Music Sketch

ユーモアとヒネクレも詰まった、最高に楽しいテンパレイの最新作

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Tempalay(テンパレイ)の最新アルバム『from Japan 2』は、最近のお気に入りの1枚だ。彼ら特有のユーモアとヒネクレは、演奏や音色からも、メロディや歌詞からも、そのちょっとしたフレーズからも味わうことができ、しかも1曲の中で情景を変えていく曲調の面白さもあって、音楽の楽しさが濃密に詰まっているからだ。そして、小原綾斗の歌から漂う浮遊感にはロマンチックな切なさや優しさも感じられ、そのまま溶け込むようにテンパレイの世界へと引き込まれていく。

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左から藤本夏樹(Dr)、小原綾斗(Gt&Vo)、竹内祐也(Ba)。作詞作曲を手掛ける小原の非凡な才能がこのバンドの要だ。

彼らのことは昨年、日本の若手バンド特集で1度取材している。
https://madamefigaro.jp/culture/feature/161024-tempalay.html
ただ、他の4組は既にライヴを見ていたものの、テンパレイはデビューアルバム『from Japan』を聴いてピン!と来て、ライヴを見ずに取材を申し込んだため、その直後に見たライヴはまだ試行錯誤を思わせる内容だった。でもそこから紆余曲折しながら進化していくライヴパフォーマンスと人柄に魅せられ、1年間で6回ほどライヴに足を運んでしまった。今年に入って2月にEP『5曲』を、6月にGAPとのコラボレーションによる配信限定シングル「革命前夜」を発表。フジロック・フェスティバル‘17 では出演前日に小原綾斗が右手を怪我し、当日はバンド仲間に急遽ギターを弾いてもらいながらライヴを行って注目を集めた。そんな激動の中、彼らは2枚目のアルバム『from Japan 2』を完成させた。

「革命前夜」

聴いてみると、まず曲や歌を際立たせるほど、音の良さが耳に伝わる。小原曰く、「エンジニアの人とテンション感や(音に対する)気の遣い方が合った」そうで、自分たちが求めるサウンドを徹底的に探求することができ、しかもヴィンテージの機材があるスタジオでの作業は、ドラムは曲ごとにシンバル含めドラムセットを変えて、1920年代のスネアドラムを使うなどしたという。とにかくギターもベースもドラムも、その他の音色もとてもよく、丁寧に構築されていったことがわかる。

テンパレイの曲の魅力はいくつかあるが、わかりやすいところでは曲の途中で曲調がガラリと変わるところ。「my name is GREENMAN」はライヴではおなじみの人気曲だが、スローに始まった曲がファンク調のアップテンポになり、ノリやすい歌詞とともに厚みの増したロック調のギター・サウンドへと展開していく。まさにライヴ演奏するうちに完成していったような面白さに溢れている。

■セッションでは思い切り遊んでみようという感じで。

—どの曲もテンパレイらしいツボが満載で、聴くたびに発見のある素敵なアルバムですよね。遊び心のある曲作りはセッションから生まれるの?

小原綾斗(以下、O):好きにやってみたらそうなった感じですね。「革命」の展開に関しては確かセッションで、思い切り遊んでみようという感じでやったよね?

竹内祐也(以下、T):「こんな感じにしよう」とは話していたけど、ガッツリは決まってなくて。

藤本夏樹(以下、F):やりながら考えて行くみたいな感じだった。

—「かいじゅうたちの島」のギターの音も柔らかいサイケ調で好きだし、「ZOMBIE-SONG」のバックで流れているジャズ風のギターも好きだし、“ワッワッワッワッワゥ”というような言葉が入る部分もテンパレイっぽい。「革命前夜」の最後のサビのベースラインも好き。キーボードが不協和音をぶつけてくるのも面白かったし、挙げだしたらキリがないです(笑)。

O:「ZOMBIE-SONG」のサビの部分はベックぽいことをしたかったんです。ちょうど曲を作ったのが「WOW」が出た時で、自分たちなりに“I say Wow”というのをやりたかっただけなんですけど(笑)。

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9月6日、下北沢BASEMENT BARでの写真。ここに写っていないが、サポートメンバーであるAAAMYYY(Cho/Syn/Sampler)の存在も欠かせない。レーベル提供。

—音の良さが目立つけど、音数は『5曲』の頃から減っていますよね。あとベースが自由なスタイルだった前のアルバムに比べて、リズム隊としてガチッと音が嵌るようになって、曲としての基盤がしっかりし、その分、歌がさらに際立ったような。

O:そうですね。ベースは今まではホント自由にやってもらっていたと思うんですけど、今回はもっとシンプルにわかりやすくて、「TIME MACHINE」など、「1発の音で説得力のあるフレーズを」という注文はしました。

—「San Francisco」と「ZOMBIE-SONG」はEP『5曲』に収録されています。今回のために新たに書いたのは何曲?

O:「インスタントハワイ」は、僕が遊びでロジックで作ってた。「made in Brazil」は未だ3人でライヴをしていた時にやってた曲で、今と全然アレンジは違うんですけどね。だから、13曲中7曲が新しい。最初は夏のリリースを意識していたけど、いい意味で灰色なイメージのアルバムになりましたね。坂本慎太郎さんの2枚目のアルバムのような質感になったかなと、自分は思ってます。

F:俺はアルバム全体でのイメージは考えていなくて、単純に曲ごとに、ただただカッコイイものを作ろうと思って、個々にやりたいことを考えて作っていたかな。

T:最初は夏っぽさとか、曲ごとのテーマはあったんですよ。6月に合宿に行って原形みたいのを4曲ほど作ったんですけど、その時はテーマがあって、「TIME MACHINE」はサウンド的にはゲームのドンキーコングぽい感じ、「革命」は宇宙から見た地球とか。60年代〜80年代くらいの音とフレーズ見たいのを入れてやりたいなというのがありましたね。

■曲を作る時にライヴを意識して作ることはない。

—「made in Brazil」は曲を聴いてから歌詞を見たら「こんなに少なかったの?」って思うくらい、気持ち良い雰囲気の曲で。これもラストのサビのベースなども凄い好き。

O:これは僕のおばあちゃんの曲。ブラジルの移民で、20歳で日本に来て僕のおじいちゃんに出会った。すごいファンキーで面白い人なんです。

—歌詞は、以前は言葉を並べて敢えて行間を読ませたり、語呂合わせで転がしていったり、感覚重視なところがありましたよね。それも好きでしたが、今回は整理されて、もう少し意味性を持たせたというか、感じる部分がすごくあって、いいですよね。

O:嬉しいです。そうですね。前も意味はあったんですけど、それをもっとシンプルな言葉にしたらわかりやすくなっただけだと思うんです。もっと何を言っているかわかってほしいと思ったんですよね。

—一番苦労した歌詞は?

O:「TIME MACHINE」が一番苦労したかもしれない。「新世代」は一瞬で書きましたね。アルバムの2曲目を作ろうと思って、曲自体も30分でサーッと作っただけなんですけど。“(音楽が)マジ売れねえな”って歌です。

「新世代」

—少しネタ明かしをしてもらってもいい?

O:「夏の誘惑」は浮気心の歌ですね(笑)。「ZOMBIE-SONG」はヒップホップが流行っていたんで、似非ヒップホップをやろうって思って作って、それをゾンビに置き換えたっていう。「San Francisco」は去年行ったアメリカツアーでの実際の景色を歌っていて、(竹内)祐也さんいなかったんですけど。

—脱退騒ぎの時で(笑)。そのベースといえば、「新世代」は入りが特徴的ですよね。

O:デモの時点ではレッド・ツェッペリンの「移民の歌」をそのまま弾いていたんですけど、セッションの時に頭の部分を抜いてみようと。

—移民が新世代になったのね(笑)。

T:演奏していて最近ようやくしっくり来たくらいで、恥ずかしくて。ライヴでどういう顔をしてこの曲を弾けばいいのか(笑)。

—曲やアルバムを作るときにライヴでやることをイメージして作る人もいるけど、テンパレイはそういうタイプではない?

O:ないですね。僕はそれを人の作品に対して感じるんですよ。ちょっと売れてきたバンドがライヴを意識した曲作りをしても、全然良くないなって思う。もちろんライヴで見たらライヴ映えするんだろうし、カッコイイんでしょうが、僕は1人で音楽を聴きたいタイプなんで、どうでもいいというか。ライヴはライヴ、そうでないと曲がかわいそう、質が下がってしまうような気がするんです。だから僕はOGRE YOU ASSHOLEとかのライヴは音源とまったく違うし、興奮するんですよ。そういうことです。もちろんライヴというものが飯を食うためにも大事なものではあるんですけど。

■メンバー全員のお気に入りは「深海より」

—お気に入りの曲はありますか?

O:一番気に入っているのは「深海より」ですね。「深海より」というテーマを持って作り始めて、サビを作った時点でなんとなく言葉があったんですけど、それをどんどん形にしていく中で研磨していったというか。次の日に見てもカッコイイと思える歌詞はOKと決めているので、それまで何度も書き直したり、本番歌っている最中も書き直したり、でもそれは全曲そうでしたね。

T:3人とも「深海より」なんです。最初に(小原)綾斗のデモを聴いた時からメロディがとても良くて、しかもいろんな音が入っているんですよ。それをそう聞かせていないのも凄いと思っていて。

O:デモから変わったのはベースとドラムくらい。それ以外はもう全部僕のデモと全く一緒のフレーズで。ギター3本、シンセ2本入ってて、深海を表現したかったんです。

F:だからビートはもっとシンプルにしたくて。メロディはいいし、「深海より」が来た時にアルバムの8割くらいは出来上がっていた状態だったので、最後に取り掛かったこの曲で、小難しいフレーズにしたくないなと思った。なのでドラムのフレーズ自体は単純なんですけど、レコーディングでちょっと面白いことをしてみようと、2台で全く別のことを叩いて、ステレオで真ん中で聞こえるのは1つのフレーズみたいにして、ドラムが飛んでるみたいな音作りにしました。

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最新アルバム『from Japan 2』発売中。

—ドラムはパッドよりも生音でいい音を出すことが増えましたね。金物(シンバル)をはじめ、どの音もいいですよね。

F:そうですね。1回パッドをメッチャ入れようと思った時期があったんですけど、今回はみんなでセッションをしている時に、そこに合うフレーズを考えながら叩いていて作っていたから、その必要なかったというか、生ドラムでやりたいことがたくさん浮かんでしまったんです。今は金物を買ったりして叩くのが楽しいし、シンバル1枚で出せる音色がずいぶん違うので。

—最後に、去年からいろいろありましたが、バンドを立て直しながらこのアルバムを制作していって、この3人は最強!と思えた瞬間はありました?

O:スケジュール管理ができてなかったり、自分が怪我をしたりで、7月はみんな病んだ感じになったりしたんですけど、アルバムが発売になってお客さんが増えたりとか、そういう反応が見えてから、このメンバーでちゃんといい作品を作ったんだなという実感を持てるようになったし、ライヴもできていると思うし、「いいな」と、一昨日くらいから思ってますね(笑)。

F:みんなにイラついてても、「曲はいいのができてるぞ!」って思ってやって来たので(笑)。

T:バンドは人間性だと思うので。音楽にも出ると思いますし。今はすごくいい感じだと思います。

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11月にはTempalay、ドミコ、MONO NO AWAREの3組で中国5カ所を回るツアーを行う

*To Be Continued

伊藤なつみ Natsumi Itoh

音楽ジャーナリスト/編集者

『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュース等も。これまでデヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッド等、国内外のアーティストに多数取材。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
Twitter:@natsumiitoh
Spotifyプレイリスト:MUSIC SKETCH

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