attitude クリエイターの言葉

アコギの繊細な音色が描く、生命への感謝。

インタビュー

パンデミックをきっかけに、いまある“生”を謳歌したくなった。

ロビン・ペックノールド|ミュージシャン

アコースティックギターがベースの幻想的なサウンドで美しい衝撃を与えたデビューから13年、ニューフォークの世界を築いてきたフリート・フォクシーズ。フロントマンのロビン・ペックノールドは、当時の反響が現在も音作りに大きな影響をもたらしていると語る。

デビュー作のヒットで、活動に不安を抱えてきた。

「デビュー盤が予想外にヒットしてから、僕は絶え間ない不安にさらされてきた。次に何を作るべきか、どんなふうに受け入れられるのか、音楽シーンでの立ち位置、ツアーのこと……日々考えてしまって、これまで活動を純粋に楽しんだことはないんだ。でもそれは、あらゆる面において恵まれた環境に身を置かせてもらってきたからだと思う。不安を感じることで、かえって精神のバランスを保とうとしてきたのかも」

4作目となるニューアルバム『Shore 』は、そんな不安を抱えながらも、いま与えられている命への感謝を表現した優しい作品だ。

「これまでの偉大なミュージシャンたちに敬意を表し、彼らから影響を受けていることを隠したりはしない。でも彼らができないようなやり方で、生を思い切り謳歌するようなアルバムを作りたかったんだ」

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昨秋、先行デジタル配信されて話題になったアルバムが待望のCD化。幻想的で壮大な自然を感じさせるものから、都市の日常を切り取ったような楽曲まで、アコースティックギターをベースにした繊細な音色で、さまざまな風景を描く。未来への希望と、現実に潜む美しさを堪能できる作品に仕上がっている。『Shore』アンタイ・レコーズ(輸入盤)¥1,750

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制作中は、拠点であるニューヨークからポルトガルやフランスにも赴いた。さまざまな楽器の音色に自然の音を取り込んだ音作りは順調だったが、作詞は難航を極めたと言う。そんななか、新型コロナウイルスが蔓延し、世の中がすっかり変わることに。しかし、逆にそれが創造の扉を開くきっかけを与えてくれた。

「ニューヨークの街をドライブするだけの日々では、1年かけてもたどり着かなかっただろう歌詞が、次々と降りてくるようになった。書き留めていくうちに、自然とアルバムが完成したんだよ」

また、音楽に対する思いや愛情がさらに深まったとも言う。

「僕にとって音楽は大切なもので、音楽なしの人生は考えられない。このパンデミックで、それに気付くことができたんだよ」

アルバムからは、これからどんな試練が目の前に立ちはだかろうとも、光を求めて音楽とともに前進していこうとする彼らの姿勢が伝わる。

「これが最後のアルバムになるかもしれないという心意気で、いまある創造力をフル活用して制作した。実際にこれが最後になることはないだろうけど、未来は誰も予想できないからね。そんな僕らの思いに、多くの人が共感してくれたらうれしい」

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Robin Pecknold/ロビン・ペックノールド
アメリカ・ワシントンで結成されたバンド、フリート・フォクシーズのフロントマン。2008年にリリースされたデビュー盤『フリート・フォクシーズ』が音楽メディアを中心に高く評価されたことをきっかけに人気を博す。

*「フィガロジャポン」2021年4月号より抜粋

interview et texte : NAOHISA MATSUNAGA

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