attitude クリエイターの言葉
ファッション界も注目、新世代の歌姫がいま思うこと。
インタビュー
ファッション界からもラブコール! ジャンルレスな新世代の歌姫。
ロロ・ズーアイ|シンガーソングライター
トラップを取り入れたサウンドに乗る、耽美的で気怠げなボーカル。そのようにロロ・ズーアイの音楽性はダーク寄りのものだが、炎天下で行われたサマーソニックでの日本初ライブは短いスカートをヒラヒラさせながら踊って歌う健康的なもので、それが少し意外だった。
「フェスはみんなが楽しみたくて来るものだから、悲しい曲はやらないようにしたの。でも通常の自分のライブでは、楽曲のイメージに沿った映像を流して、照明にも凝っている。来年日本で単独公演をしたいと思っていて、その時にはそういうものを見せられるといいわね」
ハイな時もローな時も、リアルな自分を歌に。
アルジェリア人の父親を持つロロ・ズーアイは、パリで生まれて3カ月後に移住したサンフランシスコで18年間を過ごし、現在はブルックリンを拠点に活動している24歳。
「子どもの頃はR&Bポップを普通に聴いていたけど、ある時期からベイエリアヒップホップに浸かるようになった。いっぽうで、母が60年代や70年代のフランス音楽を聴いていたので、それを自然に吸収したところもある。フランソワーズ・アルディとE-40(ベイエリアの重鎮ラッパー兼俳優)が子どもを作ったら、こんな子になるんじゃないかしら(笑)」
高校生の頃から曲作りを始め、同じスタジオで出会って気が合った米国若手シンガーのH.E.R.と共作した曲がアルバム『H.E.R.』に収められることに。それがグラミーの最優秀R&Bアルバム賞を獲得したことで、ソングライターとしての評価を得た。
「自信がついたわ。ただ、私は物語よりも生きて経験したことをリアルに書くタイプなので、自分のアルバムではそこに焦点を絞ったの。生きていればハイな時もローな時もある。最高に楽しかった次の日に、最悪な気分になることもある。そのコントラストをうまく表現できたと思う」
そんな初アルバム『High Highs to Low Lows』は先述したとおりトラップ色の濃い音が特徴だが、それだけがやりたいことではないという。「ひとつやりきったら、もう次に進みたいほうなの。だから次作ではまた違うビートを取り入れるでしょうね。次はもっと自分の声にフォーカスした作品を作りたい」
ファッション界での注目度も高い。コーチ2019年秋冬コレクションのキャンペーンモデルにも起用され、ユルゲン・テラーの撮影に挑んだ。「ニューヨークを舞台に夢を掴むというテーマが私にピッタリで、(水原)希子との撮影も楽しかったわ」
1995年、フランス・パリ生まれ。中学生の頃から、両親が共働きだったためひとりで音楽を作っていたそう。トミー ヒルフィガーやコーチのモデルに抜擢。古着とハイブランドをミックスした独自のスタイルに注目が集まる。
リリースされた初アルバムは、プロデューサーのステリオス・フィル(シザ、エイサップ・ファーグ)とタッグを組み、トラップ(ヒップホップから派生した音楽様式で、重低音を強調したビートに電子音を加えたもの)を取り入れたサウンドとリアルな歌詞で自分らしさを表現したもの。『High Highs to Low Lows』ソニー・ミュージックジャパンインターナショナルより配信中。
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interview et texte : JUNICHI UCHIMOTO