首相夫人も顧客。ファッションはレンタルの時代へ?

Fashion 2021.06.12

文/坂本みゆき(在イギリスライター)

5月最後の土曜日に、かねてから婚約をしていたボリス・ジョンソン首相と結婚して、イギリスのファーストレディとなったキャリー・シモンズ。

段階的に緩和はされてきてはいるものの、未だロックダウン下のイングランドでの彼らの式は、ウェストミンスター寺院でのこぢんまりとしたセレモニーのあとに、首相官邸裏の庭で30人のゲストを招いてのパーティという小規模なものだったという。

それに合わせたかのように、新婦の装いも、頭に花かんむりを被ったシンプルなボヘミアンスタイル。なかでも特に注目を集めたのは彼女のウェディングドレスだ。その理由はこのドレスがレンタルだったから。

400-aflo-161478620-article.jpgphoto: REUTERS/Aflo

イギリスでのウェディングドレスの平均価格は1313ポンドと言われている。でも、もちろんこれはあくまでも平均で、デザイナーズやビスポークとなるとさらに高価になるのはご存知の通り。キャリーのドレスはギリシャにベースを持つクリストス・コスタレロスの手がけたもので、価格は3000ポンド近いと言われている。

しかし彼女はこのドレスを、ハイエンドブランドのレンタルショップマイワードローブHQから45ポンドで借用したとか。キャリーは日頃からこの店のファンで、頻繁に利用しているらしい。

イギリス国内で毎年破棄される衣料は35万トンにも上ると言われており、ファッションが地球に与えるダメージの深刻さがより話題に上るようになった現在。その消費スピードを少しでもスローダウンする手段として、近年イギリスではファッションアイテムのレンタルが注目を集めている。おしゃれを楽しみながらも、環境汚染への罪悪感が軽減されるからだ。

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ファッションに強い大手デパートもレンタル事業者とのコラボに積極的だ。リバティやハーヴェイ・ニコルズはマイワードローブHQと、セルフリッジスは貸し手と借り手のマッチングサービス、HURRとのポップアップショップを昨年オープンして人気を集めた。

マイワードローブHQは、アクセサリーも豊富に揃え、SNSを通してコーディネイトの提案も。

初夏らしいアイテムを揃えたHURR。レンタルならば衣替えも必要なし?

環境面だけではなく、消費者自身にとってのメリットもある。手の届かない高価なアイテムでも、レンタルならば楽しめるチャンスがあるからだ。これまでもファッション好きにはじわじわと浸透してきたハイブランドのレンタルが、これを機にますます広く利用されるようになっていくのかも?

坂本みゆき MIYUKI SAKAMOTO

東京生まれ。95年に渡英後、ブライトン大学院にてファッション史を学びながらファッション業界紙やファッション誌への寄稿を始める。現在は男性誌、女性誌、専門誌など多方面に渡ってイギリスに関する記事を執筆。好きな分野は英国文化と生活、アート、音楽、食べ物&飲み物。サセックス州在住。ティーンエイジャーの母。madame FIGARO.jpで「England's Dreaming」を連載中。

text:Miyuki Sakamoto

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