やっぱり、京都が好き 日本料理の粋を、京都でじっくりと味わう。
Gourmet 2020.12.27
懐石からカジュアルに楽しめるアラカルトまで。旬のご馳走を楽しむなら、やっぱり京都の日本料理店を訪れたい。
京都の奥座敷で、創意あふれるコースを堪能。
おたぎ
料理はともに¥22,000のコースから。秋が旬の泉州のアナゴが口中でふわっとほどける「アナゴの握りの蒸し寿司」。
グジの旨味とマツタケの香りが上品な出汁に溶け込んだ「若狭グジとマツタケのお椀」。漆椀は蒔絵師の田中里果の作品。モダンな平屋の一軒家に合わせ、加藤静允、木村盛信、村田眞人など京都の現代作家のうつわが多い。
北大路の人気店が鷹峯に移転し、料理も空間もグレードアップしてますます評判となっている。「地元の強みでよりよい食材が手に入りやすくなった」と鷹峯で育った馬場一彰店主。4日間寝かせた旨味の塊のような若狭グジのお造りや軟らかく煮込んだ亀岡牛など、高級食材にも引けをとらないのが、野菜の力強い味わい。幼なじみの農家の畑で毎朝、自らも収穫する。自家製麺や洋食メニューを差し込んだコース展開にもワクワクしどおし。女将の行き届いた接客も心地よく、中庭を備えたゆったりした空間で寛ぎながら、おいしく楽しい時間を過ごせる。
確かな技術と真摯な人柄で客を魅了する馬場店主。カウンター席うしろに中庭が広がり、奥にはテーブル2卓。
洛北・鷹峯は江戸時代に本阿弥光悦が芸術村を開いた地。老舗松野醤油の2軒南に平屋を新築。
京都市北区鷹峯土天井町18
tel:075-492-1771
営)17時30分〜20時最終入店
休)水 ※ほか不定休あり
要予約
---fadeinpager---
素材の旨味と香りを生かした、花見小路の老舗。
杢兵衛
料理はともに¥22,000のコースから。昆布出汁で炊いた小カブの下にカニ味噌を敷き、焼きガニをたっぷりのせた「小カブ 焼きガニ添え」。乾山写しのうつわは8代大樋長左衛門。
大阪・富田林の契約農家から仕入れるキメが細かいエビイモと長崎の白グジを揚げた、味わい深い「エビイモと白グジのかき揚げ」。折敷は佃眞吾の作。
新橋の名店、京味で修業の後、生家に戻って4代目を継いだ寺田慎太郎店主。昨夏、長年構想を練っていた店内の改装を実現。銘木をふんだんに取り入れた清々しい空間が完成した。「素材は味だけでなく香りも大切。調味料は味付けのためでなく、素材の味を引き出すため」と語る寺田店主の料理は、京料理の伝統をベースに独創性を加え、素材の旨味をストレートに感じさせるもの。日本画やうつわに造詣が深い店主との会話も楽しく、ひとりでも初めてでも気軽に訪れることができる。
改装は茶室専門の数奇屋大工が担当。八寸に添えられる、店主が美しいかな文字で書く季節の和歌も名物。
花見小路通に佇む白木の格子戸。
もくべえ
京都市東山区祇園町南側570-120
tel:075-525-0115
営)12時〜13時最終入店、18時〜19時30分最終入店
休)日
要予約
https://mokubei.jp
---fadeinpager---
人気店の新展開は、季節のお鍋が主役。
二条やま岸
料理はすべて¥16,500のコースから。マツタケのない通常シーズンは¥14,300。雲子(タラの白子)とイチジクのねっとりした食感に白味噌を合わせた「雲子の黄身揚げと葛打ちイチジク」。
ハモをマツタケの香りといただく「ハモとマツタケのしゃぶしゃぶ鍋」。締めは雑炊や麺で。
予約困難な人気店、富小路やま岸が二条駅近くに構えた2号店。主役はお鍋で、先付、八寸、向付、焼きもの、揚げものなど約5品の後に、牛肉と花山椒、ウナギと賀茂ナスなど月替わりのお鍋が供される。「出汁は香りより旨味を感じるよう昆布を利かせ、スダチの輪切りで清涼感を出したり、赤ワインを加えたりと、お鍋ごとに工夫しています」と横井裕史料理長。料理長か女将が席に着き、調理から取り分けまでしてくれる。人気店の懐石とお鍋が一度にいただけるのがうれしい限り。
年間を通してコースに入る定番「うとい和え」。ウニ、トロ、イカを卵黄醤油で和えて、手巻き寿司でいただく。
カウンター席の本店とは異なり、すべて掘りごたつ式の個室。ゆっくりできる落ち着いた空間。
にじょうやまぎし
京都市中京区西ノ京職司町8-1
tel:075-801-7900
営)17時〜20時最終入店
休)火、水
要予約
http://tominokoji-yamagishi.com/nijo/yamagishi
---fadeinpager---
古い時代に思いを馳せ、出来たて料理に舌鼓。
日本料理と日本酒 惠史
プリプリした食感と甘味を楽しめるよう半生に仕上げた「イセエビの生焼き」¥2,750。電話予約時に伝えればアラカルトのみも対応。
アンティークの家具や照明を配し、江戸時代の酒器が飾られた趣のある店内。ここで腕を振るうのは、和久傳で17年間研鑽を積んだ保科知史店主。スッポン煮こごりやお造りといったおまかせ3品の後、単品で好きな料理を注文するプリフィクススタイル。単品には旬野菜の和えものやおひたしから、鴨やウナギなどの主菜、酒の肴まで揃え、どれも丁寧な仕事ぶりがうかがえる。江戸時代の風習である盃洗や、はがきの始まりである多羅葉を予約札として取り入れているのもおもしろい。
炙ったシメサバを焼き海苔で巻く「サバ寿司」¥880。米は山形県産ササニシキの7分米に古代米の赤米をブレンド。酒器は江戸時代の珉平焼。日本酒は1合¥880〜
所有する山から採取した山椒や葉を料理や飾りに使うという保科店主。店を彩る季節の草花は、花屋を営む妻が担当。
静かな住宅街に立地。昼は¥8,800のコースのみ。
にほんりょうりとにほんしゅ さとし
京都市中京区小川通姉小路下ル宮木町471-2
tel:075-708-6321
営)12時〜13時最終入店、17時〜21時最終入店
不定休
昼は前日までに要予約、夜は予約したほうがいい
www.kyoto-satoshi.com
---fadeinpager---
季節の料理を気軽に楽しめる、路地奥の隠れ家。
つろく
ふわふわの真丈に入ったウナギの旨味とゴボウの香りが引き立て合う「ウナギ真丈ゴボウあんかけ」¥1,430
しみじみおいしい和えものに鮮度抜群の天然魚のお造り、つやつやの土鍋ご飯。オープンキッチンのカウンター席で気軽にいただけるのは本格的な京料理をベースにした季節の料理。「本物と健康」を大切にする店だけあって、舌も身体も喜ぶメニューが揃う。いちおしは真丈の一品。湯葉やマツタケ、カニなど季節で具材を替える真丈が、お椀や揚げ出しなど工夫を凝らして供される。店名は調和や釣り合いを意味する京言葉。料理やお酒、空間など、さまざまな調和を路地奥の隠れ家で楽しんで。
ウロコはパリパリ、身はふっくらで、ご飯のおかずにもお酒のアテにも。骨せんべいを添えた「グジの松笠焼き」¥1,760
唐揚げで旨味を凝縮したアユを炊き上がりに混ぜ込む「アユご飯」2合¥1,980。土鍋は信楽の中川一辺陶。日本酒がそば猪口で¥550〜という手頃さもいい。
京都や東京の名店で修業した若い料理人の接客が清々しい。カウンター席の端に小上がりも。
二条通の路地の突き当たり。
京都市中京区二条通高倉西入ル松屋町51
tel:075-275-3926
営)17時〜22時最終入店
休)日
予約したほうがいい
---fadeinpager---
豊富な一品料理を、店主おすすめの日本酒と。
料理りはく
脂ののったキズシに藁で香りをつけ、たっぷりの薬味といただく「秋サバのキズシ 藁たたき」¥1,500。日本酒はさらっとした辛口を中心に1合¥900〜
二条駅近くの住宅街にひっそりと佇むカウンター7席の小さな店。手書きメニューには炭火焼き、季節の一品など30種以上のラインナップ。王道の料理に加え、カツオニンニク味噌なめろう、新ジャガ磯辺天ぷらタラコバターなど、アレンジを利かせた一品も多い。大木律人店主は京都の名店や居酒屋で腕を磨いて独立。常連客のわがままなリクエストにも笑顔でこたえ、ひとり客には量を加減。居心地のよさにあれこれ追加注文してしまう。サバ寿司と手打ちそばのランチもお値打ちだ。
バターをのせ、熱々のまま天つゆでいただく「秋ハモのウニ包み揚げ」¥2,400
女性客に人気、ゴマの風味を利かせた「季節のフルーツの白和え」¥900。この日は白桃とマンゴー。
清潔感ある店内。コース(4名〜)は¥7,000〜
二条駅の北西。店名は店主の父が山科で営んでいた中華飯店の名前から。
りょうりりはく
京都市中京区西ノ京永本町9-16
tel:075-802-8028
営)11時30分〜13時L.O.、17時30分〜21時30分L.O.(月、水、金) 17時30分〜21時30分L.O.(火、木、土)
休)日
予約したほうがいい
---fadeinpager---
素材の旨味を引き出す、割烹の新店。
割烹 久久
オカキを付けて揚げた鴨饅頭に、鴨とハモの湯引きを合わせ、銀あんをかけた「鴨と秋ハモの蒸しもの」¥1,600
祇園の割烹や軽井沢、北京などで修業を積んだ植野諭樹店主。今冬、地元に戻りのれんを掲げたのは佛光寺の南側。ハモは炙り、湯引き、ハモカツ、キンメダイはお造り、炭火焼き、煮付けなど、旬の魚介は好きな調理法を選べ、締めのご飯は量を調整してくれる。「割烹スタイルにしたのはお客様の要望にこたえて喜んでいただきたいから」と話す植野店主。ウロコが香ばしいグジのウロコ焼きやふっくらと炊き上げたアナゴなど、確かな技術を感じさせる逸品揃いでこれからが楽しみな一軒。
ふくよかな出汁の香りとカラスミの塩分が絶妙に溶け合う「カラスミ出汁茶漬け」¥1,600。米は京丹波産のコシヒカリ。
杏仁の香りをほのかに利かせたわらび餅を黒糖とイチジクの赤ワイン煮でいただく「杏仁わらび餅 フルーツコンポート添え」¥800
カウンター6席の店内。「料理を作る時は普通に正しく、新メニューを考える時は品格とユーモアを」という店主。
かっぽう きゅうきゅう
京都市下京区泉正寺町465-1
tel:075-708-5067
営)18時〜21時L.O.
休)水
予約したほうがいい
●新型コロナウイルス感染症の影響により、掲載店の営業時間、定休日の展示期間などが取材時から変更になる可能性があります。
●掲載している商品や料理の価格は、取材時から変更になる可能性があります。
●店舗によって、別途サービス料がかかる場合があります。以上ご了承ください。
*『フィガロジャポン』2020年11月号より抜粋
photo : SHIN EBISU,réalisation : NATSUKO KONAGAYA