年のロンドンオリンピックでは、200mで金メダルを獲得したアリソン・フェリックス選手。photo:REUTERS/Aflo

これまで6つの金メダル、3つの銀メダルを保持し、東京が5度目のオリンピックとなる陸上のアリソン・フェリックス選手は、2年前に長女カムリン(キャミー)ちゃんを出産し、サミット中は母になった喜びなど私生活についても触れながら、「今回は一児の母となって初のオリンピックであり、選手としては最後のオリンピックとなる予定だ」と語った。「カムリンは(パンデミックによる大会延期の)困難期を乗り越える原動力となっていた」と同選手。大会期間中に2歳の娘を帯同できなければ「大きな調整をしなければならない」とコメントしている。大会のルール通りに幼子を国に残しての渡航、出場となると精神的に決して容易なことではないだろう。

4つのオリンピック金メダルを保持する、テニスのセリーナ・ウィリアムズ選手にも3歳になる長女、オリンピアちゃんがいる。「もし子どもがオリンピックに同行できないならどうする?」とのメディアの質問に対して、ウィリアムズ選手は「それについてはあまり考えたことはなかったけれど、親友でもある娘とは24時間以上離れたことがないから、連れて行くことができないのであれば、オリンピックには出場できないかもしれない」と不参加の可能性も匂わせた。

ママ選手ではないが、同じくテニスの大坂なおみ選手は、「アスリートではなく人として考えるならば」と前置きした上で「もし人々が安全を感じることができない大会ならば、それは大きな懸念事項だ」と、日本に住む人々の気持ちに寄り添ったコメントを出している。


通常のオリンピック選手とテニス選手とでは、賞金などの収入の面で大きく異なるため、大会への意欲や決意は異なるかもしれないが、家族と離れ離れの中で競技をすることが心理的に負担になる選手は少なくないだろう。

安部かすみ KASUMI ABE
在ニューヨークジャーナリスト、編集者。日本の出版社で音楽誌面編集者、ガイドブック編集長を経て、2002年に活動拠点をニューヨークへ。07年より出版社に勤務し、14年に独立。雑誌やニュースサイトで、ライフスタイルや働き方、グルメ、文化、テック&スタートアップ、社会問題などの最新情報を発信。著書に『NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ 旅のヒントBOOK』(イカロス出版)がある。

text:KASUMI ABE

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