飲茶ラバーが行く! 都内の穴場店、食いだおれツアー。

Gourmet 2019.12.30

肉食系ライターの小寺慶子が愛してやまない海外ローカルグルメのひとつが飲茶。大好物の点心を弾丸で食べに香港へ出かけることもしばしばだが、今回は東京で“本場”を体感するべく飲茶巡りを敢行!

小寺慶子|フードライター
「東京カレンダー」などさまざまな雑誌やウェブに執筆。ライフワークのミートリップ(肉旅)で香港を訪れることも多い。本場香港での飲茶は「端記茶樓」と「連香居」推し。

「早朝便で香港入りをしたら、なにはさておき飲茶で胃袋を“香港モード”にチェンジします」というライターの小寺慶子が、東京で本場超えの味を堪能できる飲茶レストランをホッピング。「香港の昔ながらのワゴン式飲茶の店が好き。セイロを開けた時の高揚感がたまらないです。ひとりで10種以上は食べます(笑)」と豪語するだけあって、東京の飲茶レストランにも興味シンシン。

頑丈な胃袋と点心愛を携えて、まず向かったのは、飲茶ラバーから「都内のホテル随一」という声が多く挙がるザ・ペニンシュラ東京のヘイフンテラス

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平日限定ランチメニュー(¥4,190)の一例。鶏肉とスミイカの蒸し焼売、キヌガサダケと春野菜の水晶餃子、アワビと広東白菜入り蒸し餃子。

伝統的な広東料理を供するこちらでは「飲茶は朝に食べるもの」という原点に立ち返り、王道のメニューを用意。香港出身の点心師、葉建康さんが作る点心は食べる前から心が浮き立つような見目麗しさで、思わずため息。平日限定の点心ランチメニューは、最初に水晶餃子と蒸し餃子、焼売が登場。

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アラカルトメニューは手前から、「金華ハムとダイコンのパイ」¥950、「オマールエビとイカ ウニのせ蒸し餃子」¥1,058

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中国茶もバラエティ豊富に揃う。

葉さんが「点心のおいしさは皮と具材のバランスに尽きる」というように、つるん、もちっとした皮と具材の一体感に卓越した技術を感じる。「金華ハムとダイコンのパイ」は甘味、香味、旨味が口の中でほろほろとほぐれ、これぞ一流の仕事と実感。オマールエビとウニの風味がダイレクトに伝わる蒸し餃子もラグジュアリーホテルならではの贅沢さ。13種揃えるお茶の中でもオリジナルの蘭花烏龍は甘い香りが優しく広がる至福の一杯。優雅な気分に満たされる。

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香港人デザイナー、ヘンリー・リュンが手がけた空間。中国の蘇州の古典庭園の様式がテーマ。

ヘイフンテラス|日比谷
Hei Fung Terrace

東京都千代田区有楽町1-8-1 ザ・ペニンシュラ東京2F
tel:03-6270-2888
営)11時30分~14時30分L.O.、18時~21時L.O.(月~水) 11時30分~14時30分L.O.、18時~22時L.O.(木、金) 11時~15時L.O.、18時~22時(土) 11時~15時L.O.、18時~21時L.O.(日、祝)
無休 要予約 
www.peninsula.com/ja/tokyo/hotel-fine-dining

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香港の伝統文化を伝える極上の飲茶を堪能したところで、お次は気軽に本格的な味が楽しめると“香港迷”(香港政府観光局お墨付きの香港に精通した人)から支持を集める三茶酒家 香港バル213へ。

オーナーの野口淳さんは、香港在住時に毎日飲茶を食べ歩いていたという筋金入りの点心好き。メニューには20種以上の点心が並び、食いしん坊の好奇心と食欲をかきたてる。「本来、飲茶といえばお茶ですが、酒場感覚で本格点心を楽しめる店があってもおもしろいと思った」と、東京の店では取り扱っているのが珍しい香港メイドのクラフトビールまで揃えている。

独自に発展した、バラエティ豊富な東京飲茶。

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上から「手作り小龍包」¥496、「エビとセロリの蒸し餃子」¥561、「トリッパ青唐辛子蒸し」¥626。蒸しものだけでも12種。

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ライオンロックは左から、ホワイトIPA 、ヴァイツェン、IPA。各¥1,058。香港で人気のクラフトビールも。しっかりした飲みごたえで点心とも相性よし。

香港バル213では肉汁あふれる小龍包、野口さんいちおしの「エビとセロリの蒸し餃子」や「トリッパ青唐辛子蒸し」といったオリジナル点心とともにビールを飲み、すっかりいい気分に。油は控えめ、化学調味料不使用の点心は、ヘルシーながらしっかりとした味付けで、根っからの左党としてはビールと点心の組み合わせはやっぱり最高と大満足。土日は11時30分からの通し営業というのもありがたいかぎり!

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店は三軒茶屋のエコー仲見世商店街の一角に。テーブル席もある。

三茶酒家 香港バル213|三軒茶屋
Sanchasyuka Hong Kong Bar 213

東京都世田谷区三軒茶屋2-13-17 
tel:03-6805-3923
営)15時~24時L.O.(月~金) 11時30分~24時L.O.(土、日、祝)
無休 予約したほうがいい

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ほろ酔い気分で次に向かったのは“パリの下町チャイニーズ”をコンセプトに掲げるル・パルク。ビストロのような店構えと落ち着いた雰囲気は見るからに女子ウケ指数高めだが、こちらは東京の飲茶レストランの先駆け的存在として、グルメ感度の高い中国人からも人気を集めている。

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左から、「イカと大葉の餃子」¥680、うっすらとニラの緑が透ける「ニラ餃子」¥604、色みが美しいことから香港で“鳳凰の目”と呼ばれている「カニとエビの餃子」¥680

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手前から、春巻きの皮を糸切りにして巻き上げたサクサク食感の「エビ団子の衣揚げ」「春巻き」各¥604

香港出身の点心師が常駐しており、毎朝仕込む数量限定の腸粉をはじめとした皮のおいしさには特に定評が。具材が色っぽく透ける蒸し餃子は皮のもっちり感が際立っているものの、ポーションもほどよく、いくらでも食べられそう。衣がパリパリと小気味のよい食感の春巻きなど、あれこれ単品でオーダーするのも楽しいが、迷った時は盛り合わせもおすすめ。蒸しに揚げなど、4種2個ずつの盛り合わせがアンダー1500円というのもうれしい。

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隣接する公園の木々に臨む2階のダイニング。淡いピンクのクロスが可憐な雰囲気。

それにしても、ラグジュアリーホテルの職人技術が光る点心に香港のクラフトビールとともに楽しむ酒場系飲茶、パリの街角にありそうなビストロの洒脱な雰囲気と本格点心の融合など、東京飲茶レストランの多様性には驚くばかり。

その昔、愛鳥の美しい鳴き声を自慢し合いながら、お茶を飲み、常連客が交流し合う憩いの場であった茶館での飲茶文化が、日本でこのように発展したと知れば、香港人もさぞかし驚くに違いない。

ル・パルク|恵比寿
Le Parc

東京都渋谷区恵比寿西1-19-6
tel:03-3780-5050
営)11時30分~14時30分L.O.、17時~21時30分L.O.(月~金) 11時30分~15時L.O.、17時~21時L.O.(土、日、祝) 
無休 予約したほうがいい
www.cordon-bleu.co.jp/ebisu

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台東区で見つけた、超穴場レストランとは⁉

本場超えの味に加え、東京らしさを満喫できる飲茶レストランは、ほかにも盛りだくさん。続いては、人気中国料理店のランチ限定飲茶と、オープンしたばかりの話題店へ!

広尾の中華香彩 ジャスミンといえば中国料理好きなら一度は耳にしたことがあるはず。料理長の山口祐介さんは、上海料理の名手として有名だが、系列店のジャスミン 和心漢菜で、平日の昼のみ飲茶を提供。

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料理はすべて「飲茶オーダーバイキング」¥3,500の一例。土日祝日は¥4,000。90分制でラストオーダーは30分前。左から時計回りに、「ニラ入り翡翠エビ蒸し餃子」「おすすめ点心と今月の一品 4種盛り合わせ」「腸詰め入り焼きダイコン餅」。麵や粥、甘味も注文可。

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甜点心も充実。手前から「ジャスミン エッグタルト」「カボチャのココナッツプリン」

上海だけでなく、中国料理全般に精通している山口シェフ。「点心の“点”は中国語でちょっと、“心”は胃袋を意味します。点心は胃袋にちょっと入れる、という軽食のことを指すんです」という飲茶トリビアを聞きながらメニューを見ると20種以上の点心が。オーダーバイキングは時間内であれば、好きなものを好きなだけ注文できるということで、いざ90分の1本勝負! オーダー率100%という4種盛りはエビ餃子やアワビのせ湯葉巻き、焼売に小龍包といった飲茶界のヒーローが集結。点心の基本であり、最も技術が要されるエビ餃子を食べれば、その実力がはっきりとわかる。エッグタルトやココナッツプリンなど甜点心も制覇しなくちゃ! もはや「胃袋にちょっと」というレベルでは収まらない状況に。次回の来店時はプラス1500円でお酒の飲み放題をつけようと店を後にし、ラストに向かうは食のディープタウン、上野。

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開放的なメインダイニング。

ジャスミン 和心漢菜|銀座
Jasmine Washinkansai

東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX6F
tel:03-6264-5571 
営)11時~14時30分L.O.、17時~22時L.O. ※飲茶はランチタイムのみ 
不定休 ※施設の休館日に準ずる 予約したほうがいい
https://ginza.jasmine310.com

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東西南北、世界中のさまざまな料理店が軒を連ねる上野とあれば、本場感満載の飲茶に出合えるはず! と訪れたのが龍城だ。「エビ系点心の充実度がすごい」という前情報のエビデンスを確かめるべくメニューを開くと、蒸しに湯葉巻き、春巻きなどエビ関連は5種。浙江省出身のオーナー、留春平さんの「メニューに載っていないものもたくさんあります」という言葉に、期待値もぐっと高まる。豊富なメニューの理由を聞けば、点心を作るのは、名古屋の名店、麗穂で立ち上げから点心のチーフを務めていた大ベテランとのこと。料理担当の中には、中国飯店や富麗華で働いていたシェフもいるという。それで値段は港区相場の半分以下とくれば、テンションも相当アガるというもの。

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下から時計回りに、「エビ蒸し餃子」、エビがたっぷりと入った「広東焼売」「イシモチと雪菜の蒸し餃子」各¥626。点心類は裏メニューも多数。出来たてのエッグタルトも常連客は必ずオーダーするという隠れメニュー。

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「エビの湯葉巻き」¥626。エビを使った点心が人気で計5種用意。

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「XO醤のダイコン餅」¥518

運ばれてきたセイロを開けるとふわりと立ち上る香気とともに、端正な顔立ちの点心がお目見え。豊満な具材を包む蒸し餃子の皮はもちもち感が絶妙で、エビがごろりと入った広東焼売の旨味は濃厚。常連客が必ず注文するというエッグタルトは甘いバターの香りに熱々とろとろのカスタードのコンビネーションが最高。点心師の技量があればこそ“裏メニュー”のオーダーにも柔軟に対応できるのだと納得した次第。

東京は世界に誇れる飲茶パラダイス。その魅力と奥深さを体感するべく、いますぐ足を運ばれたし!

龍城|上野
Ronchan

東京都台東区東上野3-39-5  
tel:03-3834-7988
営)11時~15時L.O.、17時~22時30分L.O.
無休 
https://ryujou-ueno.gorp.jp

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※『フィガロジャポン』2019年9月号より抜粋

※この記事に掲載している商品・サービスの価格は、2019年7月時点の8%の消費税を含んだ価格です。

photos : YU NAKANIWA, JIRO OHTANI, réalisation : KEIKO KODERA

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