編集KIMのシネマに片想い

フランスで、本当にヒットする映画とは?

編集KIMのシネマに片想い

こんにちは、編集KIMです。
今年はフランス映画祭が昔のように横浜で行われることになって、懐かしい気持ちでいっぱいだったのですが、慌ただしくしていて行けませんでした……無念!出品作の中には、2018年8月号でも紹介している『グッバイ・ゴダール!』(P136 ステイシー・マーティンの東京女。)や映画レビュー掲載『エヴァ』、9月号映画レビュー掲載フランソワ・オゾン監督『2重螺旋の恋人』も映画祭上映されました。フランス映画絶対応援姿勢をフィガロジャポンは貫いてはいるのですが。

ところで、実際にフランス本国で大ヒットする映画って、どんな作品なのでしょう? カンヌ国際映画祭やヴェネツィア、ベルリンで高い評価を受けるアート作品や社会的なテーマの作品ではありません。KIMが尊敬する映画評論家であり、映画のプロデューサーでもある在パリ生活の長い吉武美知子さんから以前聞いたのは、「圧倒的にコメディ映画がヒットするし、パリではなく地方を舞台にした作品が案外ヒットする」とのことでした。

先日の横浜のフランス映画祭にも出品され、7月6日より公開になった『セラヴィ!』というコメディ映画、しびれます。

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ヒトって、どうしてこんなに不器用なの?と、仕事ができる人は特に観ていてイライラしちゃうかも(笑)。でも、人間の欠点やスマートでない要素って、なんて愛らしいのだろう、と感じられる映画です。おそらく、人間と人間との間で起こるちょっとした摩擦を楽しめるようになったら、「人生の達人」になれるのかもしれません。その「修行」を見せられているような物語です。
ウエディングプランナーの主人公(ジャン=ピエール・バクリ)が、パリ郊外の邸宅での披露宴を仕切ることになり、つかえない従業員、自己チューな新郎やミュージシャン、仕事のできない友人カメラマンなどに泣かされながら、「さまざまなダメージが功を奏して」、新郎新婦や招待客が、心の奥底から湧き上がるシアワセを感じられる、という内容。欠点やうまくいかないことが、かえっていい結果をもたらすことって長い人生の間、多々あります。

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この映画を素敵にしているいくつかの理由、その1は、監督コンビが、あの『最強のふたり』(2011年)の監督であることでしょう。日本でも大ヒットしましたね。傷ついた人への目線や、社会に当然ある差別をとっぱらったところにある人と人とのつながりにストレートに光を当てたストーリーが観客の心をわしづかみ、口コミ大ヒットという映画業界でもっともうれしいパターンの成功例でした。
その2は俳優陣。いわゆる現代的なオタクのダメ男ヴァンサン・マケーニュも良き脇役ですが、それより何より、主役のジャン=ピエール・バクリの「味のある存在感」に釘付けになります。傲慢な態度しかり、焦ったり口うるさかったり。そういう姿が不思議とハマって、繊細な映画の見どころとなる存在感を醸す俳優なのです。

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右がジャン=ピエール・バクリです。

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中央がヴァンサン・マケーニュ。

バクリが出ている作品で個人的に大好きな1本があるKIM。
『ムッシュ・カステラの恋』(2000年公開)です。
バクリはもちろんムッシュ・カステラ役です。なんの芸術的センスもない、思いやりもない会社経営者であるカステラ氏が、恋に落ちることによって自分自身の奥底にあった(のかもしれない)さまざまなセンスやテイストに目覚め、善行へと導かれていく、という物語です。公私ともどもバクリのパートナーであるアニエス・ジャウイが監督をつとめました。
こちらもカステラ氏と彼を巡る人々の群像劇。人生の中で、気付かなかったモノ、そうであったら違っていたであろう時間を、人と人とが出合い、交わっていくなかで見つめなおす、ということを丁寧に描いた映画です。この作品も本国フランスで大ヒットしました。

高尚なアート映画で「人生の旅」を味わえるのもフランス映画の特徴ですが、本国でも、一般的なフランス人のハートに響くのは、じんわりと人生を見つめなおせる日常をおもしろおかしく描いた作品です。万国共通かもしれませんね。

『セラヴィ!』
●監督・脚本/エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ 
●出演/ジャン=ピエール・バクリ、ジャン=ポール・ルーヴ、ジル・ルルーシュ、ヴァンサン・マケーニュ 
●2017年、フランス映画 
●117分 
●配給/パルコ 
●渋谷・シネクイントほか全国にて公開中
©2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE
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『ムッシュ・カステラの恋』 

●監督・共同脚本・出演/アニエス・ジャウイ 
●出演/アンヌ・アルヴァロ、ジャン=ピエール・バクリ、ブリジット・カティヨン 
●1999年、フランス映画 
●112分

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