Music Sketch

インディ・ザーラ 取材&ライヴ《前編》

Music Sketch

FIGARO japonの最新号の音楽ページで取り上げたモロッコ出身のシンガー・ソングライター、インディ・ザーラ。彼女が今月中旬に初来日したので取材してきました。

0531a_natsumisan_1.JPG ベルベル人のインディ・ザーラ。小柄で人懐っこい女性です。

アトラス山脈周辺の大自然の中に育ち、母や叔父たちがシンガーやミュージシャンだったことから、幼少時から音楽に当たり前のように囲まれて育ってきたそう。物心付いてからは、自分に血として流れているベルベル人の伝統音楽をはじめ、アルジェリアの大衆歌謡であるライ、アフリカの官能的な民俗音楽など、ありとあらゆるものに耳を傾け、パリへ移住後はますます音楽のカオスの中へ・・・・・・。ワールドミュージックはもちろんのこと、ジャズや2パックやア・トライブ・コールド・クエストといったヒップホップに夢中になったそうです。

また、子供の頃から刺繍に接する機会が多く、アートへの関心も高かったこともあり、18歳からルーヴル美術館の監視員として働き、世界中から集うアートに接していたそうです。自身でも絵を多数描いています。

ミュージシャンとしてのデビューは30歳。以前からコンサートを頻繁にやっていたもののプロになる意識は高くなく、ただ、MySpaceに自作の曲をアップしたところ注目されて、周囲の人々、特に母親からアルバムを作るべきだと背中を押されました。そして、ジャズの老舗ブルーノートと契約するに至りました。

0531a_natsumisan_2.JPG アコースティック主体の音楽ながら、情念のようなものが軽やかに歌われます。 
Photo : Rieko Kaji

――あなたの音楽にはさまざまな音楽要素がミックスされていますが、曲を作る時にそういったことを意識しているのですか?
「私はいろんな音楽の融合をやりたいと思っているの。10歳の頃、即興で曲を作り、その当時から"オリエンタル調のメロディに英語で歌詞を歌う"といったことをやっていたわ。いろんな音楽のコネクションに興味を持っていて、ファドはオリエンタルなエジプトのブルースに近いと思っているし、モロッコのジャズとアメリカのジャズを融合させるのも面白いと思っている。とにかく興味が尽きないのよ」

――先日、ライヴを拝見しましたが、ギターだけの演奏であなたの楽曲の魅力を伝えるのは簡単なことではないですよね。ブルースが基盤になっているように感じたのですが、アレンジには時間を掛けていますか?
「その通りです、私はアレンジに関してはすごく気を遣っています。かなり労力を費やした部分ですね。曲作りやアレンジで、自分の限界がどこまでいけるかを熟考しています。巷に溢れている品のないやっつけ音楽みたいにはしたくないので。私がやろうとしている音楽は、じっくりと時間をかけて煮込んだ料理のようなもの。煮込むことによって、いろんな材料の風味というものがスープに溶け出して、本物のフュージョンになる。そういうことをジャズやブルースを通して私はやりたいと思っています」

0531a_natsumisan_3.JPG ライヴは5月17日、東京日仏学院ラ・ブラッスリーで行われました。 Photo : Rieko Kaji

――「Stand up」という曲では、間奏でのリズムが際立っていますね。
「レコーディングの時に私がリズムを担当していて、もっとエジプトやレゲエのリズムを取り入れたいと思ったの。ギターのトーマが参加して間奏のメロディを引き出したところ、それがとても良かったので、他のミュージシャンにも声をかけて参加してもらったわ。私もメキシコの弦楽器トレスを弾いて、加わったし。いろんなミュージシャンを演奏に参加させて、私がシェフになって、カットしたり、味付けをしているの(笑)」

――ヒット中の「Beautiful Tango」をはじめ、緩やかで官能的な楽曲がインディ・ザーラさんの曲の特長ですが、「Music」のようにトランス的なクラブミュージックも収録されていて、意外でした。でも、こういった音楽を好むのもあなたの性格の一面なんですよね?
「そうです(笑)。私はいろいろな音楽スタイルというものを、このアルバムに封じ込めたいと思った。私の考えでは、ロックンロールというのは西洋のトランス音楽。この『MUSIC』の歌詞もトランスについて語っているわ。音楽は私の血の中に流れていて、私の心臓の鼓動でもあるから。私はダンス・スピリットというものをリスナーにどう伝えて、どう呼び覚ますかを考えて作ったの。ただ、この曲は他の曲とあまりに違うので収録するのをためらったけれど、私のいろんな一面を見せるべきだと思って、周囲の勧めも加えたのよ(笑)」

0531a_natsumisan_4.JPG お鮨が大好きで、来日時は頻繁に食べていたそう。 Photo : Rieko Kaji

――もし今、目の前にステキな人が現れたら、名刺代わりにどの曲を聴かせますか?
「ふふふ(笑)。『Kiss & Thrill』ね。誰かの気を引く時って、音楽自体も甘美で、人を惑わすような部分が必要だと思う。この曲は恋人達が抱き合って、愛情を交わすという曲なので、私はこの歌を歌うわ(笑)」

――「Old Friends」という歌で、"私たちの住んでいるこの天国に、現実はやってくるかもしれない"と歌っていますが、それはどういう意味なのですか?
「これは私の個人的な歌で、夢幻的な歌なの。私たちの祖先であったり、死者の人たちのことを念頭に置いている。先祖は私たちとは現実的にはとても離れたところにいるけれど、実はもっと近い存在であるという両面性があると思うの。また、人生というのはあらたなひとつの旅であるから、夢のようなものもであって、現実と夢との境が見えないような、遠いけど近いものという感覚もある。私が自問するには、"既に私たちは現世にいて、それそのものが天国じゃないの?"という......。その曖昧な感じを歌っているんです」

――曲作りのインスピレーションはどこから来るのですか?
「最初のワンフレーズは、ある瞬間にポン!と降りてくる感じ。美しいフレーズだったら、それをメモしておきます。触発されるのは、私が見たものかもしれないし、太陽の光線かもしれないし、それはさまざま。でも、詞にしていくのは夜の作業で、夜の静寂の中で、自分の心臓の鼓動や、内なる心のざわめきがとてもよく聞こえてくる。だから私は、その心のざわめきのようなものを言葉にしているのかもしれません」

引き続き、インディ・ザーラが手掛けている絵について話を聞いてみました。

0531a_natsumisan_5.jpg デビュー・アルバム『ビューティフル・タンゴ~見知らぬ美しい人へ(原題:HANDMADE)』

MySpaceはhttp://www.myspace.com/zahrahindi

*to be continued

伊藤なつみ Natsumi Itoh

音楽ジャーナリスト/編集者

『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュース等も。これまでデヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッド等、国内外のアーティストに多数取材。2018年より日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
Twitter:@natsumiitoh
Spotifyプレイリスト:MUSIC SKETCH

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