グルメの世界にもCBDブーム! その味と効用は?

Gourmet 2021.05.15

CBD(カンナビジオール)は、大麻草由来の成分。賛否両論あって、見過ごせない存在。料理に使うとしたら、味のためなのか、それともリラックス効果のためなのか。単なる目くらましでしかないのか、それとも本当に新しい味を創り出すチャンスなのか。一緒に検証してみよう。

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CBDを調理すると、いったいどうなるのだろう。 photo : Getty Images

カンナビジオール、略称CBD。この成分は、ここ10年で一番の流行になるかもしれない。

リラックス効果はあるが、麻薬としての効果はない、大麻由来の成分。このCBDが5年ほど前からフランスで注目を浴びている、と語るのはペクレール・パリ社のトレンドディレクター、リュシル・ゴティエ。興奮作用やパフォーマンス向上効果があるものに背を向け、CBDに惹かれるのは、「日常があまりに不安なものになってしまい、そこから逃れたいと言う欲求がある」からだと、ゴティエは説明する。

現在、ヨーロッパでは、ドライフラワー、Eリキッド、オイルなどさまざまな形のCBDが、一定の条件(編集部注:THC、つまりテトラヒドロカンナビノールの量が0.2%を超えてはならない、など)の下で販売されており、フランスでも定着しつつある。ヘルスケアやコスメ市場を席捲した後、レストランの厨房でも認められ始め、CBD入りピザやスイーツ、ワインさえ登場している。

マーケティングの話はさておき、実際に口にする時にはどんなメリットがあるのだろうか。医者のパスカル・ドゥエク、シェフ・パティシエのフィリップ・コンティチーニ、トレンドディレクターのリュシル・ゴティエ、CBD製品を販売する会社の創始者、オーレリアン・ベルナールとアレクサンドル・ぺレズに話を聞いた。

ごく少量で、気づかないことも

何らかの陶酔感を求めている人は、他を当たったほうがいい。医師で栄養士、医療大麻の専門家で、2020年秋に「医療大麻、新しいチャンス」(1)を上梓したパスカル・ドゥエクによれば、CBDは「有毒でもサイコアクティブ(神経系に作用するもの)でもないので、CBD入りの食品を食べても感覚が変化することはありません」。その一方で、「不安を軽減し、睡眠障害を改善し、痛みを和らげる鎮静効果があります」

CBDを料理に使うなら、オイルを使うのが普通。大麻草由来のオイルとアンフュージョンのブランドDivieの創始者であるアレクサンドル・ペレズはこう説明する。「料理に入れる分量は、それぞれの人に特有の、必要に合った分量があります。それは1滴単位の微妙なもの」。しかし、レストランや店で調理する場合、CBDの使用量は、一人一人にカスタマイズされているわけではないので、効果には大きな個人差が出ることになる。

CBD製品を販売するFrench Farmの創始者オーレリアン・ベルナールはこう語る。「CBDについて知らなければ、(食品に入っていても)その効果を確認することは難しいでしょうし、気づかないことさえあると思います」。摂取してから消化され、肝臓で分解されてから血液に届くまでに時間がかかる上、実際にはパンひと口、ハチミツひとさじなどから吸収できるのは、ごくわずかだ。

CBDの効果を体が感じとるためには、CBDが持続的に働くための時間が必要になる。「CBDの効果を体が理解するためには5日から15日ほどかかります」とベルナールは言う。「CBDは不安感に対する即効薬ではありません。段階的に効果が出るものです」とドゥエク医師も認めている。「ストレスを軽減したいなら、少しずつ量を増やしながらCBDオイルを摂取します。適切な量が見つかって、期待する効果が出るまでに数日はかかる。ですから、あなたの悩みに答えるパーソナルな助けは、レストランの厨房にはありません」とばっさり。「効果を求めるのなら、指導やアドバイスを受けてプロセスを踏んで摂取するべき。一方、味を楽しむためなら、ウェルビーイング効果のことは忘れて、食材として考えたほうがいいでしょう」

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料理界での挑戦

アレクサンドル・ペレズは、この「ウェルビーイングの成分」の持つ強い香りが注目に値すると考えた。「現代的で革新的な風味を持つCBDは、味をクリエイトする料理人にとって、きっと刺激的な素材に違いない」と彼はいう。これは決して言い過ぎではないだろう。

ピザにオレガノの代わりにドライフラワー状のCBDを加えたり、ハイビスカスのソーダ水にとかしたり。そんなケースがある一方で、シェフ・パティシエのフィリップ・コンティチーニは、クリエイティブなチャンスをつかんでCBDを変身させてしまった数少ない美食家のひとりだといえるだろう。何しろCBDは、リュシル・ゴティエが言うように、「オメガ脂肪酸とタンパク質をたくさん含むすばらしい食材」なのだ。ゆえに、French Farm社からCBDをスイーツに使うコラボレーションを依頼されたとき、ガストロノミー界の巨匠コンティチーニは、すぐにこの挑戦に心を奪われた。

若い頃に口にしたことのある「葉っぱ(マリファナの隠語)」の味を再発見したいと思っていたコンティチーニは、彼のために特別に作られたCBD入りのシロップを使って、この新しい食材に取り組んだ。「指先を浸した瞬間、その力とメリットを直感したんです」とフィリップは語る。「あっという間に味の組み合わせを思いつきました。まずは柑橘類、それからティムールペッパー、最後にホワイトチョコです」

雲のようなフォルムをしたやや酸味のあるスイーツ、シリュスはこのようにして生まれ、すぐに人気を博した。でも、このおいしそうなスイーツが完成するまでには、ハーバルな苦みをうまく調整するための試行錯誤があった。「スイーツ1個につき0.21gのCBDが含まれています。量をわずかに増やしてみると口の中に感じる味が強すぎ、わずかに減らしてみると今度は強さが足りなくなった」とコンティチーニ。ベルナールは「より強い効果を出そうと思えば、もう少し量を増やすこともできたんです。でも、そうすると、他の味より苦みのほうが強くなってしまう。お客様に喜んでいただくには、まずは味が大事ですからね」と説明する。

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フィリップ・コンティチーニのスイーツ、シリュス。ライムとゆずの果汁入りのふんわりサバイヨンに、グレープフルーツ、ブラッドオレンジ、レモン、そしてCBDから作ったクリーム状の層が隠れている。 photo : Phillippe Conticini / Photo presse

その後、シリュスはバレンタインデー用にアレンジされ、コンティチーニは現在チョコレートとCBDを組み合わせた新作を準備中だ。「CBDについて知れば知るほど、理解が深まって、自由自在に使えるようになります」と彼は語る。

扱い方、組み合わせ方、風味の出し方、見せ方...全てを自分で探し当てなくてはならない。パティスリー界の金細工師、コンティチーニの次の挑戦は、ヘンプシード。「そのテクスチャーを、正確に知りたい。カリッとしているのか、サクッとしているのか。次回のスイーツにどうやってそれを取り入れるかを考えています。例えば、パッションフルーツ入りのデザートを味わうプロセスを考えると、シードがまず見た目を華やかにしてくれて、最後にいい味を出してくれますよね」

好奇心の強い食通たちを、トリップさせるかわりに味覚そのもので刺激する。その斬新で素敵な試みに、Goサインを出そう。


(1)Pascal Douek著『Le Cannabis médical, une nouvelle chance』Solar出版。

texte: Elise Assibat (madame.lefigaro.fr), traduction:Aki Saitama

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