「ビノワ カフェ」で味わう、旅する菓子職人のスイーツ。

Gourmet 2019.04.28

自転車でユーラシア大陸を横断。知られざる郷土菓子の魅力に開眼し、現地のレシピで供する、ユニークな菓子職人がここに!

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林がユーラシア大陸横断をともにした自転車や旅のノートも置かれている。カウンターには郷土菓子がずらり。

料理人としてイタリア料理店で働くうち、広く知られていない郷土菓子の魅力に惹かれ、自分で作るようになっていった林周作。実際に見てみたい、食べてみたいという思いが膨らんでヨーロッパへ渡り、2012年には自転車でユーラシア大陸を横断する旅に出かけた。

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定番菓子約7種類のほか、日替わり菓子約3種類を用意。お菓子を眺めて説明を読むだけで、旅してる気分でワクワク。フランスの「カヌレ」は人気の限定商品。1個¥500

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「旅行者が行かないような町も訪れて、泊めてもらった家でお菓子作りを教えてもらったり、店の厨房で作り方を見せてもらった」という。印象的だったのは、「ひとり暮らしをしていた20代のトルコ人男性が、自宅でパパッと郷土菓子を作ってくれたこと」。日本人の若者が和菓子を作れるかといえば、そうはいかない。しかし当たり前のように作る彼を見て、伝統的な食文化が根付いていることにハッとさせられたという。

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左はお汁粉に似たトルコの「アシュレ」¥600、右上はヒヨコ豆の粉を使ったインドの「ベサン ラドゥ」2個¥450、右下はアゼルバイジャンのパイ菓子「シェチェルブラ」¥400

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店へと続く階段の壁に、たくさんのお菓子の写真や林が旅しながら発行していたニュースペーパーが貼られていて、つい足を止めて読み込んでしまう。

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インドでは、ヒヨコ豆とギー(バターオイル)で作る、綿あめを押し固めたような「ソーンパプリ」に出合ったが、厨房に入って驚愕。「厨房というより、ほぼ地べた。あんなおいしいお菓子が、整った設備もない環境から生まれていることに驚いた」。また、トルコでイスラム暦のアシュラーの日に食べられる、豆や麦、米、香辛料をお汁粉のように甘く煮てドライフルーツやナッツをのせた「アシュレ」も思い出のひと品。近所に振る舞う風習があるため、現地の家庭で作り方を習っていたところ、噂を聞きつけた近所の人たちが、うつわを持って集まってきたそう。

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左から、フランスの「パンデピス」¥250、スペインの「ボルヴォロン」4個¥300、スイスの「バーズラー レッカリー」6個¥600

すべての驚きや感動、発見が、林の血肉となっている。帰国して開いたビノワ カフェでは、自分なりのアレンジも加えつつ、現地で出合った味を再現。カルダモンが香るクルミと粗糖のフィリングをパイ生地で包んで美しい模様を施したアゼルバイジャンの「シェチェルブラ」は代表作だ。ヒヨコ豆のパウダーをギーで炒めて丸めたインドの「ベサン ラドゥ」も人気。

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世界各国を巡って郷土菓子を研究し、菓子を作る林周作。

「お菓子を通じて知らない国への興味が広がってくれたらうれしい」と、いずれは世界中の菓子がショーケースに揃う店を目指して夢を膨らませる。

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| India |

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「ラドゥ」などを手に持つインドのおじさん。

| Thailand |

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タイでは、お寺の宿坊に宿泊。

| Kyrgyz |

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アリの巣を模した、キルギスの「ムラヴィニク」。

| Turkey |

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トルコの「ボザ」は穀物の発酵飲料。

| China |

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2015年、パリからの自転車旅は上海でゴール。

林 周作
郷土菓子研究社 代表
1988年、京都府生まれ。料理を学んだ後、ユーラシア大陸を旅して郷土菓子研究を重ね、2016年ビノワ カフェを開店。郷土菓子の著書も。
Binowa Cafe/ビノワ カフェ
東京都渋谷区神宮前6-24-2 原宿芳村ビル2F
tel:03-6450-5369
営)14時〜20時(月〜金) 12時〜18時(土、日、祝) 不定休
www.kyodogashi-kenkyusha.com

※『フィガロジャポン』2019年4月号より抜粋

photos : YUKO CHIBA, réalisation : RIEKO SETO

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