捨てられがちな食材が美味しい一品に! 余りものレシピ集。

Gourmet 2021.07.09

料理評論家エステレル・パヤニの本『素敵な余りもの料理』は、捨てられがちな食材をシンプルに活かすコツを教えてくれる。本で紹介されているのは、ブイヨンやソース、カクテルにスイーツと幅広い料理だ。

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ブロッコリーの芯、アンチョビ、ケッパー揚げ、トーストのオレキエッテパスタ ©Rina Nurra.

料理が済んで残った、余りものの数々。オリーブの種、カマンベールチーズの皮、りんごの芯など、ゴミに分類されがちなものをむしろ「素敵な余りもの」として扱うのは、ジャーナリストで料理評論家のエステレル・パヤニだ。彼女は食材全部、あるいはほとんどの部分を捨てずに再利用する料理のアイデアを紹介する『素敵な余りもの料理』(1)をフラマリオン社から出版した。この本では女性シェフのクロエ・シャルル、アリス・キエ、アレサンドラ・モンターニュ=ゴメスが、食材を無駄にしない、シンプルで役立つレシピ秘訣を伝授してくれる。

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種を粉末や液状に

アペリティフに黄色のパスティス、それに緑や黒の小さなオリーブを添える…。その時、自然に種を取り除いてしまう人は多い。「捨ててしまいがちな種も、独特の香りと苦みがあって、使えるものです。ミキサーを”強”にして、種を粉末にしてみましょう。この粉末を隠し味として仕上げの粉に使うパン屋さんもいるほど。パンの皮に独特の焦がし風味が加わるんですよ」とエステレルは力説する。

他の種、例えばサクランボ、桃、アンズ、プルーンなどのスモモ類は、種を割るだけで中にある苦みのある可食部を取り出すこともできる。種の調理方法としてエステレルがすすめるのは、種全体をボール型の茶こしに入れて煮詰め、ブイヨンに香りをつけるという方法。「シェフのヨタム・オットレンギは、野菜のブイヨンにドライプルーンの種を加えて、フルーツの甘い風味と種由来のウッディな香りを引き出しています」

固い種を“液体”にするという選択肢も。果物から取り出した種15粒を、ラムかウォッカに2カ月間漬け込み、リキュールにする。「これについては、ジャーナリストのアンヌ=ロール・ファムが素晴らしい本を書いています。本のレシピの中でおすすめなのは、美味しいアンズリキュール。種の中の杏仁(編集部注:アマレットの主な材料)、フルーツ、クローブ、シナモン、砂糖を加えて仕上げます」

ただし、摂取量には気をつけよう。エステレルは「杏仁にはシアン化水素酸を生じるアミグダリンが含まれ、摂取しすぎるとシアン中毒を引き起こす恐れがあります」と注意を促している。他の果物や野菜くずを使う場合も、“農薬のカクテル”なんてことにならないように、必ずオーガニックのものを選ぼう。

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芯の硬い部分も賢く調理。

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捨てられがちな芯の部分にも注目する価値がある。photo: chris-mueller_iStock

近年料理番組で、果物の皮が食材として取り上げられているが、芯の部分にも注目する価値がある。「リンゴの種は、自然のゲル化剤や増粘剤になります。ミキサーにかけてから、甘味をつけた食材にまぜたり、むいた皮でそのままジュレを作ったりもできますよ」とエステレル。他の野菜の芯や根元についても同様だ。

「カリフラワーやブロッコリーの芯は、皮を厚めにむくと、中には白いアーモンドのような味わいの柔らかい部分が隠れています」生でも食べられるし、ブロッコリーなら「パルミジャーノチーズのように」ラぺにしてパスタにかけてもいいだろう。カリフラワーならセモリナ風に細かく刻んでもいい。蒸したり、小さく切ってゴマ油と醤油で炒める方法もある。

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余りものを保存する方法

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食品の衛生管理は徹底しよう。photo: Space_Cat_iStock

余りもの料理で忘れてはいけないのが、衛生管理を完璧にすることだ。フェルトペンで日付を書いたジップロックや密閉できるガラス瓶が、何より心強い味方になってくれる。野菜、肉、乳製品などの食事の残り物は、冷蔵か冷凍で保存。ドライ食材は棚に片付けよう。ワイン、牛乳、コーヒーなど液体は、製氷皿に入れて凍らせるのもいい。

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チーズの皮からうま味を抽出

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好き嫌いの分かれるチーズの皮も、簡単な調理でぐっとおいしく。photo: Space_Cat_iStock

チーズの皮は、中身を保護してくれるもの。しかしチーズ好きでも皮は食べないという人もいる。

「味わいが苦手な人もいます。消化しにくいから食べない、という場合も」とエステレル。「ところがパルミジャーノ・レッジャーノの皮は、例えばピストゥ、ミネストローネ、リゾットなど、イタリアの代表的なスープの材料として、昔から実際に使われています。生のチーズは高価なので、皮も使えば経済的にも得なのです。それに、チーズの中身と同じくらい脂質や塩分を含んでいて、風味もよいものです。タンパク質もたっぷりで、独特のうま味を醸し出してくれます」

調理に使うときは、皮を細かく切りポアレにしてから、用意してある材料に混ぜれば完璧。ちょっと冒険したい人なら、軟質の白カビチーズの皮を使えばバリエーションを楽しめる。

「皮の量や厚みによりますね。無難に楽しみたければ、ブイヨンに混ぜてもいいし、ベニエ(揚げ菓子)生地や野菜コロッケに混ぜてもいいでしょう」

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昨晩のワイン

ディナーにお酒を少し飲んだ翌日、ついやってしまいがちなのは、瓶の残りを捨ててしまうこと。ワインの飲み残しは、うまく保存すればソースやリゾット、魚の包み焼きのベースとして使える。その場合に欠かせないのは、あらかじめ上手にワインを選んでおくことだ。

「美味しくない安ワインは料理の味をだめにしてしまうし、特級ワインは火を通すと質が一気に落ちてしまいます。その中間のレベルのものを料理に使えば、タンニンやアロマを楽しめると思います」

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赤ワインとチョコレートのケーキ ©Rina Nurra.

苦みが欲しいなら、残ったビールを使おう。「もし泡が全部蒸発してしまっても味は残り、クレープ、ワッフル、ベニエ生地を柔らかくしてくれます」とエステレルは言う。甘いもの好きならシードルを使えば、お菓子や鶏肉のソースの香りづけになる。

他にも、瓶に残った液体のリサイクル案としては、ピクルス瓶に残った漬け汁がある。「コルニッション(小キュウリ)のロシア風マリネの漬け汁は、一般にはマロソルと呼ばれることが多いのですが、ブラッディ・マリー(編集部注:ウオッカベースに、トマトジュース、レモンジュース、スパイスを合わせたカクテル)を引き立たせる調味料としてぴったり。このアメリカ定番の使い切りレシピを応用して、ビートの乳発酵液や、キャロットラペ、ザワークラウト、オリーブの漬け汁なども使ってみましょう」

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コルニッションの漬け汁入りのブラッディ・マリー © Rina Nurra.

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コーヒーやお茶の出し殻まで再利用!

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コーヒーやお茶の出し殻は、乾燥させて再利用!photo: Phonlamaiphoto_iStock

コーヒーや紅茶の残りを温めなおすのを習慣にしていても、フィルターのコーヒーの出し殻やティーポットの茶葉はすぐにゴミ箱に捨ててしまう人が多いだろう。でも、これには2度目、3度目の使い道があり、4度目だって使える。「パティスリーでは、コーヒーのさりげない味を出したい時、出し殻を乾かしたものを小さじ一杯、チョコレート菓子やクッキーの生地に加えるんです」とエステレル。

お茶漬けは日本人にもなじみ深いものだ。「お茶の葉がオーガニックのものなら、乾燥して粉末にし、ご飯やサラダ、野菜のポアレに振りかけるのもいいでしょう」

(1)Estérelle Payany著『La cuisine des beaux restes』Flammarion出版 176ページ 19.90ユーロ

text: Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr), traduction : Aki Saitama

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