連載【石井ゆかりの伝言コラム】第7回「ジューンブライド」&「真珠」

石井ゆかりの伝言コラム

第7回「ジューンブライド」「真珠」

6月の花嫁「ジューンブライド」は幸福になれる、という言い伝えを、多くの方がご存じだろうと思います。6月を意味する「ジューン」は、ローマ神話の女神ジュノー(ユノー)からくる名前です。ギリシャ神話のヘラと同一視されるこの神様は、結婚の幸福と貞節の女神であり、この神様の名前の月に結婚した人は幸福になれる、という話につながったのだそうです。もっとも、春からの農業の繁忙期がようやく一段落し、お祝いをする余裕が出る時期だからだとか、西洋では6月は比較的季候が良いからだとか、起源には諸説あるようです。
日本では6月はちょうど梅雨時で、宴会に集まるにも、人々が正装するにも、どうも「お足元が悪い」時期です。また、日本では6月は祝日がないので、実際にはあまり「ジューンブライド」は人気がないのだという話も耳にしました。

ただ、私はかねがね個人的に思っていたのですが、雨が多いとか、祝日がないとか、そういった「条件の悪い」時に慶事を催すとかえって「縁起がいい」というのは、妙に説得力がある気がするのです。好条件が揃うとわかっている時に楽しいことを企画するのは確かに合理的なのですが、運とか縁とかいったものは妙に「非合理・不合理」のイメージがあります。おまじないやお守り、さまざまな儀式もたいていは非合理です。でも、その非合理の中に、私たちは「人知の及ばないもの」を見て取り、そこに踏み込もうとするところがあるように思われます。
どんなに仲の良いカップルでも、どんなにお似合いの縁組みでも、末永くうまくいくかどうかは、だれにもわかりません。見通せない未来に願をかけるような気持ちで「結婚式」を執り行う、その時に雨が降ろうが槍が降ろうが「ジューンブライド」の言い伝えに賭けてみたい、という思いは、古今変わらぬ人の真実であるような気がします。

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真珠は星占いの世界では、おそらくその見た目から、月と関連づけられています。月は他にも、ムーンストーン(そのまんまですね!)やシルバーなどとも結びつけられます。月は蟹座を支配する星なので、蟹座もまた、真珠と結びつけられます。6月下旬から7月中旬は蟹座に太陽が入る時期なので、このあたりの生まれの人は真珠と関連づけられる、ということになります。

真珠は冠婚葬祭に用いられるため、多くの人が幼いころから認知する、とても身近な宝石だと思います。蟹座は「親しみやすい・ベタな・庶民的な」世界なので、案外この点でも、真珠はよく合うなあと思います。私も幼いころ、糸の切れてしまった真珠のネックレスが家の引き出しにあるのを見つけて、バラバラになった真珠で遊んだものでした。
そのころから、私は少し気になっていたことがあります。それは、真珠の「中」がどうなっているのか、ということです。他の宝石ならば、「石」ですから、透明で中が見えていたり、不透明でもおそらく中は一様であろうと想像できます。でも、真珠の場合は、貝が体の中で生み出したものです。ナカミがどうなっているのか、ずっと微かな興味を持っていました。

ですが先日、なんと、あの真珠を大胆にも「カット」したアクセサリーを目にする機会がありました。半分にカットされ、断面をあらわにした真珠の中を覗くと、そこには年輪のような模様が見えました。貝が何重にもコーティングを施し、静かにゆっくりと丸い宝石を育てたのだ、ということが伝わってくるようでした。

「中」が見えないもの、「先」が見えないもの。
パートナーシップでも真珠でもそうですが、時間をかけてゆっくりと育てて貴重なものが生まれるとしても、そのスタートラインでは、私たちにはそのことが見通せません。また、何十年も一緒に暮らして完璧に調和しているように見えるカップルも、その「何十年」の時間の中に何が起こってきたのかは、真珠の中身のように、外からは見えないものなのだろうなと思います。
「見えないもの」に対して、私たちは精いっぱいイマジネーションを膨らませて、働きかけようとします。
6月は曇りがちで星の見えない季節ですが、それが見えようと見えまいと、星占いは雲のうえの星と自分たちの心の中を、追いかけ続けていくのです。

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Illustration : SHOGO SEKINE

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