リュック・ジャケが描く、カシミアのこと。

インタビュー

上海にてブランドのアイコニックな繊維素材であるカシミアをテーマにした、スペシャルなドキュメントフィルム『CASHMERE-The Origin of a Secret』を披露したロロ・ピアーナ。

ここちらはショートバージョン、フルバージョンはロロ・ピアーナのサイトへ。

このフィルムを皮切りに三部作を製作するのは監督のリュック・ジャケ。
記念すべき第一作の試写を終えて、リュック・ジャケ(以下L)とロロ・ピアーナのCEOファビオ・ダンジェラントニオ(以下F)による記者会見が開かれた。
ブランドのサイトでのみ公開しているフィルムとあわせて知りたい、いくつかの質問をピックアップして紹介する。

――このプロジェクトの目的は?

F:長い歴史があるブランドに置いて、語り伝えるべきことは適切な方法で表現したいと思っていました。ストーリーテリングを充実させたいのです。初めは夢物語のようでしたが、リュックに連絡を取り、彼と話し合うことになりました。その結末はご覧いただいた通りです。

L:『皇帝ペンギン』でアカデミー賞を受賞した結果、私は世界の状態を気にも留めずに振舞うことが不可能になりました。ロロ・ピアーナは持続可能であることが純粋に経済的に必要なことであり、それは単に繊維を確保する方法であり、単に畜産家との関係性を確保することであり、そこが実に気に入りました。また、モンゴル、ペルー、タスマニアやニュージーランドでの撮影も実に興味を引くものでした。このフィルムは、カシミアの歴史を紐解く好奇心旺盛な一人目として自分が感じたことを伝える唯一の方法でもあったのです。

Luc Jacquet.jpg

上映後にスピーチをしているリュック・ジャケ監督。

――撮影時に大変だったことは?

L:実を言うと、南極大陸から北極まで、極めて過酷な条件で仕事をすることに慣れているクルーと一緒に仕事をすることが幸運にも多かったため、それほどの難局はありませんでした。
とはいえ、最大の難局は、ナレーターの語り無しでストーリーを伝える万能な方法を見出そうとすることでした。ひたすら、山羊の世界のなかに、またカシミアの世界のなかに視聴者を入れようとしました。モンゴルに行くと、また砂漠に入ると、何も持たずに生きる姿を目の当たりにします。これは山羊にとっても、山羊を取り巻く人々にも当てはまります。この思いを共感してもらうことが非常に重要でした。
難局ではなかったのですが、畜産家と一緒に過ごす機会や、撮影のために彼らと過ごし、彼らの暮らしのなかに入る機会を得ることは、私にとって非常に重要でした。

――畜産家は撮影クルーのことを快く思っていましたか?

L:そこはとても大きな課題でした。畜産家は一緒に現場に立ち会いながらも同時に山羊の面倒も見ている。彼らの仕事を妨げないようにしながら、リハーサルの出来ない山羊たちの撮影を行いました。山羊の生存問題にも気を遣わなくてはなりません。畜産家の皆さんも山羊たちも我慢強く、本当によく耐えてくれました。

Fabio d'Angelantonio, Luc Jacquet, Breeders, Pier Luigi Loro Piana.JPG

左奥からCEOファビオ・ダンジェラントニオさん、リュック・ジャケさん、そしてドキュメントフィルムに出演協力した、モンゴルと内モンゴル自治区の畜産家のメンバー、右奥は副会長のピエール・ルイジ・ロロ・ピアーナさん。

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――撮影中の素晴らしい瞬間、忘れがたい瞬間はどんな時でしたか?

L:その種の質問にはいつも非常に感銘を受けますね。というのも、撮影は普通、世界のどこかの部分ですから。正直に言えば、モンゴルでの撮影は実に特別なものとなりました。今後は畜産家と一緒に、そして今回特別なロケ地となったゲルを使って、あのような撮影を行うことはまず難しいでしょう。我々は常に人々と一緒に過ごしましたので、彼らとの関係は非常に強いものとなりました。
撮影後、彼らは私に一頭のラクダをくれました。本物のラクダです。プレゼントのようなものでした。一体、このラクダで私にどうしろというのかと思いました。これは空想ですが、おそらく市場に行けば、そのラクダで野菜を買えるでしょう。冗談のようですが、それでも私にとってそれはとても特別な関係を築けたことの証なのです。もちろん、彼らはいまも私のラクダの世話をしてくれています。
あらためて感じるのは、今回の撮影でこの家族の一員になれたことは本当にとても幸運なことで、おそらくそれが私にとっていちばん大切なことだと思います。

――撮影期間は全体でどれくらいでしたか?

L:いつも言っているのですが、私は撮影時間よりもロケハン時間を長く取っています。ロケハン中の方が非常に身軽にすばやく動きやすいので。もちろんまったく費用がかかりませんから。そしてそのためにはしっかりと準備をする必要があるのです。これからモンゴルで10日、内モンゴルで10日かけて撮影する予定があるのですが、撮影したいもの、厳密には撮影したい場所と時期についてははっきりしていますので、準備はすでに済んでいます。

――ナレーターの語りも字幕も入れないと決めた点について教えてください。

L:私の場合、話の筋や見解を語り伝えなくても話の内容を作品が物語っていますので、人々に字幕を出していることになっています。観る人自身のクリエイティビティを駆使して、そのストーリーを自身で理解してもらえます。この方法は、いろいろと影響を受けやすく、心に深く染み入り、そして普遍性が高いと思います。今回のドキュメントフィルムで何が語られていたのかを理解していただく際に、字幕が必要だとは思っていません。何を言っていると感じたのか、自らそれを信頼するのです。ただ、TVの場合は、TVですから、いつもおせっかいになります。すべてのことを過剰なまでに説明することになりますね。人はそんなに理解力がないわけではありませんが。私が皆さんを信頼すると言ったら、信頼していのです。私は皆さんの感受性を信頼しています。私は皆さんの能力とクリエイティビティを信頼しています。

Loro Piana_Inner Mongolia_Giulio Di Sturco_1113.jpg

――映画のタイトルについて、secret(秘密)とは何でしょうか。

L:私に解釈では、根本に立ち返ろうということですね。

――ドキュメンタリー映画のストーリーというものは、どのように編み出すのですか?

L:クリエイティブなプロセスを説明するのはいつも大変難しく、時には再撮影のようなこともするのですが、ストーリーはそのときどきで出来てきますね。その説明はあまりしたくないのですが、このような分野は、1日のうちにさまざまな瞬間があり、ふたつのロケ地で1年あればそこにもさまざまな瞬間があるという前提でいる必要があります。以上です。
それが作業する理由であり、組み立てていくうえでのバランスに労力を要する理由であり、自分でもよく分からないことをするのです。
知っていることをすべてこのディレクションに詰め込んでいますが、映画の制作中は、合理性からは外れなければならないし、というのも、映画の言語自体がどこか合理的ではないところがあるからです。我々が撮影しているのは一般的な映画ではありません。
また、私が吹き替えを入れたがらない理由もそこにあるのですが、感動のような類のものを求める人なら、合理性よりも本能的なものに従うべきです。こんな感じで申し訳ないのですが、次回、編集室に行って、私と一緒に3週間籠ったら、理解していただけるでしょう。

本編はこちらから

 

Luc Jacquet 2.jpg

リュック・ジャケ

フランスの生物学者であり映画監督・脚本家。24歳でリヨン大学を卒業。専攻は動物学。1993年にはグルノーブル大学大学院で自然環境管理を学ぶ。1992年、スイス人映画監督ハンス・ウルリッヒ・シュルンプのもとドキュメンタリー映画『ザ・コングレス・オブ・ペンギンズ』の撮影に参加したことがきっかけで映画製作者の道を志す。2006年に『皇帝ペンギン』でアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞。フランスのセザール賞の初監督作品賞にもノミネートされた。その後『ワンス・アポン・ア・レインフォレスト』(13)、『アイス・アンド・スカイ』(15)を制作。17年には『皇帝ペンギン2:次のステップ』が公開された。

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