attitude クリエイターの言葉

優しさあふれるLGBTQ映画を手がけた、期待の新星。

インタビュー

若き才能が描き出した、トランスジェンダーの静かな革命。

ルーカス・ドン|映画監督

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初監督作品『Girl/ガール』(2018年)で、昨年のカンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)、国際批評家連盟賞を受賞、米国アカデミー賞のベルギー代表に選出されるなど、26歳にして鮮烈な監督デビューを飾ったルーカス・ドン。その端正なルックスもあり、〝第二のグザヴィエ・ドラン〟ともいわれる期待の新星だ。監督デビュー作は、18歳の時から温めていたという企画の念願の映画化である。

15歳で、真の自分の姿を追求する姿に胸打たれた。

「男性の身体に生まれたけれど、心は女性であるトランスジェンダーのノラ・モンセクールが、クラシックバレエの学校に入学できずに抗議をしたという記事を新聞で読んだのが始まりでした。ノラは当時15歳だったにもかかわらず、真の自分らしさを追求しようとしている勇気に感銘を受けた。すぐに映画化したいと思ったけど、僕はまだ映画学校に入ったところで映画を創る術を知らなかった。ノラとは会って、まず友達になり、理解を深めました。彼女は人間としてもとても素晴らしい。14年に学校を卒業してすぐ、制作会社にこの企画を持って行ったんです」

この映画の主人公は、バレリーナになる、そして性転換手術をして身体的にも女の子になるという、ふたつの夢の実現に全身全霊で努力している。どちらの夢を叶えることもそう簡単ではない。

「クラシックバレエは、最上級のエレガンス、伝統的な女性らしさのメタファー」と、ルーカスは話す。この映画は、現実という壁にぶちあたり自分らしい生き方に目覚める、思春期のイニシエーションを描いた青春映画でもある。そんな産みの苦しみを味わう主人公を理解して、献身的にサポートするシングルファザーの父親の姿も感動的だ。

「これまでのLGBTQ映画では、父親はまったく理解がなく、まるで〝障害〟のように描かれてきたけれど、ノラの父親は本当に優しくて思いやりがあり、話を聞いて感動しました。こういう父親がいることも知ってほしかったんです」

本作は『リトル・ダンサー』(00年)などの流れをくむ作品ともいえるが、温かさと優しさにあふれた新世代の作風ともいえるだろう。

「同じカンヌ国際映画祭の『ある視点』部門で大賞を取った『ボーダー二つの世界』(10月公開予定)のアリ・アッバシ監督の斬新な発想に本当に驚かされました。多くの偉大な監督に学んで、僕も新しい表現を追求していきたい」

Lukas Dhont/ルーカス・ドン

1991年、ベルギー・ヘント生まれ。KASKスクール・オブ・アーツで映画製作を学ぶ。在籍中に製作した短編が数々の賞に輝き、注目を浴びる。カンヌ国際映画祭のレジダンス制度に参加した脚本をもとに、『Girl/ガール』でデビュー。

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男性の身体で生まれてきたトランスジェンダーの15歳のララの夢は、バレリーナになること。難関のバレエ学校へ入学が認められるも、成長とともに身体が変わりうまく踊れなくなることへの焦りを感じ始める。初めての公演が迫る中、過酷すぎる練習と精神的なストレスから、ララは限界に達する……。『Girl/ガール』は、新宿武蔵野館ほか全国にて公開中。

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*「フィガロジャポン」2019年9月号より抜粋

interview et texte : ATSUKO TATSUTA

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