TAO'S NOTES

【TAO連載vol.26】偉大なヒーローを亡くしていま思うこと。

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アメリカ史上ふたり目の女性連邦最高裁判事であったルース・ベイダー・ギンズバーグ氏(以下RBG)が他界してしまった。

87歳と高齢で数年前から癌と闘っていたので、もう長くないかもしれないと覚悟はしていたが、彼女の死は想像以上に私自身へインパクトがあり、アメリカ中のリベラル派の多数がそうなったように、言いようのない不安が押し寄せる日々が始まった。

RBGが世の中にもたらした貢献というのは日本に暮らす多くの皆さんの想像を超越すると思う。女性の就職率は明らかに違っただろうし、いま私たちが当たり前に持っている基本的女性の権利が与えられていなかっただろう。極端に言うと、彼女がいなかったら私たち女性は社会にとって、子どもを産んで育てるためのツールからほぼ進歩できないままだったかもしれないのだ。何より彼女は多くの男性にフェミニズムの大切さを教えたと思う。

彼女は自分が長くないのを知り、後任者は次の大統領が決まるまで選出しないでほしいと公に願っていた。
しかし彼女亡き現在、トランプ大統領が任命した候補者によってアメリカ中が揺れている。

シカゴの連邦高等裁判所判事であるエイミー・コニー・バレット氏は、敬虔なカトリック信者であるといわれ、彼女が就任してしまうとある大きな問題が悪化すると懸念されているのだ。妊娠中絶問題である。

現在アメリカでは、レッドステートと呼ばれる共和党支持者多数の州の多くで妊娠中絶が禁じられている。州によって何週目から違法なのかとか、母体の健康状態などいろいろな要素で変わってくるのだが、2019年にはアラバマ州が全米で最も厳しい中絶禁止法を成立させ物議をかもした。この法律では医師が中絶手術を試みた場合は最大禁錮10年、実際に中絶手術を行った場合は最大禁錮99年の量刑を科すことができるようになっている(母体保護は例外)。中絶手術を受けた女性は刑事責任を問われないとなっているが、中絶手術を合法で受けられないとなると、望まない妊娠をしてしまった人や、レイプ被害者の身体を守ることが困難になる。

性行為は子どもを作るための行為で、快楽のためではないと考えるカトリック教は、避妊に失敗してしまった意図しない妊娠であろうと、行為をした責任を持つべきと考えるのだが、ここにたくさんの矛盾が生じる。

RBGの有名な言葉の中に、「子どもを産むかどうかは女性の生き方・幸福と尊厳にとって核心的な決断です。それはその女性本人がみずからのために決断すべきことなのです。その決断を政府が女性に代わって行うならば、その女性は、みずからの選択に責任を負うべき成熟した大人として扱われていないということにほかなりません」というものがある。

彼女が生涯をかけて私たち女性、そして多くの男性のためにも戦った末に与えられた基本的人権のひとつが、バレット氏の就任によって後退してしまうというのは、とてつもなく残念である。

これってアメリカの話でしょ? 日本には関係ない、と思われる方もいるかもしれないが、現在日本はアフターピルを市販で買えるかどうかで揺れている。

市販化への要望はたくさんあり、厚労省は2017年にOTC(医師による処方箋が必要なく、薬局・ドラッグストアで買える一般用医薬品)化の検討を始めたそうだが、検討委員会では「薬局で薬剤師が説明するのが困難」、「安易な使用が広がる」などの懸念から市販化にいたらなかった。

「安易な使用が広がる」という懸念は前述のカトリック教と同じように、モラルや信念の問題で話し合いの余地があるかもしれないが、「薬局で薬剤師が説明するのが困難」とは一体どういうことだろう……

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人間は動物的本能から思春期を迎える頃より性に興味を抱き、まだ社会的に子どもを産んで育てる能力を持たずして性行為を始めることがごく一般的といえるだろう。子どもだろうと大人だろうと避妊術は100%の確率のものはなく、失敗してしまうことだってある。現在日本で認可されているアフターピルは処方箋がないと買えず、価格も6千円から2万円となっている。またレイプの場合、警察に届ければアフターピルの公費助成が出るが、実際に警察に行く選択をする人は被害者のわずか3.7%といわれている。やっとの思いで警察に行ったとしても、警察にアフターピルは常備されていないので、調査などが先になるとアフターピルの効き目があるタイムリミットを過ぎてしまうなど、いろいろな問題が想像できるだろう。

以上はNPO法人ピルコンのホームページの文章を参考にさせていただいている。アフターピルの市販化へ向けて15万人の署名を厚生労働大臣、日本産科婦人科学会理事長、日本薬剤師会会長へ届けようと署名を集めているので、ぜひ皆さんにもご賛同いただければと思っている。(www.change.org/p/アフターピル-緊急避妊薬-を必要とするすべての女性に届けたい

今年はじめにロサンゼルスで参加したウィメンズマーチに行った際、私は「our bodies our choice」と書いたプラカードを持って参加した。そしてその時の写真をインスタグラムに投稿した際、多くの批判的コメントが寄せられ、フォロワーも激減した。

私にとっては初めての出来事だったので一瞬ショックを受けたが、やはり信じているものを発信していく大切さを考え直し、投稿を消すことはしなかったが、あまりにも否定的なコメントが多く、それを見た方の中に、もしまだ自分の信念がない人たちに「これが多数派で、一般的な考えなんだ」と思ってほしくないと思い、コメントを非公開にした。

もちろん中絶やアフターピルの存在自体、手放しで称えるべきことではない。私も、そんなことをしなくて良い世の中が存在するならそれに越したことはないと思う。

しかし避妊を怠る男性、非意図的な避妊の失敗、性行為の強要、レイプがこの世からなくならない限り、女性はそれに対する護身術を与えられるべきだと思う。

命を重んじる信念は素晴らしい。でもまだ生まれてきていない命を重んじるならば、すでにこの世に生を受けている女性たちに対しても、その信念を反映させてほしいと思う。

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ルース・ベイダー・ギンズバーグのドキュメンタリー映画は日本語でも観られるので、ぜひこの機会に彼女の素晴らしい軌跡を再度知ってほしい。© Cable News Network. All rights reserved.

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『RBG 最強の85才』
●原題/RBG
●監督/ジュリー・コーエン、 ベッツィ・ウェスト
●出演/ルース・ベイダー・ギンズバーグ、ビル・クリントン、バラク・オバマ
●2018年、アメリカ映画
●本編98分
●DVD¥4,180 発売・販売:株式会社ファインフィルムズ
© Cable News Network. All rights reserved.

 

TAO

千葉県出身、LA在住。14歳でモデルを始めた後、2013年『ウルヴァリン:SAMURAI』のヒロインとして女優デビュー。以降、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(16年)やドラマ「ハンニバル」「高い城の男」(ともに15年)など話題の映画やテレビドラマに出演。18年はHBOドラマ「ウエストワールド」に出演、日本では『ラプラスの魔女』や『マンハント』が公開され、国内外で活躍の場を広げる。インスタグラムのアカウント@emeraldpracticesでは、バイオダイバーシティや環境問題について投稿。新たにポッドキャストにて「エメラルド プラクティシズ」をスタート、ゲストを迎えてグリーンなライフスタイルへのヒントを発信していく。

※TAOのオフィシャルインスタグラムでは、連載「TAO'S NOTES」で読みたいテーマを随時募集中。コメントまたはDMにてお知らせください。@taookamoto

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