読者目線でレシピを届ける、家庭料理人にインタビュー!

Gourmet 2021.05.25

From Newsweek Japan

プロの料理人とも、料理好きのセレブとも違う。アメリカで人気の「家庭料理人」ジュリア・ターシェンとは何者か?

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画像はイメージ K2_keyleter-iStock

外食のチャンスが減って思い知らされた家庭料理のありがたさと、奥深さ。それを誰よりも知っているのが、自称「家庭料理人」のジュリア・ターシェンだ。新著『シンプリー・ジュリア』の刊行を機に、作家ルマーン・アラムが彼女の料理哲学を聞いた。

――今度の本で、あなたは読者に「私は家庭料理人、あなたと同じよ」と語り掛けている。そこに込めた思いは何? 家庭料理人とフランス料理のシェフはどう違う?

フランス料理のシェフも、たまには家庭で料理する。でも私は胸を張って「家庭料理人」を名乗り、「家庭料理人のための本を書く」と宣言している。なぜなら私は(プロの厨房ではなく)自宅のキッチンから、読者のキッチンへ直行する料理を書いているから。私はレストランのシェフじゃないし、ケータリング業者でもテレビに出るシェフでもない。上から目線の話じゃなく、私は読者と同じキッチンにいるの。

――子供の頃から家のキッチンで料理本を眺めていたけれど、料理学校に通ったことはないとか。調理師学校ではなく、人文系のカレッジを選んだのはなぜ?

私は幸運にも経済的に恵まれた両親を持ち、実社会で役立つ技術を身に付けろと言われることもなかったので、職業学校ではなく人文系の大学に行けた。そして詩とクリエーティブライティングを学んだ。結局、それが今の仕事に役立っている。

料理の道を選んだのは、昔からいつも食べ物やキッチンに興味を持っていたから。両親が出版社に勤めていたので、子供の頃から本や雑誌に親しんできた。家の中にあるたくさんの本棚は料理本でいっぱいで、その多くは子供の頃から読んできたもの。情熱を持って進むべき道は1つではないと、幼い頃から知っていた。

詩の勉強については、私は詩人じゃなくて家庭料理人になったけれど、レシピを書くとき役立っている。詩と同じで、レシピの文章も詳しい描写と簡潔さを両立させる必要がある。詩人たちのように無駄のない明確な表現で、レシピを読む人が香りや見た目まで想像できるよう心掛けている。

私も文章が長くなりがちだけど、詩を学んだおかげで自分の文章を編集し、短く言い切れるようになった。

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――家庭料理人がいて、料理上手が売りのセレブがいて、しっかりした訓練を受けたプロのシェフがいる。料理人にもヒエラルキーがあるのだろうか? 資格を持ったシェフが家庭料理人を見下すようなことはない?

それなりのヒエラルキーはある。私は自分の本をたくさん書き、他人の料理本にも協力してきたから、いろんな料理人を見てきた。私が過去に協力してきた人や、料理本の書き方について質問してくる人には、「自分にしか書けない本を書く」ようアドバイスしている。もちろん、簡単なことではないけれど。

自分を偽るのではなく、自分が何者であるかについて正直でありたいと思う。私はレストランの人間ではない。毎日家で料理をしていて、そこに価値を見いだし、それを表現しようとしている。

レストランやテレビで活躍する料理人や、セレブな料理人よりも、家庭料理人のほうが数は多い。だから、たくさんの人とつながれるのは家庭料理だと思う。でも、甘く考えちゃいけない。知名度や資格が優先される今の世界で、クリエーティブな仕事に徹するのは大変よ。

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interview et texte:Rumaan Alam

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