デザイナーが語る、フェミニニティ漂うフォルテ フォルテ。
Fashion 2019.09.20
自然体で着こなせるタイムレスな服、フォルテ フォルテ。特別な素材や手仕事による、着る人のパーソナリティやフェミニニティが内側からにじみ出る服のクリエイションについてデザイナーにインタビュー。ブランドの世界観が体感できるミラノのショップもあわせてご紹介。
ジアーダ・フォルテ。フォルテ フォルテデザイナー。ニット工場を経営する家族のもとに生まれる。イギリス・ノッティンガム・トレント大学ニットデザイン科を卒業。2002年、兄パオロとともに同ブランドをスタート。
――幼い頃からデザイナーになろうと決めていたのですか?
実は、自分がデザイナーになるとは思っていませんでした。私の一族が経営する工場は、ラグジュアリーブランドのニットを製造していました。最高のクリエイションとメイドインイタリーの職人技が常に身近にある環境に身を置くうち、自然とデザインを手がけるようになりました。
――フォルテ フォルテの誕生秘話があれば教えてください。
パーソナリティを表現する小さなワードローブを作りたいとの想いが募り、刺繍したTシャツなど10ピースほどの小さなファーストコレクションを作りました。色はすべて白。服への想いを込めて、それぞれに「マイ・スカート」「マイ・シャツ」と刺繍したタグを付けました。母がパターンを、兄が製造工房探しを担当し、サンプルを担いでパリまで売りに行ったという、まさに家族による手作りプロジェクト。「着るたびに心を揺り動かされるような、魂を持つ服を作りたい」という一心でした。
――その服作りの精神は、ブランドが成長したいまも変わりませんか?
はい。ポエティックでエモーショナル、着る人との距離感がない服を作り続けていければ。タイムレスな美しさを持ち、フェミニンなセンシビリティを内包するイタリアらしいエレガンスがあると自負しています。
――「エモーション」を喚起させるための具体的なデザイン手法は?
意外性のある素材使いや組み合わせ、マスキュリンとフェミニンのミクスチャーなどです。また、ちょっとしたディテールへのこだわりは、その服に愛着が湧くきっかけになると思います。
――コレクションのデザインワークの進め方は?
トレンドを追いかけるような服にはまったく興味がないので、先へ先へとトレンドを読むようなことはしません。私のデザインは、まず私の心からスタートします。旅や本など、自分が見たもの、新たに発見したものを心がどう受け止めたか。それを正直に表現する、オーセンティックで自由な仕事です。
――その服をどのような女性に届けたいですか?
美へのセンシビリティがあって、自分にとって何に価値があるのかを知る女性。25歳から78歳の好奇心あふれる人ですね。
――10年後、ファッションはどう変わっているでしょうか?
いまファッションの世界もデジタルコミュニケーション全盛ですが、その人間的ではない速さに疑問を持ち始める人が出てくると思います。デジタルと人間本来のリズムとのバランスが取れ、ファッションはもっとオープンで自由になっているはず。
上奥:2020年リゾートコレクションより。アーティストや詩人が暮らす、パリのサンマルタン運河への旅からインスパイアされたオーバーサイズのトレンチは、メタルヤーンを織り込んだヴィスコースサテンをウォッシュ加工。さりげないツヤ感は、マスキュリンな中にフェミニニティを醸し出す。 上:アフロパリジャンのエスニックなムードから始まった旅は、カリブのフランス領アンティル諸島へ。エスニックをコンテンポラリーに表現したロングジャケットなども。
――昨年4月にオープンしたミラノブティックの特徴は?
プライベートハウスのように寛げるスペースになっています。ピンクのビロードで壁を覆った試着室、アートピースを飾ったコーナーなど、さまざまな表情を持つ空間です。ラックなどの什器は、植物を思わせるオーガニックなフォルム。床は、ミラノの家によく見られるトラヴェルティーノというピンクがかった石で、ミラノならではの特徴を出しています。公私ともにパートナーである、アートディレクターのロバート・ヴァッティラーナがデザインを手がけていますが、彼は私のこともブランドの世界観もよく理解してくれる、とても素敵なパートナーです。
ミラノ店でジアーダお気に入りのコーナー。天井から下がるのはオーガニックカーテンと名付けられた有機的なフォルムの真鍮モビール。
上奥:オーガニックカーテンには、いくつものガラスの容器が配され、中には古い糸巻きやアンティークレースが。 上:床材は、ミラノの家の床によく用いられるトラヴェルティーノという石。パリ店は花崗岩、ロンドン店はレンガと、その土地特有の素材を使うというこだわりがある。日本は先日GINZA SIX店がオープンしたばかり。
アート作品やアートブックが置かれたコーナーも。センスのいい友達の家のリビングにいるような寛ぎを感じさせてくれる。
フォルテ フォルテ
Via Ponte Vetero 1, 20121 Milano
tel:+39・02・7200・8575
営)10時~19時(月~土) 11時~19時 (日、祝)
休)祝不定休 ※ほか8月に不定休あり
www.forte-forte.com
photos : TAKEHIKO NIKI, réalisation : MEGUMI TAKAHASHI